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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第百五話 巨獣疾走す


 昼休憩。


 携帯端末で久しぶりにネットでプレイヤー間の情報を収集してみると、案の定、大きな流行の変化が起きている事が確認できた。


 それはマイノリティにとってはある種の福音であり、同時にアイデンティティの喪失でもある。


「なるほど……。喜ぶべきか、憂うべきか?」


 そう。


 つまり、ビーム兵器の一般化である。


 あのトーナメント戦で機動要塞がビーム兵器で大暴れした事、それを仕留めたのもまたビーム兵器。


 そしてその後の、ビーム兵器の使い勝手を大幅に改善するアップデートの実施によって、産廃だったビーム兵器の立場は大きく向上したようだ。


 実弾兵器などに比べればまだまだ装備負荷も大きく、また射撃ごとにクーリングが必要という事もあって、戦場の主力になるほどの流行には至っていない。それでも、火力支援機などには直射可能な大火力として、早くも戦場の一角で眩しい光が見えるようになっているようだ。


 それに伴い、急速に対策も広まりつつある。


 一番手っ取り早いのは、重金属粒子入りのスモークグレネードランチャーだ。この手の装備がビームの威力を大きく減衰させるのは、私も重工業地帯で通った道である。レーダーを阻害する効果もあって、今や戦場はもくもくと白い煙に包まれているとの事。


 結果的にレーダー不通の状態での遭遇戦が頻発し、瞬間火力に特化した装備や逆にそれを振り切れる超高機動型などが戦場の流行となり、テンプレ構成が大きく動く事になっているらしい。


 たぶんそのうち、スモークごと戦場を平らに出来る実弾支援砲撃が増えてきて、やがては最初の状態に戻るんだろうな。流行は一周するもので、まあそれはメタが健全に働いているという事でもある。


「いやあ、しかし。私が始めた頃は攻略サイトのページもスカスカだった事を考えると雲泥の差だなあ」


 そんでもって、使用者が増えると情報も増える。


 ビーム兵器の利点、欠点、そういったものがまとめられたページを見れば、知っている事も知らない事もあってなかなか読んでて面白い。


 特に直射しか出来ない、という点が被弾率の高さに直結しているという指摘はなかなか興味深い。確かにその通りである。実弾のように重力による落下を考慮した山なり射撃というものをビームは出来ないので、基本的には照準を合わせての直接射撃になる。そしてこちらから相手が見えているという事はその逆もしかりで、発射時の閃光もあって反撃を受けやすい。


 これらは主にオフラインでエネミーとばっかり戦ってる私にはイマイチ実感の薄い要点である。ちょっと意識する事にしよう。


「しかし、単純な武器として選択肢に上がるようになったのはいいけど、応用効かなくなったのは痛いよなあ。今後はどうビームを生かしていくか、じゃなくて、どうビームを運用していくのか、という話になってくるか」


 威力自体は申し分ない。だからそれをいかに脅威として発揮していくか。


 単純にビームをフル搭載するだけでは対策されればおしまいである。今後は運用面で差をつけていかなければならないが、果たして廃人プレイヤーどもを私が上回る事ができるのか?


 あんまり自信はない。


 そもそもビームが普及して一般化したなら、そこにアイデンティティを見出す必要も無い気もするが……。


「ま、深く考えてもしょうがないか。楽しくやってこ」


 とりあえずは、現状のプランを納得いく形に纏める。それだけを考えていこう。






 という訳で、夜、風呂に入ってさっぱりしてからゲームにログイン。


 ホームを訪れれば、待ち構えていたようにテレサが走り寄ってくる。


『ショウさん、おかえりなさい! 早速出撃しますか? 何かカスタマイズですか? それとも私とおしゃべりします?』


「うーん、まずは機体のチェックして、それから出撃かな」


『了解しました!』


 建造が完了している機体のステータスやパーツが想定通りになっているか、軽くチェック。


 問題ないと認識したら、早速出撃である。


「“ハティ改”、出撃!」


 先に外にでて、ビル街で機動力のチェックをする。まあ基本構造は変わってないから、そんなに違いがあるようには感じない。


 ぴょーん、とビルの屋上から飛び降りて着地すると、ちょうどそのタイミングでエレベーターが上昇し、“スコル改”がその姿を現した。


 単体状態では変わらず、キャタピラ移動のトレーラーみたいな見た目の“スコル改”。ただ、機体左右に折りたたまれた脚部が接続されていたり、過剰なほどだった装甲が削られているので、雰囲気は大分かわっている。


「よし、じゃあ早速合体しようか」


『了解です!』


 これまでは上下に合体していたが、今回は前後に連結合体である。位置取りを合わせてしゃがみこむと、合体用のレールが互いに伸びて接続、機体のメインフレームを結合する。それに合わせて“スコル改”の折りたたまれていた脚が展開され、合体機体“マーナガルム2”が膝を伸ばした。


「接続箇所、問題なし。システム切り替え、よし。異常はなし……でも積み荷を降ろさないと動けそうにないな。積載過多だ」


『了解しました。それでは、子機の展開を開始します』


 バヂバヂバヂ、と修理システムが組み立てを開始する。格納されていたパーツをくっつけて、機体下部からクレーンで降ろす。


 短時間で組み上がった機体が、カシャカシャと足音を立てて機体の下から這い出した。


 見た目は、現実でもよくある四足歩行のドローンっぽい。正面にはレーザー発振機と、鋭いナイフが角のように装備されている。あんまり見た目は犬っぽくないが、まあ、あくまで合理性重視という事で。


 そんな自律ドローンを6機、組み立て終えて排出する。


 サブエネルギーを殆ど使い果たしてしまったが、まあ、諸々のあれそれである程度は回復が見込めるはずだ。


「よし、積載過多警報が解除された。動けるぞ」


『では、走行テストと行きましょう。歩行モーションは私の方で用意したものですが、実際に動いてみて問題があればリアルタイムで修正します』


「よろしくねー」


 ぐ、と操縦桿を傾けると、ひょこり、と視座が一気に高くなる。さっきまで重量に耐えるべく伸ばしきってなかった関節を動かして、可動範囲を確かめる。犬が伸びをするような動きを終えて、さっそく装甲テストへ。


 想定だと、スラスター抜きでも結構な速度が出るはずだが……。


「んじゃ、いきます……よ、っと!」


 操縦に呼応して、ダッ、と“マーナガルム2”が駆け出した。


 忽ち正面モニターの映像にエフェクトがかかる。画面の端が引き延ばされているような演出……ちらり、と計器を確認する。


 時速250キロ。


 思った以上に速度が出て困惑する。忽ちの内に眼前に迫るビル。


「うぉっとお!?」


 ぶつからないように慌てて進行方向を変更すると、“マーナガルム2”の巨体は操作に鋭敏に応えて、すらりと軌道を変更した。そのまま大通りを駆け抜けて、外に繋がるゲート前に辿り着く。


 徐々に速度を落として、停止。


 機体を振り返らせると、かなり後方をちょこちょこと自律ドローン達が駆け足で追いかけてきているのが見えた。


 あっちも頑張っているけど、歩幅の差が出た感じかな。


「随分速度が出たな……ドローンを置いてきてしまった」


『中身を降ろすと、今度は軽くなりすぎる感じですね。機体サイズは大きいですけど、中身はほぼ空ですから、それを合体機体の大パワーで押しだす訳ですし……』


「とはいえ、最大速度そのものはスラスター移動には劣るな、あっちは瞬間的とはいえ時速500キロ以上出る訳だし」


 うーむ。しかしこれは考えてみるとちょっと面白い話かもしれないぞ?


 人型ロボットは当然、二本の脚で歩く訳だ。それが文字通り四つん這いになって腕も歩行に使うようになれば、単純に機体を押し出す力も増える筈。まあ万能作業肢としての腕部を失うから、戦闘能力は低下するだろうが長距離巡航とかにつかえないか?


 “マーナガルム2”は最初から獣の姿で完成する合体機体だが、今後人型機体に変形機構を搭載する理由にもなりそうだ。


「ふむ。色々面白いデータが取れそうな気がしてきたぞ、ワクワクしてきた!」


『はい! あ、でも、自律ドローン置いてったら意味がないから、次はもうちょっと速度落として走ってくださいね』


「気をつけるー」


 さて。早速、外で実戦テストだ。


 今度はうまくいくだろうか?





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