表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/121

第百二話 渓流の大家族


 灰色の大岩。


 閑散とした針葉樹の森林。


 そして、さらさらと音を立てて流れる清流。


 地底湖から先に進み、地上に上がった先で私達を待ち受けていた新エリアは、まさに……。


『渓流、ですかね?』


「ああ。それも、氷雪地帯の雪解け水が流れている、みたいな」


 眼前に広がる光景は、なんていうか昔懐かしのアニメを思い出す。内容自体はあまり覚えていないというか、のんびりどころか陰鬱な話だったような気もするが。


 そして広がる景色の向こうには、青空に聳え立つ雪山。真っ白な山稜の上に、稲光を発する黒い雲がかかっているその様子は、そう、見間違えるはずもない。


 以前、友人と訪れた雪山マップだ。


 とうとう、来るべきところまで来た、という気がする。


 話しぶりからすれば友人はもっと先まで進んでいるのだろうけど、具体的な目標までたどり着けてちょっと嬉しい。


「雪山が見える……。ふふ、ようやくここまで来たか。次のマップがあそこかな?」


『そういえばご友人と一緒に雪山には行ったことがあるという話でしたね。どんなところでした?』


「化け物がいたね」


 一応雪玉投げつけてくる猿型メタルインセクトとか、でっかいマンモス型メタルインセクトとかいう、なんか首を傾げたくなる連中もいたが、特に印象深いのはあの大ムカデだ。


 山頂に存在するという対空砲座、そしてその周辺を守るという電撃を操る大ムカデ。不可視の防壁に守られ、雷足を誇るあの巨大ボスは、未だ持って攻略されていないという話である。


 やっぱりオフラインでもアイツはいるのだろうか?


 居るなら是非とも挑んでみたいが……。


『化け物、ですか?』


「ああ。色々と凄かったよ。ま、その話はこのエリアをクリアしてから、ゆっくりね」


 自律ドローンの軍団を引き連れながら、川沿いの比較的整った道を進む。傍らを流れる川の流れは穏やかで、水も綺麗だ。


 のどかで美しい光景……だが考えてみると、ロボットに乗ってるから実感がないだけで結構大きな河川である。サイズを考えるとミシシッピ河……はないか、うーん、6車線の道路ぐらいの幅はあるな。そんな幅の川を水が流れていく……あらためてみると結構な勢いだな。とてもヨットでは渡れそうにない。


『近くの森林は随分と見晴らしがいいですね。なんででしょうか?』


「ああ。アメリカとかでよく見られる光景らしいね。手入れもそうだけど、あまりにも大きく伸びた木々が日光を遮って他の植物の成長を許さないとか、地面の栄養を根こそぎもっていくとか、なんだったら他の植物が育たないように毒を出してるとか、色々聞き齧った事がある」


『植物の世界も大変なんですねえ』


 しみじみとしたテレサのつぶやきん、そうだねえ、と相槌を打とうとした私は、しかし川をさっと流れた黒いシルエットに口を閉ざした。


「敵襲だ!」


『え?』


 警告を促し機体を停める。それとほとんど同時に、川が爆発するように水柱を噴き上げて、その中からいくつかのシルエットが飛び出した。


 でっぷりとしたシルエットのメタルインセクト……カエル型!? 恐らく水陸両用、それが川から飛び出して、こちらを前後で挟み込むように陣取った。


 前方に一機、後方に二機。後ろを取られてた!


「テレサ、後ろは頼む、私は前を!」


『わ、わかりました』


 即座に接続を解除、自由を取り戻した機体で前にでる。


 一方、メタルインセクトの方はそのずんぐりむっくりの体からマシンガンらしきものを展開。まずい、発射にタイムラグがあるビームでは間に合わない!


「うらあ!」


 ペダルを全力で踏み込み、スラスターを全開。


 こちらに向けて発砲しようとする……その前に、高出力スラスターで躍りかかった一撃が相手を捕らえた。


「貰った!」


『グゲェ!?』


 さらにクローで捕まえて、パイルバンカーを連打。


 創作物では一撃必殺武器の代名詞みたいなパイルバンカーだけど、実際は釘の先が滑りやすくてしっかり固定しないと刺さらない、という問題がある。またどこぞの赤いカブトムシみたいに殴るようにぶち込むと、なんらかのご都合設定で守られていない限り基部に負担がかかりすぎて壊れてしまう(そもそもアレはパイルバンカーではないのだけど)。火薬の勢いで射出する都合で、パイル部分はしっかり固定されていないからね。もとは工事用の機材であって、そんな蛮用に耐えられるような造りではないのである。


 だがこうしてクローで固定した状態でぶち込めば何の問題もない。現実的に問題を解決した上で、浪漫を満喫できるという訳だ。


『グ、グベ……ッ』


 断末魔のように痙攣する敵だが、まだHPはミリ残っている。それを捕らえたまま足蹴にして、私は背後へと振り返った。


 そちらでは、二体のカエルと“スコル”、そして随伴器の射撃戦が繰り広げられていた。


 “スコル”は図体がデカすぎて反転できず、後ろを向けたままで反撃できていない。しかしその巨体を盾にして、陰から自律ドローン達がビームで撃ち換えしている。


 それに対してカエル達は、ビームに被弾するものの目立ったダメージはなく、立ち位置を変えてドローン達を射線に捕らえようとしている。


「させるか!」


 ぐっ、と機体を立ち上がらせて、ビーム砲のトリガーを引く。キュィイ……と溜めて、ビームが放たれる。


 ドローン達と比べても極太のビーム砲で薙ぎ払うように掃射。直撃を受けた一匹目はそれで消し飛び、二匹目も大きなダメージを受ける。


 そこに、脚で捕らえていたカエルを投げつけて、激突。


 ごっつんこした二匹のメタルインセクトは金属のへしゃげる甲高い音を立ててその場に崩れ落ち、一泊置いて爆発四散した。


 パラパラ、と破片が降り注ぐ。欠片があたった自律ドローンの一機が、不思議そうに自分の頭を押さえていた。


『ピピ?』


「お疲れ様、お前達も。テレサさん、被害はどのぐらい?」


『3機がやられましたけど、すでに修理を開始してます。サブエネルギーが不足しているので、補充おねがいできますか?』


「おっけい、問題ない」


 ああ、なるほど。数が減った代わりに一体当たりの耐久性が増したから、完全に破壊されなければ生産ラインにつかってる修理アームを本来の用途で使う事ができるのか。


 多少ではあるが心強い。というか、これなら“ハティ”も損傷したら修理してもらえるわけか……考えてなかったなそこは。なるほど。


 サブエネルギーに関してはこちらもスラスター噴射で心もとないが、砲身冷却で回復できる分を考えると一応黒字の筈だ。それに、脚部をフルにつかって突進した際に瞬間的にけっこうな速度が出た御蔭か、スラスター消費が想定より少なく済んでいる。


 なるほどね。上位プレイヤーはこうやって高速機動と継続力を両立させてるのか。まあ相手との撃ち合い最中に加速の事も考えながら回避機動を取るのは普通に化け物だと思うけど。ちょっと真似できる気がしない。


『それにしても、ビームの効きがやたら悪かったですね。どうしてでしょう?』


「多分、水中から出てきたせいだと思う。体表が濡れていて、ビームのダメージが軽減されたのかも」


 ビームは質量を持つが、基本的には熱ダメージとの混合だ。濡れている相手には通りが悪いというのは、多少条件が違うけどいつぞやの蟹相手の時もそうだった。


 水気がある方が水蒸気爆発とかの副次ダメージが大きくなるんじゃないかって考えた事もあるけど、直撃威力が高くなった今の艦橋だとできるだけ乾燥してる方がいいね。


「こういう敵がでてくるなら、川沿いは歩かない方がいいな。となると……」


『森林地帯、ですか』


 巨大な柱のような大木が林立する森に目を向けて息を呑む。


 こっちはこっちで見晴らしがよすぎて敵の襲撃が多そうだが、まあ背に腹は変えられないか。


「“スコル”が大きいから、通れるルートは制限されそうだな……俺が先行して道を確保しよう。自律ドローン達は警戒ラインの構築を」


『よろしくお願いします』


「ああ、いこう」




◆◆





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ