第0話 世界
■クイックガイド:
※読み始める方向けの簡単な案内です。世界の空気と、最低限の言葉だけまとめています。
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■まず知ってほしい3つ
・灰
レゾナンドシティの臨界事故以後、世界は灰に覆われた。灰が濃い地域では、変異生物が出る。
・白帯
灰の中を比較的安全に移動するための避難路。灯りと光の線が目印になる。
・ハブ
白帯の結節点にある避難拠点。物資と人が集まり、小さな街のような機能を持つ。
白帯が止まると、避難民も物資も動けなくなる。だからこの物語は、基本的に「白帯を通す/守る」ための戦いが中心です。
(この世界では子どもが減り続けており、守る意味はさらに重くなっています)
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■主な勢力
・カルディア社:白帯や資源都市の運営に関わる巨大企業。正規戦力を持つ。
・グラウバッハ社:カルディアと対立する企業。白帯や資源の主導権を狙う。
・アストレイア社:新型機や実験装備を実戦投入する企業。各社と衝突しやすい。
・UDF(旧統一防衛軍):かつて灰と戦った正規軍。いまは残存部隊が各地で踏ん張っている。
・傭兵:企業や各勢力に雇われて戦う人たち。元正規軍も多い。
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■ 主要人物
・サキ:孤児院《光の園》の保育士。子どもたちを連れて白帯を避難中に《グレイランス》と出会う。戦えないが、「子どもを守る」ことだけは譲らない。
・アキヒト:RF(人型巨大兵器)のパイロット。傭兵団クレイヴ・アクトの《グレイランス》で戦う。
・ヒロ:RF小隊VOLKの隊長。アキヒトの上官で、部隊をまとめて白帯の前に立つ。
※《VOLK》の他メンバー(ポチ/ガンモ/リュウなど)は、本編の登場に合わせて覚える形で大丈夫です。
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■ 基本用語
・ RF:人型巨大兵器。もとは作業用の大型機械がベースで、武装を付けて戦う。
・陸上戦艦グレイランス:砲と装甲とRF運用能力を持つ巨大車両(走る基地)。
・ミュータント:灰の影響で変異した生物の総称。群れで現れ、白帯も襲う。
※このガイドは「だいたいこんな世界」でOKです。本編は第1話から読めるように書いてあります。
プロローグ:世界
最初に降ったのは雪じゃない。灰だ。
冷たさのない粉が肺をざらつかせ、その日から北は白地図になった。
夜の地面に灯が並び、「ここから先は渡さない。帰る人はこの白帯内を通る」と刻まれた。
灰のあとに現れたのは、名のない『群れ』だった。皮膚は緑灰で金属を噛み、関節を腐らせる。
あとから骸蛾やキーテラと呼ばれるようになり、その名が増えるたびに街はひとつずつ消えていった。
人はまず、運ぶための機械を集めた。壊れた橋を渡し、瓦礫をどかすため。
作業重機に装甲と脚と火薬を盛り、RFになった。最初の任務は戦いではなく、白帯を延ばし、避難民たちの『壁』になることだった。
いまでは“重機”の名残を削ぎ落とし、火薬と演算を積んだ人型巨大兵器になっている。
白帯は、灰の上を走る光の道だ。地下の導光ラインさえ生きていれば、今も点滅を続ける。
導光を“焼き起こす”ラインガードがいるかぎり、その道は消えない。
前へ出る者は壁になり、盾が折れても白帯だけは切らない。
負け続けた世界で、それだけがまだ「帰り道」と呼べるものだった。
だが、灰の世界には、その白を奪い、壊す側もいた。
プロローグ:灰
砂煙と火薬のにおいの中で、味方の声がひとつ消える。
薬で目の焦点を失った戦友が、笑いながら空に銃口を向け、そのまま引き金を絞った。
乾いた銃声が岩壁に弾かれ、砂丘には空薬莢だけが散った。
アキヒトがいた《ヘルマーチ》の部隊では、無線の向こうの呼びかけは、いつも途中で途切れる。呼び返しても、返事はない。
次は自分かもしれない――そう思いながらも、アキヒトは照準から目を離さなかった。
名前がひとつ消えるたびに、引き金を引く手から迷いだけが削られていく。
ただ壊し、奪う事だけが任務だった頃だ。
――その手は、いまもまだ、引き金の形を覚えている。




