No.46 その職人、街一の腕前につき
No.46 その職人、街一の腕前につき
「こんにちはー・・・」
モーゼさんのお家を出た後、いったんどうしようか話し合った結果、先に地図のお店へ行き、防具を揃えた方が良いと言う結論になった。
確かに、借り物の寝巻きにマントでは、街を回るのは些か不自然だと思うし、これ以上借り物を汚してしまいたく無い・・・と言うのが本音だ。
1番スムーズな流れとして、まず最初にカイルさんのお師匠さんのお店へ来た訳だ。
扉をソーっと開け、奥のカウンターに見えた女性に「お店見させて頂いても良いでしょうか・・・?」と声を掛ける。
「初めて見る顔だな・・・・・・構わんよ、好きなだけ見て行くと良い」
「良かった、お邪魔します」
顔馴染みのお客が多いであろう街で、一見さんの我々はかなり異質。
警戒されている気配が伝わって来る。
「モーゼの紹介で来た。身元もギルドで保証されている冒険者だ」
「モーゼの紹介?・・・・・・冒険者・・・もしかして、ワームの件の・・・」
「耳が早いな。そうだ、ワームとの戦闘で彼女は衣類や防具類を失った。こちらには良い製品が揃っていると聞いてな・・・何か見繕って貰えるか?」
「そう言う事か・・・あんた達を歓迎するよ。アタシはリンダ。自分で言うのも何だが、この街じゃ1番の防具職人だ!おっと、この街で1番って事は国1番だったわ、ワハハッ!何にせよよろしく!」
店員さんかな?と思ったが、この女性こそがカイルさんのお師匠さんであり、腕利きの職人さんだったのだ。
「メグミです!よろしくお願いします」
着ていたマントを外し挨拶をする。
「で、メグミはどう言う戦闘スタイルなんだ?後方支援?治癒専門?」
「いや、前線近接特化のアタッカーだ。拳闘士に近い」
「へぇー!このほっそい体付きで拳系!良いね、そういう意外性。かなり好きだよ!」
そう言いながら、リンダさんは私の体のサイズを確認して行く。
頭の先から、足のサイズまで全て確認すると、店内の壁際に置いてある箱を開ける。
「えっと、好みとか重視する項目とかある?」
「えっと、うん・・・どうでしょう・・・例えばどう言ったのがありますか?」
「そうだなー・・・例えば、機動性を特化したものだと、こんな、覆う金属面を極力減らしたアーマーとか・・・」
「え゛っ・・・」
箱の中から、トルソー付きで出て来たのは、金属製の水着の様な物。
防具のはずなのに、肌の露出が極端で防具の意味を成しているのか懐疑的である。
仮に防御の面をクリアしていても、これで街を歩くのはかなり勇気と、体付きに自信が無いと無理なのでは?仮に着れたとして、単純に年齢的に厳しく無いだろうか?
「な、無しでお願いします。肌を覆う部分はある程度確保して頂けると・・・」
「そっか、じゃコレとか・・・あとコレ・・・コレなんかも・・・」
次々に床に立てられて行くトルソー達。
明るめの可愛いデザインから、革張りのシックな物まで。
「基本防御力は皆高い。違いは、付与されているスキルと・・・後は好みと、利便性だね。聞いた話じゃ、一過性の流行はあるみたいだけど、結局本人が1番しっくり来た物を選ぶと良いぞ!」
「うーん・・・ヴィクターさんはどう思われますか?」
「・・・・・・俺か?女性の防具に関しては専門外だからあれだが・・・そうだな・・・お前の機動性を生かしつつ、敵からの攻撃を受けた際に衝撃で破れ難い素材の物が良いだろうな・・・」
確かに、1番重要な部分かもしれない。毎回服が服飛んでいたら、破産してしまう。
「なるほどねー、後は?」
「あ、あとスライムの攻撃で、溶け難い生地が良いです」
「そうか、破れ難く、溶けない素材。となるとー・・・」
私達の要望を踏まえた上で、リンダさんは再び手を箱に入れる。少し探す動きの後、一体のトルソーが引き出された。
「これはどう?アビス•ウィスパーの吐き出す糸を紡いだ生地を使用している。しなやかで強度も高い!他にもアーマーシープの皮を使ったショートパンツに、耐火製に優れたラヴァ・サラマンダーのロングブーツ」
「どれも希少素材ばかりだな・・・」
「ドルガニルが国を開いてから、こう言った珍しい素材の防具の製作依頼が結構あってな。初めて扱う素材だと、必然的に私の店を訪ねて来る。で、製作の報酬の一部に素材の融通をして貰っている」
なるほど、職人として未知の差材に挑み防具を作る代わりに、報酬のお金とその素材の余分を貰ったり交換したりしているそうだ。
「後はその素材を使って色々作ってんだ。この防具はここ最近じゃ最高の出来だぜ!ま、値段もそれなりだが」
「着て見たらどうだ?」
「は、はい」
「着替える所は奥だよ」
お店の一角に作られた試着スペースへ案内され、着替えたのだが、滑るような肌触りの生地で、大変軽い・・・本当に破れ難いのかと思うくらい。
ショートパンツも肌馴染みが良く、しゃがみ込んだり立ったりと言った動きに難なくついて来る。
不思議なのはブーツ。足のサイズは先に伝えていたのだから、ピッタリなのは当たり前だが、私の足に吸いつく様に自然に締め上げられ、余る部分が全く無い。靴を履いているのを忘れそうだ。
「何・・・この服・・・」
「着終わったか?」
「あ、えっとはい!」
試着室から出て着姿を見せる。
「お!良いじゃん似合ってるぞ!」
「・・・・・・良さげだな」
「はい。これ、凄いですね・・・」
余りの着心地の良さに、さっきの感想を余す事なく伝える。
「ははっ!私のスキルおかげかもな!“オートコレクト”って呼んでるんだが、まぁ、簡単に言うと、大まかに作っても着用者の体格に合わせて勝手に詰めたり広げたりしてくれるって能力さ、便利だろう?」
生まれながらにして、職人の才を持ち合わせたのかもなーとリンダさんが笑う。
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