表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

奇小井 紬希 と デプレッション⑥

「『封印(リチェイン)』」

 身体能力が上がる『チカラ』を残して、腕が刃になる『チカラ』を解除した。落ちたときに、変に自分の体の部位を刃で傷つけたくないからだ。

 下から少々薄暗い光が見えてきた。ついに地面に触れれるのだ。

 どういう体勢をすれば、あまり痛くならずに済むのか考えてようとしていたが、時すでに遅し。ドシンという音ともに、尻が先に地面につく形で着地した。尻餅をつくとも言う。

 身体能力が上がっていたとはいえ、それでも十分痛かった。

 あまりの痛さにしばらく動けずにいたが、次第に冷静になった。

 今、自分がいる場所は、出入り口となるドアは鉄格子でできていて、壁、天井、床はおそらく石でできているのだろう。上から落ちたのだから天井に穴があるだろうと思ったが、穴はすでに塞がっていた。鉄格子から見える廊下は薄暗いライトが1つしか見えなかった。先ほどまでいた真っ白い空間より落ち着いた雰囲気だ。つまり、ここは牢屋だ。

 中にはベッドもトイレも何もない。

 ただ、1人のスーツ姿の女性が眠っていた。紬希と同じくらい美しかった。というか紬希に似ていた。紬希と違う点を述べるのなら、身長は高めでスラッとしていて、お姉さんという印象があった。

 しばらくお姉さんを見つめていると、お姉さんの目が開いた。

 そしてここに俺がいることに気がついた。

「あんた、侵入者でしょ。扉からここに入ってきたわけじゃないし、もしかしてボタン押しちゃった感じ?」

 お姉さんは俺に近づいて聞いてきた。

「そうですそうです。ボタン押しちゃいました」

 俺の言葉を聞いてお姉さんは大笑いした。

「プッ! それ、わたしがふざけて作った罠なんだけど。まさか引っかかる人がいるなんて!」

「うううるさいですよ! だったらあなたは何でここにいるんですか?」

「わたしはね、ここのアジトで働いてるんだけど、アジトの予算の半分を無断でエロ本に使っちゃって、しばらく反省してろってことで、この牢屋に入れられたんだよね」

「あの部屋の本は全部お姉さんが買ったやつなんですか!」

 俺は思わず大声を出した。

「そだよ。あ、もしかして欲しかったやつがあった? いいよ1冊くらいなら」

「ありがとうございます。……じゃなくて! 俺は早くここから出たいんだよ!」

 周りを見渡したが、この牢屋から出られる通路や穴はなかった。

「それは諦めたほうがいいよ。だってここの出入りができるのは扉だけ。抜け道だとかそういうのはない。壁とかも掘っていくのも無理だよ。この牢屋はミサイルが飛んできてもビクともしない特別仕様だから」

 お姉さんは再び寝っ転がって俺に背を向けた。

「扉を破壊できたらここから出られるってことですね」

「無理だよ。ミサイルでも壊れないくらいの固さだから」

「『解放(アンチェイン)』」

 腕を刃にする『チカラ』を発動させた。

 そして、鉄格子の前に行くと、鉄格子を切りまくって人が1人ほど出入りできる穴を作り出した。

「『封印(リチェイン)』」

 お姉さんに『チカラ』を見られるわけにもいかず解除した。

 鉄の棒が倒れた音に反応したのか、お姉さんは俺のほうを見た。

「なんで鉄格子が切れてるの……?」

「それじゃ、さよなら」

「ちょっと待ってくんない」

 俺が牢屋から出ようとしたときお姉さんは引き留めてきた。

 お姉さんのほうを向くと、お姉さんは続けた。

「あなたは何者? 一体何が目的?」

 俺は身構えているお姉さんに向けて口を開いた。

「ただの高校生です。……俺はここで人を探してます」

「へえ……。あなたの人探しに付き合ってあげるよ。誰を探してるの?」

「えぇっと……、名前何だっけ? すみません覚えてません。連れがいるんですけど、たぶんその人なら名前を覚えてるはずだから、とりあえずその人と合流しないといけなくて」

 俺の言葉を聞いたお姉さんは親指を立てた。

「じゃあわたしもその一緒にいたっていう人とまた会えるよう手伝うよ。どうせヒマだし」

「お姉さん、ありがとうございます!」

「お姉さんって言われるの結構うれしいんだけど、ちょっと別の呼び方にしてくれない? そうだね……、わたしのことは柚音って呼んで」

 柚音? 聞いたことがあるような名前だ。

「じゃあ俺も。奇小井 深雪って言います。呼び方は何でもいいです」

「うーん。それじゃあ、みゆちゃんって呼ぶね」

「ちょっと女の子っぽくてやめてほしいんですけど」

「じゃあ、キユミ イオキとかどう?」

「そんなハイドロポ〇プの変な呼び方みたいなのにしないでください! もう、みゆちゃんでいいです!」

「そっか、よろしくね。みゆちゃん」

 俺と柚音さんは牢屋から出た。

 出たはいいもののこれからどうやって紬希を探せばいいのだろう。彼女はなぜだかこの建物の構造を理解していたし、もしかしたらこっちに向かってきてくれているのかもしれないが、ここは殺し屋のアジトなのだからずっと待っているのは危険。

 だから、柚音と名乗るお姉さんと一緒に行動するのがいいだろう。

 柚音は隣の牢屋の中に入っていった。

 お姉さんは壁へと向かっていった。壁のすぐ目の前でも足を止めなかった。そして、壁をすり抜けていった。

 俺は呆然としていた。

 柚音は振り向いたのか、壁から彼女の顔のみが出てきた。

「ここ近道だから早く来て」

 壁をすり抜ける行為なんて初めてだから一瞬躊躇ったが、勇気を出して壁へ思い切り走った。

「やっぱ怖い!」

 これが本当の壁じゃなかったわかっても、見た目がただの壁だからすり抜ける直前で急ブレーキして、壁に手をつこうとした。俺がつこうとした壁は、本当は壁じゃない。すり抜けるというのを忘れていた。したがって前に倒れた。

 結果的に壁にすり抜けられてよかったのだが、ここは真っ暗でよくわからなかったが目の前に柚音がいたらしく、彼女は俺がまさかすり抜ける直前で倒れるだろうだなんて考えているわけもなく、一緒に倒れたのだった。

 俺は手をついて頭を打たずに済んだ。片手が床に触れているのがわかるが、もう片方の手は柔らかいものに触れている。俺は一体何を触れているのだろう。柔らかいものは手のひらサイズで揉める。揉むの楽しい。

「……やめてくれない。揉むの」

 柚音は何を恥じらいでいるのか声が裏返っていた。

「この柔らかいのは何です?」

「わたしの胸」

 俺は2,3度揉んでから立ち上がった。

「すいませんでした」

「ねえ、わたしの胸だって聞いてからさらに揉んだよね?」

「揉んでません」

「揉んだって!」

「だったらブラしてくださいよ! してないほうが悪いですよ!」

「なんで逆切れするわけ! しかたないじゃん! ブラしてないほうが身軽で」

「とにかくここが暗くて何も見えないんですけど」

「そうだったね。ここは訓練してないと何にも見えない空間でね」

 柚音が立ち上がったような音がした。

 柚音の手だと思われる柔らかいものが俺の手を握ってきた。

 俺は柚音に引っ張られて前へと進んだ。

 しばらくすると、また壁をすり抜けた。

 周りを見渡すとそこは真っ白い廊下だった。

「これからみゆちゃんの連れを一緒に探してあげるわけだけれど、代わりにわたしも探してほしい人がいるんだよね。その人はわたしたちにとって裏切者で、もう1度会わなきゃいけないの。ここから出たら探しといてくれると助かる」

「それは誰なんですか?」

「黒杵 紬希って名前なんだよ。わたしの双子の姉だから顔は似てるし、見つけやすいかもね」

 紬希? 名前に聞き覚えがあった。

「その人って身長が俺より低いですか?」

「いや、わたしよりちょっと高いくらいだね」

 紬希と柚音の顔が少し似ていたような気がしたからもしかしたらと思ったが違ったようだ。でも違ってよかったのかもしれない。殺し屋の裏切者なんてものは物騒でしかない。もう1度会わなきゃいけないとか、優しいふうに言ってたけど、絶対殺し合いになる。

 少し歩くと、こちらに向かって走ってくる人が見えた。先程襲ってきた奴らとは服装が違いゴスロリだった。

「紬希ー!」

「よかった。というかよくここまで来れたね」

「案内してくれた人がいるんですよ」

 俺は柚音のほうを向いた。

 さっきまでフレンドリーだった柚音の目が鋭くなっていた。

「この人がみゆちゃんの連れなんだね」

 柚音はどこからかナイフを取り出して紬希に襲い掛かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ