友達
メリーアンジュはベルンストの腕の中で泣いていたが、吹っ切れたように顔をあげた。
「ローラはしっかり者で、美人で魔力もあるのに婚約者がいないのが不思議だったの」
はぁ、とメリーアンジュが息を吐く。
「騙されたなんて思ってないわ。
私はお友達と思っていたもの。お友達だったもの。
でも・・それより大事な想いだったのね。」
そっと両手をベルンストの頬に添える。
「ローラは思いつめちゃったのね。
私、まだそこまで好きになっていないと思う、ごめんねベルンスト」
「思いつめなくっていいから!」
自分が生け贄にされかかったというのに、メリーアンジュに呆れてしまう。
「そんなに友達が大事だったのか?」
何を今更、とばかりにメリーアンジュがベルンストを睨む。
「私の周りって、お兄様達狙いの女性ばかりで、私の機嫌取るか陰口を言うかでしょう。
やっと出来たお友達も、お兄様がチェックするし。
心配してくれているってわかっているけど、もう子供じゃないんだから」
ベルンストはじっとメリーアンジュの話を聞いている。
そうして配慮した友人でさえ、メリーアンジュを供物として扱ったのだ。
「私には、ベルンストもロイもお兄様もいて、妬まれても仕方ないとは思うのよ。
でもね、生け贄なんてひどすぎる。すごく怖かったのだから。
だからね、ありがとう。助けてくれて、守ってくれてありがとう。
私もお友達より、ベルンストの方が大事よ。ベルンストが無事に帰ってきてくれて嬉しい」
公爵家の力と美貌だけのお人形と陰で言われているのも知っている。
私に疚しいところはない、兄と比べられて悲観する必要はない。
私に兄ほどの能力はなかった、優秀な結果ではなくとも努力では負けていない。
それをローラは分かってくれていた。
その彼女を変えてしまう恋。
きっと、ローラは私も兄のアーレンゼルも、王太子であるベルンストも排除しようとしたのだろう。
メリーアンジュは強い。ベルンストはメリーアンジュを見つめながら思う。
多少ひねくれているが、周りから出来の良すぎる兄や婚約者候補達と比較され続け、過度な期待と、身内からは溺愛という歯止めのない甘やかしを受けて育ったのだ。
自分の意志でおとなしくしているだけで、打たれ強い性格をしているのだ。
「公爵令嬢を魔術で拉致して、他国の貴族の生け贄にしようとしたなんて、処罰されて当然だとわかっているわよ。
犯人の中に友人がいたら、驚いて泣いても不思議じゃないわ」
自分に言い聞かすようなメリーアンジュ。
「貴方に私をなぐさめる役をあげてよ」
それでね、とメリーアンジュが続ける。
「この事が落ち着いたら、町に一緒に出かけてね。」
デートよ、とメリーアンジュの顔がドンドン赤くなる。
「もう、王宮に閉じ籠るのは飽きちゃったわ!」




