遭遇
ローラの扱いに悩み、可愛いタイプ、秀才タイプとか考えましたが、すっかり悪役になってしまいました。
夜の空を炎が染める。
町も教会も喧噪の渦で、芥子を隠していた教会の高い塀は炎で崩れ落ちそうである。
芥子畑はすでに火が回り、部下の騎士達が教会内に潜んでいたユークレナ結社の構成員達と対戦しているが、騎士と寄せ集めの人間では歴然とした戦力の差がある。
ロイとアーレンゼルは魔力を感じる地下に向かった。
ベルンストに違いないが、地下である為、魔力の行使は抑えられているようだ。
途中で複数の足音に、ロイが身構える。
すぐに姿が見て取れた。多数の男たちに囲まれて現れたのはローラ・アイサイム。
キールッヒ・モーレンシュワルツは地下に残って、ベルンストと応戦しているのだろう。
「ロイ様!」
ロイの姿を見たローラが声をあげるが、ロイはローラを確認したにも関わらずアーレンゼルを残し地下に向かおうとする。
しかし、ローラの護衛は王国軍の兵士だったらしく、剣を手に突進してきた。
ローラは、護衛であろう仲間の間から身体を抜け出し、ロイに手を差し伸ばすが、届きそうにはない。
「貴女を探してましたよ、アイサイム伯爵令嬢」
アーレンゼルは僅かに笑みを浮かべてローラを見る。
「アーレンゼル様、これはどういった事ですの?」
伯爵令嬢らしくローラが答えるが、深夜にこんな教会にいるのを、どうやって説明しようとするのか。
す
「こんな深夜に他領の教会で何をされているのですか?」
アーレンゼルの方が言葉を先にする。
バラバラとローラの前に護衛であろう男達が立ちはだかるが、アーレンゼルが剣を一振りすると、一番前の男が腕を押さえて身を屈める。赤い血が男の腕を伝わる。
「私は、私は、」
既に覚悟を決めているかのようにローラは、背筋を伸ばし対戦しているロイを見つめる。
ふいにローラが片手を上げると、突風がアーレンゼルとロイに吹き付けた。
更に風は強くなり、アーレンゼルとロイは魔力で壁を作り遮断するが、その壁を潰すかの如く、風は威力を増していく。
ロイはローラの護衛の男を斬ると勢いのままに、ローラに突進する。
ロイの剣には魔力で、破壊力を倍増させてある。
ガキーン!!
ローラに振り降した剣は、見えない壁に遮られ、ローラには届かない。
「ロイ様、私の手を取って」
ロイに向かい手を差し出すローラ。
アーレンゼルが、無効の魔術を繰り出す。ローラはロイに魅了の魔術を掛けようとしていたのだ。
跳ね返された魔術に、ローラがアーレンゼルを睨み付ける。
「その綺麗な顔など潰れてしまえ!
何もかも持っているその顔!」
ローラはアーレンゼルにメリーアンジュを重ねて見ている。
文官であるアーレンゼルの前に武官のロイが出る。
アーレンゼルも剣を扱うが、ロイとは比にならない。
それが気に障ったのだろう。
風の中に氷が混じり、ロイに吹き付ける。
「そんな女など、いなくなってしまえ!」
氷の塊がどんどん大きくなる。
ローラにこれほどの魔力があるなど、想像もしなかった。
ふははは、ローラから笑い声がもれる。
「たいした魔力もないくせに、公爵令嬢だというだけで」
ローラの言葉が終わる前に、氷の塊がローラに跳ね返って頬に傷を付ける。
頬から流れる血を指で確認しながら、ローラがアーレンゼルを見る。
「愚かな。
自分の魔力に酔いしれたか」
アーレンゼルがローラの魔力を抑え、対峙する間に、ロイが護衛達を斬り捨て、ローラに一刀を入れる。
腕には傷口が開いて血が溢れ出たが、ローラは我が身に起こったことが一瞬のことで、驚いて目を見開いたが、直ぐに痛みに襲われ、悲鳴をあげた。
「きゃああああ!!」
「それぐらいの魔力など、我らの敵にもならない。」




