表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性格の悪いお嬢様  作者: violet
41/54

ヨハネの立場

いつも、誤字報告ありがとうございます。

自分で気づかないものや、見落としているものを教えてくださり、ありがとうございます。


メリーアンジュが強引に話を推し進める。


王の言葉と報告書により、ヨハネとベルンストは異母兄弟であるが、ベルンスト達は公表するつもりはない。


ヨハネにしても、王太子と酷似した顔は血縁関係を連想させるが、平民として育った自分にそれを口にすることは叶わない。

顔を知らない父親は、王太子に近い血族であろう。

だから、自分には魔力があるのだ、と推測する。


「こんなに似ているのだから、兄弟と言った方が納得するわ。

どうせ、周りは勝手に邪推してよ。

神父様が中央教会に戻ったら、ベルンストの顔を知っている者もいるでしょう?」

メリーアンジュはベルンストから聞いているので、事情は分かっていて言っている。

公表できないなら、隠すよりも、ほんの少しの誤魔化しで包んで周りを思い込ませればいい。

顔が似ているのを利用すべきだ。

どこかの王家筋の養子にしてしまえば、ベルンストが兄貴分と呼ぶ事に支障がない。

誰が見ても、教会内部にコネクションを入れる為のものだと分かるから、詮索も少ないだろう。



アーレンゼルも神父の記憶玉を見るときに側にいて、王の言葉を直接聞いている。

王は、ヨハネを息子と公的に認めることはないだろうから、ヨハネの後ろ盾はベルンストが成ることになる。

「アンジュの意見はいいかもしれない。

ベルンスト、どうせなら堂々と支援できるように」


「そうだな、いいかもしれない」

そう言ってベルンストはヨハネに顔を向ける。

「神父には王家の何者かの血筋が入っているのは間違いないだろう。

それを調べても無駄だろうが、顔が似ているのは使える。

私が後援者と成るのに、血縁ということなら問題ない」

ベルンストもアーレンゼルも、ヨハネが本当の異母兄とは言わない。

その必要はない、血縁だと言えればいいのだ。

ヨハネ神父を調べた時に、父親は調べられなかった。

王である父は、完全に身元を隠してヨハネの母親と会っていたとわかる。

誰にも秘密にして。


ホッと息を吐いたメリーアンジュ。

「神父様、私は生け贄とされるために狙われています。

是非、教皇になって私を助けてくださいね」

「生け贄?」

驚いたように、目を見開いてヨハネが尋ねる。答えたのはアーレンゼルだ。


「神父殿が、行方不明の女性達を探して、情報は掴んだのだろう?

アンジュの生き血で願いが叶う、と狂った人間たちに狙われている。

だから、王宮で匿っている。

教会も権力抗争で、心清らかな人間が教皇、枢機卿になるとは限らない。

是非とも、本来あるべき正教会の姿に戻して欲しいと切に願っている。

人々の心の支えとなる場所にしていただきたい、それが出来るのは神父殿だと思っている」

ユークレナ結社などに人々が助けを求める必要がないように、とアーレンゼルは語っている。

もう、ヨハネは断るすべを失った。早急に力を持たないとメリーアンジュが狙われ続けるのだ。


ヨハネには初めて出会った公爵令嬢であるが、母親を目の前で亡くしているヨハネには女性を守りたいという思いが強い。



「教会を一掃するには正教会で権力がいる。

そのために枢機卿になる必要がある」

ベルンストが後を引き継ぐ。

「権力競争に参加するために、私の血族になる必要があるのだ」

各国に布教している教会の教皇は、キルフェ王よりも権力がある。

教皇にはすぐには成れないが、大司教にはすぐに成ってもらおう。


本当の異母兄弟なのに、真実は知らせず、兄弟ごっこをしようと提案しているのだ。

メリーアンジュの提案に、ベルンストもアーレンゼルも乗った。


ベルンストは護衛を呼ぶと、メリーアンジュを部屋まで送るように指示を出す。

メリーアンジュは何か言いたそうにしたが、この後、自分がいては不都合な話なのだろうと、目を伏せる。


「大丈夫だよ、アンジュ、後で教えるから」

ベルンストは扉までメリーアンジュを送ると、護衛に引き渡す。


扉が閉まり、メリーアンジュが部屋から居なくなると、部屋の空気が変わる。



ヨハネの前に戻ってきたベルンストから、表情は消えている。

「麻薬である阿片の芥子を栽培している教会がある」

それは教会内部も阿片に汚染されている者がいるということだ。


「神の僕が我ら神職者です。阿片に手を染めるなど」

ヨハネの声は震えている。そうでもしなければ、教会で地位は得られないのが分かるからだ。

「地位よりも、もっと大切なことを伝えるのが神に仕える者の役目です」



「だからこそ、神父殿に教会権力を握ってもらいたい。

粛清するには、権力が必要だ」

ベルンストに言われるまでもなく、ヨハネだって分かっている。


だが、キルフェ王太子の支援があったとしても、権力とはどうやって得るのだ?

そういう事は、神学校時代に諦め、無縁のものと思っていただけに、途方に暮れるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ