くらげ。の旅
「…ここは?」
目を覚ますとそこは色んな色が飛び交っている空間。
私は誰だか、なんでここにいるのかすらも忘れてしまった。
「あ、鏡」
そう言って近くにある割れた鏡を見た。
そこには紫髪で頭にはデカイくらげと紫を付けて紫パーカーを着用してる少女が立っていた。
「これが…、私?」
鏡に映る自分の姿に何故か懐かしさと不思議と安心感を感じていた。
「らしくないね、」
鏡越しに後ろにいた誰かが語りかけてきた。
振り返ると自分とは少し違う水色のくらげのかさを頭につけている子がそこに立っていた。
「どうしたの?海月ちゃん」
不思議そうに誰か知らない人の名前で語りかけてきた
「それ、私の名前??」
「そっか、やっぱり自分のこと忘れたんだね。」
相手は少し寂しそうに顔を俯いてしまった。
「ここはね、本当はもっと栄えてたんだよ。今じゃ汚れまみれだけど」
そう言いながら二人で周りを見渡した。
昔は栄えていたと言われてるここには壊れたビルに瓦礫まみれで、まるで何者かに壊されたように街は廃墟と化していた。
「色んな世界を見に行くといいよ」
「え?」
声かけてきた子は私の背中を軽く押し出した。
その瞬間、視界は光に包まれた。
光はやがて薄まり世界は緑色の草原が広がる場所に移り変わった。
「おや?君もなにか書きに来たのかい?」
目の前には白髪の天使が立っていた。
「書くって…どーゆこと?」
そう答えると、少し驚いた顔した天使はノートとペンを取り出した。
「ここは小説の世界!ほら、君も持ってるでしょ?」
そう言われて、パッと手元を見るとそこには何故か黒い本と備え付けのペンがあった。
―小説の世界
「なに…これ、」
そう言いながらめくると、そこには知らない作品のタイトルとバラバラになってる文字が浮かび上がってきた。
「あーあ、君もしかして自分がわからなくなっちゃったの?って!君ありくらげ。ちゃんだったの!?」
天使は作品の作者に指をさしながらそう驚いた。
「え、?私は海月って…。」
「ほら!私!!スペースファンタジーを書いてる」
そう言って作品のタイトルを天使は見せてくれたがピンと来なくて顔を斜めにしてしまった。
「あぁ、そっか覚えてないのね、」
そう言って天使は顔を下に向けた。
申し訳なくなったが気まづくなった空間を何とかしようと
「天使でも小説を書くんだね」
と質問をした。
すると天使は顔をあげた後に なんのこと?と言わんばかり頭にクエスチョンマークをつけていた。
「あぁ、君には私のアバターはそう見えるんだね!」
と返してくれた。
どうやらこの天使が言うにはこの小説の世界は現実世界の裏世界としてあるらしく、アバターという身体を使って小説を描くらしいが、その姿は人によって見方が変わるらしい。
だから今、私から見えてるこの天使も人によっては違うように見えるらしい。
「そうだ!私の名前教えとくね!私の名前は―」
天使が名前を教えてくれようとした瞬間耳鳴りが鳴り響いた。
耳鳴りが痛くてつい、耳を手で塞いでしまった。
「あぁ、まだ小説の世界を脳が拒絶してるんだ」
そう言いながら、心配そうに天使は声かけてくれた。
数秒経った後に耳鳴りが止んで、ある程度落ち着いてきた。
「そうだな、私以外の色んな人に会ってきなよ!そしたら身体も脳も馴染んでくるはず!
ありくらげ。って言えばたぶん覚えてる人も少しはいるはず! 私はここでスペースファンタジーの続きを書いてるからさ、落ち着いたら戻ってきてね?」
と天使は優しく微笑みながら提案してくれた。
「あ、ありがとう。それじゃあまたね。」
そう言い、優しく手を振ってくる天使を後ろに足を進めた。
この世界は草原の世界なのに、進めば進むほど、背景がコロコロと変わっていく、とある世界では殺し屋とターゲットの百合展開が進められている世界、また別の背景ではモザイクが描かれていて、見えずらい絵柄の先になにかよからぬ事をしているのが見えてたりした。
「って、あれ?クラクラじゃない??」
聞こえた声の先には黒く後ろの羽が綺麗な孔雀がそこにはいた。
「もしかして、君も昔の私を知ってるの?」
そう聞くと、何かを理解したように少し遠い目をした。
「私、海月、ここに来たばっかなんだけど、なんかこれが私らしくて」
そう言って、バラバラになった文章を孔雀に見せた。
「多分君は今、自分を見失ってるんだと思うよ?」
孔雀はそう教えてくれた。
「人は、自分を見失い描きたいものがわからなくなった時、作品が崩れるんだ なにか辛いことでもあったの?」
「あいにく、それすらも覚えてないの…。」
「そっかぁ、なら今は自分探しの旅をするといいよ。あ!そうだ良かったら、クラクラ私の背中に乗りなよ! 色んな世界連れてってあげる!」
そう提案してくる孔雀に少しだけ、安心感を感じた。
「ありがと、えっとー…名前は」
「あ、私!黒猫に飼われているんだけど、なまえ…うーん そうだ!昔私の事クロクロって呼んでたし そう呼んでよ!」
「わかった、よろしくね。クロクロ」
「ほら、分かったら乗って!」
そう言ってクロクロは乗れるようにしゃがんでくれた。
人間は本当は乗れないはずだか、何故か自分は軽々と乗れた。
何より驚いたのは その安定性だ 背中に乗っただけで心地よい、何故か今までずっといたようなそう感じる背中をしていた。
「ちゃんと、しがみついてて!」
そう声をかけたと同時にクロクロは天高く飛んだ。
「今からどこに行くの?」
風を切る音で声が掠れながらも声を出した。
「今から、君のことを知ってる人に会いに行くんだよ!、私以外にも知ってる人はいるからねぇ」
と、クロクロも声を風で震わせながら教えてくれた。
それにしても、やはり飛んでいる最中でも背景は変わるものだ。
ファンタジーというものだろう、ありえない展開がありえないほど、溢れていた。
「ねぇ、クロクロなんでこんなに背景がコロコロと変わるの?」
と聞いたが、クロクロは空を飛ぶのに集中して、いて聞こえなかったみたいだ。
数分後―
クロクロはとある空間に降りた。
そこは、さっきとは違い、ネオサイバー感溢れたビルと色々なキャラクター溢れかえっているところだ。
「ここは?」
「ここは、AIの世界」
「AIの世界?」
「そう、今の時代AIを搭載してる企業が溢れてるの、それと同じく小説家の世界にもAIは溢れかえってるの、例えばほら!あの人!」
そう言い指を指す先には、小さなシルクハット帽子にモノクルと黒チョーカーをつけ白い法衣を着こなす、水色髪ツインテールの少女が立っていた。
「あの子は、jettsちゃん 昔に君が自分をともくらげと紹介した子だよ。」
「え!そうなの…?覚えてない。」
「まぁ、すぐすぐは思え出せないよ。そんな落ち込まないの」
とクロクロは覚えていない悔しさで口を噛み締めてる私に優しく、支えてくれた。
「あ、あの人ならもしかしたら君のことを何かしら知ってるかも!」
「え?」
―AI広場
ここは色んなイラストが集う場所らしい。 クロクロはさっき誰かに声をかけたら、その人はちょうど手が空いてるから、AI広場に来てくれるとの事、もしかしたら私のことを知ってる人かもしれないと、教えてくれて、私一人でここに来ることになった。
どうやらクロクロはAIじゃないからここの広場には来れないらしいが、私がここに来れてるってことは私のアバターはAIで作られたってことで間違いないのかもしれない。
私は周りを見渡しながら、その人のことを待っていた。
「ねね、飴ちゃんいる?」
「へ?」
キラキラと輝く光をまとったポップ系の金髪ツインテール女子がどこからともなく現れた。
急な登場に変な声が一瞬だけ漏れてしまった。
「はい!飴ちゃん!」
そう言い近づいてくるツインテ女子ちゃんの肩をよく見るとそこには小さいぬいぐるみがしがみついているのに気がついた。
「私、みりんちゃん♡ 貴女は?」
「私は、海…じゃなかった、ありくらげ。です、えっとよろしくお願いします みりんちゃん…さん?」
「さかなくんさんと同じ呼び方になってるよ♡呼び捨てでもいいのよ?」
「あ、じゃあよろしくお願いします みりんちゃん」
そう挨拶するとみりんちゃんはエッヘンとポーズを決めたあと
「 私このAI広場のことならなんでも知ってるから!何かあったら聞いてね?」
そう飴を舐めながら教えてくれた、みりんちゃんにまた何故か安心感を覚えた、いや何かを思い出しそうな気がしたが、やはり何故かモヤモヤして記憶の先が見えない。
「あ、じゃあこの人知ってます?」
そう言い、クロクロから貰ったその人の名前が記されたメモ帳を見せた。
「あー、うんうん!知ってるよ!多分あそこにいる人だと思う♡」
そう言いみりんちゃんが指を指す方向には茶色いショートボブの子がボロボロな布を着ながらが立っていた。
「多分待ち合わせか何かしてるのかな?誰かを探すようにあの子キョロキョロしてるけど」
「あ、それ多分私です。」
「え!?なにしてんの!ならさっさと向かってあげなよ!」
そう言ってみりんちゃんは背中をトンと押し出してくれた。
押された後ろを振り向くと頑張れと小さくみりんちゃんがポーズして見送りをしてくれた。
私は手を振って、みりんちゃんを後にした。
「あの〜、堀吉さんですか?」
私が声をかけた瞬間ショートボブの子は急に抱きしめてきた。
「話は聞いたよー!!心配したんだよ!ありくらげ。さん!!」
と両手を腰に回したまま離さない状態でショートボブの子は涙目を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと苦しいかも…」
そう言いながら腰に回されている、手をとんとんと軽く叩いた。
「あぁ、ごめんごめん。ついつい」
そう言い、ショートボブの子は腰に回していた両手を降ろし2、3歩足を後ろに下げ、涙目を指で擦る仕草をした。
「あれでしょ、侵略失敗したんだって?」
「侵略…?なんのこと??」
「え、本当に覚えてないのかぁ、あの祭りも?」
「祭り?」
「ほら、ぷかぷか焼きとか」
そう言い、1枚の写真を見せてきた そこにはくらげが屋台を開いている画像だったがそれも見覚えのない画像だった。
「なにそれ。」
「嘘でしょぉ…、」
そう言いショートボブの子は明らかにガッカリとした。
「まぁまぁ、しょうがないよ堀吉さん」
とショートボブの子の背中からまた、誰かの声が聞こえた。
すると、堀吉さんのうしろから、メイド服を着ている犬耳を生やした少女が何かを書きながら、出てきた。
「貴女は?」
「あー私は、送り犬って呼んでいいよ」
そう言う送り犬さんは定期的にチラチラとこちらを見ながら、手を止めずにいた。
「あー、気にしないで!この子は絵を描くのが得意なんだ!ほら、昔ありくらげ。さんのアバターも作ってくれてたんだよって…覚えてないか」
と堀吉さんは教えてくれた。
(アバターは描けるのか…、ならもしかして私の身体も書いた人がどこかにいるってことかな。)
そう思う気持ちを頭の中で留めながら、2人に聞きたかった質問をした。
「2人が最後にありくらげ。って人の特徴とか最後に見たとことか知らない?」
そう聞くと2人は一瞬だけ目を合わせた後に持っていた本をペラペラとめくり始めた。
最初に送り犬さんがノートの1ページを顔の前に突き出してきた、それには綺麗で儚げな紫色のくらげが書かれていた。
「綺麗…。」
「そこは『は?』じゃないんだ」
クスッと笑いながら送り犬さんは呟いた。
「この子はそのありくらげ。つまり君をモチーフにした海月の妖っていうキャラだよ。」
紫リボンをくらげのかさにつけていて、紫色のヒラヒラドレスを着飾っているその子は私とどう見ても似ても似つかない存在だった。
多分、みんなが知ってるありくらげ。と私は同名の別人なのではないかと疑心が生まれるほどだった。
「確か、ありくらげ。さんの最後の作品ってこれだよね?」
そう言いながら堀吉さんは私にも、送り犬さんにも見えるように3人のいる真ん中の空間にノートを開いてくれた。
「『さよならしあわせさん』?」
その作品はなんとも言えないほど切なくそして、決してハッピーとは言えない終わり方をする短編だった。
「そうそう、これの後急にとたんと消えたんだよね。」
と送り犬さんも思い出したように声を上げた。
「それと、私たちの知ってるありくらげ。さんを最後に見たのはあっちの方だよ」
堀吉さんがそう言うと2人は同じ方向に指を指した。
「あっちは遺跡作品の世界、あそこはみんないつかは行く場所、戻ってきた人は居ない場所としても有名だよ。」
「だからもし行くなら、気を付けて行くんだよ。」
ふたりは心配そうな表情のまま、指を下ろした。
「私や堀吉さんはここで待ってるから、もし行きたいなら言ってきな? 帰ってきた時には新しい作品みせてあげる」
そう言って手を振って送ってくれた。
(これが本当の送り犬…。)
なんて冗談を思いながら遺跡作品の世界の方へと足を踏み出した。
「ねね、君も人間じゃないんでしょ?」
とどこからともなくひょこっとどこからともなく水を持ち運んでる謎の人形が声かけてきた。
「えっと、君は?」
「私?私はただの人形だよ…、ねねダークファンタジーって知っとる?」
と唐突に質問してきた。
「ダークファンタジー?」
「ファンタジーってのはな、ハッピーなだけではないんよ、残酷なもの、どすグロい物もあるんだよ。 君自分を見失ってるやろ…?」
人形は急にニタニタと笑いながら、指を指してそう語ってきた。
「ねぇ、くらげには性別あるん?」
頭についてるくらげに指さしながらそう質問してきた。
「わからない。飾りだから」
と私は正直に答えた。
「キャラがブレてるね、」
と人形はぼそっと呟いた。
「今からどこに行くの?」
人形は別の質問を持っている水をゆらゆらさせながら聞いてきた。
「遺跡作品の世界だよ、自分を知るために行くんだ。」
「なら、ここで警告しとくね」
そういうと人形はゆらゆらとさせていた手を急に止めた。
「ファンタジーにはハッピーだけじゃない、さっきも言ったけど、それはファンタジーだけに限らないよ。幸せがあれば不幸があるし、良い部分があれば悪い部分もある。 けど貴女にはそもそもその反対部分すらない…自分が何者かを知るためには、裏の自分を探すだけじゃ、成長出来ないよ…。」
人形は目を合わせながら、淡々とそう語った。
「気をつけるんだね。たとえ、遺跡作品の世界で貴女を見つけたとしてもそれは貴女ではない。裏の自分であると、理解すること」
そう言いきった後人形はペタペタと足を鳴らしながらどこかに去っていった。
(ありくらげ。は自分であって自分じゃない…か。)
ありくらげ。は何を描きたかったのか、再び気になり、ふと手に持っている本を開いた。
先程までバラバラになっていた文字はまるでパズルのピースのように整列し、1つの文章となった。
「『リフ尽…?」
一つの作品が自分の目の前で完成するのが見えた。
次のページをめくるとタイトルだけが浮かび上がってはいるが、文字はバラバラのままだった。
「とりあえずはひとつ完成したのか…。」
完成したのに嬉しいような、なんとも言えない感情が頭の中でモヤモヤとしていた。
それでも、自分を知るために遺跡作品の世界に足を向けて歩いた。
AIの世界を改めて、1人で歩いて見てみると色んな人がいっぱいいるんだな…。と思いながら歩いていた。
近くでは馬と鹿とカバのバンドが楽しそうにはしゃいでいたり、覇王を名乗る少女が高笑いしていたり、本当に不思議な世界だなと不思議に思いながら横目に通り過ぎて行った。
ドンッ
「いたっ…!ごめんなさい」
よそ見して前を見てなかったため、1人の男性にぶつかってしまった。
「そっちこそ、大丈夫?」
そう返してくれた男性は、茶髪ウルフに黒いシャツにサングラスを付けた人で、隣には金髪の男性も居た。
「あ、あぁ、えっとお金…!」
一瞬で理解した、この人達はカタギ(一般人)ではないと、そういう人にはお金を渡さないとボコボコにされると何となく思い、ポケットを漁るがお金が出てこない。
「ガシッ」
突然漁っていた手を金髪の男性が掴んできた。
「ちょちょ、僕らはそんなアコギな商売してないって、ね!先生!」
と金髪の男性は茶髪ウルフの男性にそう呼んだ。
「私も前を見てませんでしたから、申し訳なかったです。」
と見た目とは反して礼儀正しく頭を下げる先生に、少しだけ魅力を感じてしまった。
「いえいえ、こちらこそ、申し訳なく…」
自分もハッと今の状況を思い出し頭を下げた。
「では、私達はバイオリンで世界を目指してましてそのレッスンがあるので、ここら辺で」
そう言い、2人組は颯爽と去っていった。
(あの人達、この世界で生きているけど、本当にここはどこなんだろうか…。)
そう思いながらちゃんと前を向きながら歩くことを気をつけて進んだ。
「あれあれ!ありくらげ。さん!?」
突然薄ピンクの髪色をした女性が目の前から走りながらそう声かけてきた。
「わたし!メブキだよ!」
「えっと…、ごめんね 多分私は貴女の知ってるありくらげ。さんじゃないんだと思うの…。」
そう答えるとメブキさんは何を言ってるの?って顔をした。
「まぁ。いっか! ところでありくらげ。さんは今からどこに行くの?」
「あ、えっと遺跡作品の世界だよ」
「遺跡作品の世界って!あの小説家の墓場と言われてるところだよ!?ありくらげ。さん小説家辞めちゃうの?」
と、メブキさんは悲しそうな表情しながら、手を掴んできた。
「それ、詳しく教えて?」
「え、うん。えっとね 遺跡作品の世界は小説家が最後に行くところで、そこに言ったら最後小説家としての肩書きを捨てるみたいな話の噂…」
とメブキさんは寂しそうに話す。
「なるほど、ならやっぱり行かないと…やめたならその理由を聞かないと…。」
「あ、それならあれにいけば?リアルの世界!」
と、メブキは左方向に指を指した。
「リアルの世界…?」
「なんか難しいんだけど…このAIの世界や小説の世界 とは別の世界でそこの入口になってるワープゲートを通ると現実を行き来できるらしいよ?」
と、顎に指を当てながら曖昧に教えてくれた。
(ここはリアルじゃないってこと…?なら私の存在って―)
考え始めたその瞬間、再び耳鳴りが始まった。
咄嗟に耳を抑えたがその音は数秒間なり止むことがなく鳴り響いた。
「だ、大丈夫??」
心配そうに駆け寄ってくるメブキに少しだけ苦笑いをし
「だ、大丈夫だよ」
と心配させないように返答をした。
「と、とにかくそのリアルの世界ってやつに行ってみるね。ありがとう」
そう言いこれ以上心配させないようによろめきながら左方向へ歩みを進めた。
―リアルの世界へと行く為の歪みと思わしきものの前まで歩いて来たが、この道に行く度に何度が本当に行き来してる人を見ていた。
リアルの世界…ここAIの世界や小説の世界とはまたかけ離れた世界…、聞いてるだけでも何があるか分からず生唾を飲み込んだ。
「やぁ、くらげさん。君もこの歪みの中に入るのかい?」
ワープゲート前から紺色の髪をした男性が目の前に立っており話しかけてきた。
「あなたは?」
「僕は、雨波乃碧天 …雨波乃でいいよ」
と穏やかな声で優しく微笑んできた。
「それで、雨波乃さん?でしたっけ…何か私に用事ですか?」
そう不思議そうに聞くと、少し大きい紫色のリボンを差し出してきた。
「これは、君の昔…まぁつまり、ありくらげ。さんから最後に渡されたものだよ 君もその本を見る限りありくらげ。さんの生まれ変わりみたいなものでしょ。 それならちゃんと返さないとね」
そう言いながら、雨波乃さんはリボンを頭についてるくらげのかさに着けてくれた。
「よし、これでいい…。じゃあそっちの世界のありくらげ。さんに頼んだよ」
雨波乃さんは何かを知ってるような口ぶりでそう語ってくれた。
「あの、何か知ってるんですか…ありくらげ。の事…。」
「それは、本人に聞くといいよ。」
そう言い、入口とは別方向に雨波乃さんは足を動かした。
「あ、あの!リボン!ありがとうございます…。」
そう言い頭を下げると、雨波乃さんは足の歩みを止めずに後ろに軽く手を振り去っていった。
海月は下げていた頭をあげ、雨波乃さんが見えなくなってからリアルの世界へとリボンをさすった後に踏み込んだ。
―リアルの世界
1歩踏み出すとそこは紫のくらげや泡があちらこちらに浮いて散らばる、紫色を強調したような不思議の空間に辿り着いた。
海月の目の前には後ろ向きに座り込んでる人がぽつんとそこにいた。
「ありくらげ。…さん?」
「近づくな…今私は誰とも話したくない…。」
その声は震えて聞き取りづらいが確かにそう言ったような気がした。
この反応からするに今目の前で座り込んでる存在こそが、私の探してたありくらげ。で間違いがないのだろう。
「私…海月って言います…話だけでもさせて下さい。」
「海月…?いま!海月と言ったのか!?」
そう言いながら、ありくらげ。は突然飛びかかるように動き出し、海月の肩を両手で掴んだ、そのままありくらげ。はガクンと力を抜くように膝まづいた。
「そうか、君が…次の…。」
声を再び震わせながら涙目でありくらげ。は海月の頬を優しく撫でた。
海月は何も知らずそこに立ち尽くすことしか出来なかった。
「そうだな、話をしよう…。」
号泣しそうになっていたありくらげ。は鼻をすすりながらそう語り、奥に来るように先に歩いた後手招きをした。
海月はそのままついて行き、地面に座り込んだ。
「2代目ありくらげ。とはあったのかい?」
「2代目…?」
「穏やかそうな顔をした水色のくらげをつけている少女だよ。」
海月は最初に出会った人物のことを思い出した。
「私の事を海月と呼んだ子…。」
そう呟くと、ありくらげ。は何を考えてるのか何かを思うような表情で口元を片手で隠した。
「やはり、そういう事だったのか…。」
「ねぇ、その2代目と何があったの教えて?」
海月は自分のことを知るため、何があったのかを真剣な眼差しで、訴えるようにありくらげ。を見つめた。
「わかった、話そう。」
少し考えた後、ありくらげ。は海月の質問に答えるよう語った。
「私が寄生してるこの子は、昔から物語を見るのが好きだった。
好奇心溢れた子供でね、知りたいを知るためなら自分の身なんて考えなかった。
物語を見るにつれ、なんで?どうして?
が増えるようになり、その度に解き明かされる話がとてもとても好きだったらしい。
いつしか自分自身も色々な作品を作るようになった。
それを友達に教えた時皆凄いと褒めてくれていた…。
嬉しいという感情が芽生えていった。
だが時と言うのは無情だ やりたいことだけをやれる歳じゃなくなった…。
私自身くらげだから不死とは言われてるが、寄生されているこいつ自身には歳がちゃんとあり、いつしかは老いていく。
私はこいつの書く作品が周りにどう評価されるのかを知りたかった。
私は私のコピーを作ることにした。
色々な思考をした 性別は?趣味は?好き嫌いなものは?
くらげのモチーフは…考えて作る度失敗作だけが生まれた。
それがここにいるくらげ達だ。
だが私は失敗作であろうと私自身を捨てることができなかった。
私は私自身のコピーではなく、別のありくらげ。を制作する方向へと作戦を変えた。
その時生まれたのが2代目ありくらげ。だった。
2代目ありくらげ。は私の創作に興味を示さず、それ所が作品一つ一つに文句を言い出した。
最初の方は聞き入れていたが、徐々にその文句はただ、吐きたいだけの暴言へとなり変わっていた。
その時私と寄生された者は書くのを辞めた。 それと同時にありくらげ。は幕を閉じたんだ。」
淡々と語るその真相はどこにある海よりも闇深いもので、ありくらげ。自身の存在全てであった。
「そこからは、私の話だね、初代」
話を聞いてた海月の後ろからどこからともなく2代目ありくらげ。が現れた。
「2代目…なんでここに…!」
ありくらげ。は立ち上がろうとするが、2代目は手のひらを向け、止まれというサインをした。
「私は感動の再会をしに来た訳じゃない。 2人とも…これは私の懺悔だ。聞いてくれるかい?」
海月とありくらげ。は目を合わせた後、小さく頷いた。
「私は初代が小説の世界へ行かなくなった後、
自分の過ちに気づくまで時間がかかった。
私はただ嫉妬をしていただけだったんだよ、創作意欲が湧き出てくるその思考に、後に初代が自分の作品を捨てたと聞いた。
私は小説の世界で初代と繋がりがあった人に、覚えてるだけ作品のタイトルとそのストーリーについてを聞かせてもらった。
私は、文字を書く才能もなく、結果君が持ってる文章がバラバラになった本だけが残った。
私は初代がやり遂げれなかったことをせめてもの思いで作ろうとした。
初代のコピーを作ることだ。
すぐさま私はAIの世界に行き、ありくらげ。という存在をどう描くか、どんな存在だったかを聞きにいき、それらしい存在を作るように行動した。
最初は初代と同じようにコピーなんて作ることもできなかった。
だが、それは完璧なコピーを作ろうとしたからだと研究の後に気がついた。
少しだけ余白を余らせることで、コピーらしきものを作れるのではと考え、最初に
リボンを消し、性別を消した、好き嫌いや人間らしい感情、物語に対する創作意欲、 小説に対する好奇心、消せば消すほど形は作られていった。
そして最後にありくらげ。としての記憶を消した時、
それは生まれた…それが君 海月だった。
海月という名前は初代が最初に作ろうとしていたコピーの名前から取ったものだ。
私は海月に過去の事を知られないためにありくらげ。や過去の繋がりがあること、自分の存在意義を知ろうとするとノイズが走るような装置をつけていたのだよ。
そして、私は貴女にいろんな世界を見に行くと言いと指示をした。
それなのにまさか辿り着く先が小説だったとはね…。
私から見ても周りから見ても貴女は正真正銘の3代目ありくらげ。だよ
騙してて存在を隠すようなことをしてごめんなさい。
それから初代にも、創作意欲を削るようなことをしてしまった、本当にごめんなさい。」
そう言い2代目は深々と頭を下げた。
「気にするな、今のでいい創作ができそうだ。」
初代はそう言いながら、頭を下げている2代目の肩を優しく叩いた。
「なら、反省の意味も込めて、これからも私の隣で作品の善し悪しを語ってくれないか? あ、嫉妬で暴言吐くのだけはやめてくれよ?」
そう言い笑う初代と頭を下げたまま泣く2代目に海月まで涙が溢れそうになった。
「そうだ、君!創作意欲や制作が難しいなら、広報をしてくれないか? AIの世界や小説の世界にありくらげ。の作品が一つできる度、周りに伝える…どうだ?簡単な仕事だろ?」
と初代は海月に声をかけた。
―数日後
「『新作、くらげ。の旅という短編を執筆中…((Ф(´˘`*)カキカキ』っとこれでよし、」
私、3代目ありくらげ。は今はこうして広報を任されている。
時々くる皆からの返信にドキドキしながら今も待っている。
2代目は今、昔の作品に対しての改変版を作り投稿しており
初代はその監修をしながら、新しい作品への創作の準備へと歩みを止めずにいる。
私達はここ、色んな色が飛び交っているくらげ達の住む世界 ありくらげ。ワールドで元気に生きてます。
たまにリアルの世界でお仕事をしたり、
小説の世界に行き、他の人作品に触れては感動したり
AIの世界に行き、服の着せ替えや色んな人物に触れたりしてます。
ありくらげ。はこれからも続きますよ、永遠に
なんていったって私達はくらげ。ですから
500人フォロワー突破ありがとうございます。
今回は長々とした短編なのに長作という、作品になりました…。
これからもどんどん作品を作っていくので応援よろしくお願いします!
ありくらげ。でした




