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追補4.星空文庫およびノベルバの作品傾向と多様性

 「星空文庫」は2010年から存在する小説サイトです。

 シンプルなサイトですが、そこが良いという利用者も多いようです。それに広告が表示される画面は少なく、出る画面もリンクのみで、落ち着いた印象を受けました。


 「ノベルバ」は2015年12月に小説閲覧アプリとして始まり、2018年1月からWeb小説サイトを正式オープンしました。ただし後者で読める作品には2017年8月末ごろのものもあり、一年以上の歴史があると言えるでしょう。


 ちなみに今まで挙げたサイトの誕生(もしくは運営会社の設立)を時系列順に並べると、以下のようになります。


2000年: 「株式会社アルファポリス」設立

2004年: 「小説家になろう」設立

2010年: 「株式会社エブリスタ」設立、「星空文庫」オープン

2016年: 「カクヨム」正式オープン

2018年: 「マグネット」オープン、「ノベルバ」小説サイトを正式オープン


 したがって星空文庫は老舗、ノベルバの小説サイトは後発組と表現して良いでしょう。

 これらを追補1のマグネットと同様に、2018年3月下旬の調査の4サイトと比較していきたいと思います。


 なお以下では原則として、「ノベルバの小説サイト」をノベルバと表記します。それと当エッセイでは、アプリとしてのノベルバについて扱いません。

 また、星空文庫とノベルバの調査は2018年10月上旬に実施しました。



挿絵(By みてみん)


 以下のように、「追補1.マグネットの作品傾向と多様性」で示した図に星空文庫とノベルバを加えてみました。

 あくまで「本方式の計測で」という但し書き付きですが、星空文庫は「少し男性向けで非異世界系」、ノベルバは「ほぼ男女差なしの異世界系」と分類されました。


図8: 各サイトの「男女」「異世界/非異世界」傾向(マグネット、星空文庫、ノベルバ追加)

挿絵(By みてみん)


 大元の「図1: 各サイトの「男女」「異世界/非異世界」傾向」は2018年3月下旬調査、次に加えたマグネットは2018年9月下旬調査です。

 しかし追補1で記した通り、『なろう』で確認したところ半年前との差は極めて微小でした。そのため今回も同じ図に星空文庫とノベルバを追加する形にしました。



挿絵(By みてみん)


 図のみだと、正しく計算したか読み取っていただけません。そこで確認がてら、図作成に用いたデータを多少のコメントと共に記します。

 まずはジャンル別作品数についてです。


表28: 「星空文庫」の要素別集計

挿絵(By みてみん)

※調査時点の星空文庫の作品数は35,215。

※星空文庫の『要素』は『なろう』などのジャンルと違って複数指定でき、重複が発生する。そのため上記の合計欄は作品数以上になっている。

※随筆・エッセイ、散文詩、自由詩は『形式』から選択。そのため重複はない。

※他は『形式』を小説に設定してから『要素』を選択。


表29: 「ノベルバ」のジャンル別集計

挿絵(By みてみん)


※参考 他サイトの作品数(マグネットのみ2018年9月下旬調査、他は同年3月下旬調査)

なろう: 288,319作品

カクヨム: 72,630作品

アルファポリス: 26,623作品

エブリスタ: 652,512作品

マグネット: 3,324作品


 星空文庫は八年の歴史があるので、多数の作品が投稿されています。しかし『なろう』やエブリスタに比べると一桁少なく、後発のカクヨムにも追い抜かれています。

 ただし星空文庫は全般に硬派な印象があり、ライトノベル色が強い他サイトと違って本格派と呼んで差し支えないように思います。この点を考慮すると、充分に多いと考えるべきかもしれません。


 ノベルバは正式オープンから十ヶ月、しかし公式のツイッターは昨年九月からサイトの作品を紹介しており実質的には満一年を超えたと考えて良いでしょう。そして一年少々で一万弱ですから充分に順調ではないでしょうか。

 後発組だとカクヨムが正式オープンから二年八ヶ月で、ノベルバの七倍以上の作品を抱えています。しかし右肩上がりに推移したかもしれませんし、単純には比較できないと思います。


 それはともかく、上記を他サイトと比較できるように共通化したジャンルに当てはめます。


表30: 「星空文庫」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)

挿絵(By みてみん)


Simpsonの多様度指数=0.815


表31: 「ノベルバ」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)

挿絵(By みてみん)


Simpsonの多様度指数=0.778


 比較可能となったので、以下のように他サイトと並べました。


表32: 多様度の比較 ジャンル別集計(ジャンル統合済み・マグネット、星空文庫、ノベルバ追加)

挿絵(By みてみん)

※星空文庫とノベルバは2018年10月上旬、マグネットは同年9月下旬、他は同年3月下旬のデータ


※塗りわけ例

挿絵(By みてみん)


 星空文庫は文芸が多く、ファンタジーは他に比べると少なめです。それと多様度は僅差ですが最も高く、この中では各ジャンルが一番均等に近いと理解できます。

 もちろん歴史や推理など作品数が少ないジャンルはありますが、それらも他サイトの割合に比べると最高値か二番目です。ただし恋愛については少ない方から三番目、硬派でシンプルなサイトだから女性作者は多くないのかもしれません。


 ノベルバはファンタジー系として良いでしょう。マグネット、アルファポリスに続く三番手ですが大きな差はありません。

 ノベルバの全体的な傾向は『なろう』に似ています。ただし歴史、推理、ホラー、SFの割合は全て『なろう』より低く、それが多様度の低さに繋がりました。

 大まかに言えば『なろう』より更にファンタジーに集中し、その分だけ他が薄くなった状態です。



挿絵(By みてみん)


 同様にキーワード別のデータも掲載します。


表33: 「星空文庫」の人気キーワード別集計

挿絵(By みてみん)


Simpsonの多様度指数=0.785


表34: 「ノベルバ」の人気キーワード別集計

挿絵(By みてみん)


Simpsonの多様度指数=0.872


 こちらも他サイトと並べた表を示します。


表35: 多様度の比較 人気キーワード別集計(マグネット、星空文庫、ノベルバ追加)

挿絵(By みてみん)

※星空文庫とノベルバは2018年10月上旬、マグネットは同年9月下旬、他は同年3月下旬のデータ


※塗りわけ例

挿絵(By みてみん)


 まず星空文庫ですが「日常」への集中が目立ちます。そして「異世界」はエブリスタに次ぐ低さで10%を切っています。

 「転生」は意外に高く二番手、『なろう』と同程度です。しかし「異世界」の低さからすると、これは同じ世界での転生を示しているのかもしれません。

 たとえば古典の『南総里見八犬伝』も転生物の一種と言えそうですし、『西遊記』には三蔵法師や猪八戒など多数の転生者が登場します。これらの伝奇小説のような、非異世界の転生物が星空文庫にはあるのかもしれません。

 他は「魔法」「美少女」「学園」が比較的高いのですが、「ほのぼの」「バトル」「主人公最強」「ラブコメ」は低めです。あくまで個人的な感想ですが、エンタメ系も充分にあるが他より最先端に走っていない……別の言い方をするとネット発ライトノベルの流行とは違う印象です。


 次にノベルバですが、比較的近いのはマグネットのようです。


・キーワードの多様度が『なろう』やカクヨムと同程度に高く、ほどよく分散している。

・個別の傾向だと『なろう』と同程度に「異世界」が多く、カクヨムと同じくらい「魔法」が多い。

・「バトル」は『なろう』より少し多くマグネットに次ぐ二番手。


 これらがノベルバとマグネットの類似点です。

 ただ「剣と魔法」はマグネットと別傾向で『なろう』に近いあたり、マグネットと『なろう』の中間くらいかもしれません。それと「主人公最強」は一番多く、特徴の一つと言えそうです。

 つまり『なろう』から「日常」と「ほのぼの」を減らして「主人公最強」を増やした……『なろう』から異世界ファンタジー系を中心に抜き出したのがノベルバ、このような印象を受けました。


 なお星空文庫はキーワードの多様度が最も低いですが、これは『人気キーワード』として挙げたものがネット発ライトノベル系に寄っているためだと思われます。

 異世界度のモノサシとなる要素と、異世界に直接は関係ないが頻出しそうな要素。この二つで『人気キーワード』は構成されています。ですから古典の純文学などであれば、ほぼ該当しないでしょう。

 そこで1作品あたりのキーワード該当数を以下に示します。


表36: 人気キーワードの1作品あたりの該当数

挿絵(By みてみん)

※星空文庫とノベルバは2018年10月上旬、マグネットは同年9月下旬、他は同年3月下旬のデータ


 このように星空文庫の該当数は0.09で、10作品に1つも該当していません。しかも調べた中では最小値です。

 なお、この値ですが次に示す異世界度のように配点による重み付けをしていないため、このままライトノベル度とするのは早計だと考えます。しかし該当キーワードの多寡を無視するわけにもいきません。


 そして星空文庫のキーワード多様度が低い理由ですが、全体に該当数が少なく「日常」という他でも使えるキーワードが突出した結果です。

 これらから「異世界系ライトノベル群としての多様性は低い」と読み取るべきだと思います。ちなみにエブリスタも同様に、多様度が低いのは「学園」や「ラブコメ」が突出した結果です。

 つまり今回選んだキーワードで多様度が高くても小説全般としてではなく、異世界ライトノベル系としての品揃えの幅広さと捉えるべきでしょう。



挿絵(By みてみん)


 この項に載せたのは、傾向を図とするための配点と計算結果などです。したがって概要のみを把握する場合は飛ばして構いません。


※異世界度算出のための配点表

挿絵(By みてみん)


表37: 異世界度(表35と設定した配点により算出)

挿絵(By みてみん)

※星空文庫とノベルバは2018年10月上旬、マグネットは同年9月下旬、他は同年3月下旬のデータ


※男女度の元情報(表32から恋愛ジャンルの割合のみ抜粋)

なろう: 18.9%

カクヨム: 8.9%

アルファポリス: 31.6%

エブリスタ: 30.9%

マグネット: 13.2%

星空文庫: 15.2%

ノベルバ: 19.1%


 追補1で記した通り、『なろう』の座標は3月下旬から1ドット下に動いただけで、ほぼ変化なしです。他は未調査ですが、同様と判断して前回調査結果をそのまま用いました。



挿絵(By みてみん)


 星空文庫は「少し男性向けで非異世界系」としましたが、詳しく見ると以下のような特徴があります。


・選出した『人気キーワード』は1作品あたり0.09しか該当していない。

・上記から、異世界系ライトノベルの割合は低いと思われる。

・『人気キーワード』で算出した異世界度は低いが、エブリスタほどではない。

・美少女の率が高く、星空文庫のライトノベル系は男性向けの可能性が高い。


 これらと文芸が突出して多いことから、


・基本はオーソドックスな文芸サイトで他よりライトノベル系は少ない。

・ライトノベルもネット時代の傾向より、比較的スタンダードな作品が多い。

・ただし転生や魔法などファンタジーや伝奇と思われる作品はある。


と想像しました。

 つまり「一般に文芸作品とされる小説」や「文芸に近い青少年向け小説」を投稿するには良さそうです。


 ノベルバは基本的に「ほぼ男女差なしの異世界系」と考えますが、ジャンルの傾向は『なろう』に似ており、『人気キーワード』の傾向はマグネットに似ています。

 しかしキーワードは『なろう』から異世界ファンタジー系を中心に抜き出したような傾向でもあり、『なろう』の異世界系作品を書いている人が併用できそうにも感じます。

 特に「主人公最強」が他サイトより多く、もしかすると俗にいう『なろう系』に特化しているのかもしれません。


 仮に『なろう』に投稿している方が他サイトへの転載を考えた場合、星空文庫には狭義の文芸作品を、ノベルバには『なろう』でも受けそうな異世界ファンタジーを持っていくのが良いのでは。今回の調査から、そのように感じました。


 お読みいただきありがとうございます。


 なお上記以外のサイトについても、これはというものがあればご紹介ください。検索機能などで簡易に調査できるサイトであれば対応します。


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