25話 変輩
交流会の五合目での試験。カードハント。
ルールはただ相手のカードを見てゲームマスターに告発すること。
一見簡単そうなルールだが、そのカードを見る部分の難易度が高い。
夜天閣員は警戒心も強いし護身術も使える。
そんな相手からカードの情報を入手するのは至難の業だ。
というかどうやって見ればいいんだ。
ルールブックによれば暴力は禁止。
つまり力での強奪は不可能。
そんな都合よくカードを手放しましたって瞬間があるのか?
考えれば考えるほどゲーム性について物申したい部分が露呈してくるんだが。
とりあえず、俺は今部屋で引きこもっている。
なぜかって?言わせるなよ。
強者から逃げるのは弱者の特権だぜ?
というのは半分建前、普通に寝ようと思ってる。
開始から数時間、まだ全然得点の変動は起こっていない。
みんな今日は休んで明日からに備える考えなのだろう。
なら俺もぐっすり眠って脳を元気にしてやるのさ。
あ、そうだ。
さっき夜天閣アプリにメンバーの情報が来た。
メンバーはこの六人らしい
赤チーム
1番 パシナカ
2番 品野夕陽
3番 ハットリ
4番 金堂東透
5番 蓮仏光祈
6番 後山美一
この6人で一応連絡を取り合うことはできるっぽいな。
ちなみにこのアプリで全チームの得点を確認できる。
しかし、紫音たちとは見事に分かれてしまったな。
知らない人ばかりだ。
うまく連携を取れればいいのだけど、俺だけ何もできないなんてことがありそうで怖いな。
コンコン
すると突然、ドアがノックされた。
とっさに飛び退いて構えてしまったが、ビビってるわけではない、断じてない。
俺は恐る恐るドアノブに手をかける。
しかし、ドアは俺が開けるより前に勢いよく開かれた。
「匿って!」
「わあ!」
いきなり入ってきた何かに俺は押し倒された。
白い髪の男だ。
(まずい、カードが狙いか!)
俺はすかさずカードの入った内胸ポケットを守る。
しかし、そのどこかで見たことあるような外見だと思い、その男を観察する。
白い髪、赤いベレー帽、聞いたことのある男にしては高い声。
「ふぅ助かったぁ。」
「後山先輩?」
交流会が始まる前に話した先輩だ。
夜敷のアイアンクローを食らっても飄々としていた奴だ。
変態だ。
「お?覚えててくれたか後輩ちゃん。俺は名前覚えてないんだけどね。」
「品野ですよ……。それで、どうしたんですか?そういえば同じチームでしたよね。」
さっき見た情報を思い出した。
名前を見ただけでは思い出せなかったが、この人の名前は確かにあった。6番だったか?
知らない人ばかりだと思ってたけど、一応知り合いの人がいたってわけだな。
安心……はできないか。
「実はね、俺は初日そうそうゲットしてしまったんだよな。それを可愛い可愛い後輩ちゃんに見せようとここまで逃げ帰ってきたわけよ。」
後山はフフンと笑いながら懐に手を突っ込む。
色々と文にツッコミたいところはあるが、ゲットしたって……もしかして。
「じゃん!」
後山の懐からは一枚のカードが出てきた。
カードの色は青色で、その中央には「5」と書かれていた。
その数字の下では12時間のタイマーがスタートしていた。
他チームのカードだ。
「これ……もしかして。」
「ああ、青チームの5点カードだ。」
「誰のなんです?」
「……まだわからない。」
「へ?」
わからないってどういうことだ?
誰かから盗んできたんじゃないのか?
「まあ慌てるなよ後輩ちゃん。今から俺の激闘のストーリーを聞かせてあげるから。」
後山は俺の返事を待たずに語り始めた。
「まず俺は、女子たちが入浴中の風呂に忍び込んだんだ。」
「終了」
こいつは駄目だ。
もう手遅れだ。
明日にでも警察に連れて行こう。
「待て待て待て!何も覗こうってわけじゃない!」
「……続けてください」
「コホン……俺は一番無防備になる風呂場でカードを探すために忍び込んだんだ。」
「ほぉ。」
「そしてロッカーを探し脱いであった服を漁った。しかしカードは見つからない。
しかし!俺は簡単には引き下がらなかった!そしてついに見つけた!
丸められた布が淡く光っているのを!その中には探し求めた青のカード!」
「はぁ。」
「しかし、持ち主を特定する前に風呂から女子たちが出てきてしまってね。急いで逃げてきたのがここってわけ。」
「なるほど。」
犯罪臭しかしない話ではあったが、一応このゲームに対して真摯に行動してくれていたらしい。
ありがたいと言うか褒め難いというか……。
「しかし、持ち主がわからないとなると告発のしようがありませんね。」
「そう、だからこれから特定する。」
「どうやってです?」
「決まってるじゃないか。」
後山は再び懐をゴソゴソと探る。
そして、一枚の布を取り出した。
「パンツだ。」
「なにしてんすか。」
「ただのパンツじゃないぞ?女子のパンツだ。」
「だから問題なんですよ!」
「ハハ、冗談だよ、カードをくるんでいたパンツだ。つまり、これの持ち主が分かれば、このカードの持ち主も特定できるってことだ。」
「……なるほど、それで、そのパンツには誰の名前が書いてあるんですか?」
「残念ながらこのパンツには名前が書かれていない。管理能力のないことだね。」
ということは、誰かがパンツを探す素振りを見せていたらそいつが持ち主だってことか?
でも確かにそれなら確実な得点変動が起こる。
特定できたら俺達に5点、できなくても青チームがカード紛失でマイナス3点のペナルティが課せられる。
この人、行動はアレだけど意外と頭がいいのか?
すると突然、後山はパンツを自分の顔へと近づけて……
「スウゥゥゥッ!」
思いっきり吸った。
訂正しよう。この人は行動がアレなだけだ。
「うん、この汗臭くて野性味溢れる感じ、鼻の奥がツンと刺激される。飾り気のない無地の白パン。きっと力強くて勇敢な女の子に違いない。
答えは出た。これは……雅のだ!」
そう言った後山の目はキマっていた。
……俺は大切な仲間のためにもこの男を始末しなければならないのかもしれない。
こいつは危なすぎる。
すると、いきなり扉がバンと開かれ、一人の女が入ってくる。
ボディビルダー顔負けのゴツい肉体、俺の胴回りくらいの筋肉質な太もも、デカく低い鼻はフンスと鼻息を荒げている。
「ちょっとあんた!あたいのパンツ盗んだわね!」
「……は?富士川!?」
後山はその言葉を受けてキョトンとする。
どうやら今しがた後山が吸い込んだパンツはこのゴリ……女性のものだったようだ。
「返しな!このド変態が!こんなか弱いレディのパンツを盗むなんて恥を知りなさい!」
「お前のどこがか弱いんだ!くそぅ!俺の期待を返せ!あう!」
後山は思いっきりビンタされた。
赤くなった頬をさすりながら泣いている。
なんて情けないんだ。
「フン!」
そして富士川はパンツだけを持って返っていった。
カードを残して。
「……とりあえず、5点は獲得しましたね。大手柄じゃないですか。」
「ううぅぅ……雅ぃ……。あれって暴力行為でしょぉ……。」
「自業自得なんで受け入れてください。」
とりあえず、この人のおかげ?で5点を確保することができた。
起こった事件に目を伏せるとこの人は優秀だ。
初日の5点はかなり大きい。
この調子でどんどんいこう。
あと、この人を監視しておこう。
現時点所持ポイント
赤5点 青0点 黄0点 緑0点 白0点




