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変身、そして

「あ~っ! スッキリしたぁ……見た、あの顔?」

「いやぁ、緊張したよ……というか、みんな僕を見て凍り付いてたね。本当に大丈夫かな……なんだか恥ずかしい」

「あ、こら。猫背はダメだってば」

「う、はい」


 ダンスパーティー会場の隅で、エリーゼとグレイハルトはシャンパンを飲んでいた。

 いい雰囲気、さらに近寄りがたい雰囲気を出すことで、人が近づいてこない。

 王太子と姉のルルシェに挨拶をしてから、隅っこで話をしていた。


「姉上も、あんな驚かなくても……本当に変じゃないよね?」

「だから!あなた、自分の容姿に自信持ちなさいって。誰がどう見ても、カッコよすぎて近寄りがたいんだから……」


 エリーゼの本音だ。

 磨けば光る原石。そう思い、グレイハルトを徹底的に磨いたのだが……磨きすぎたつもりはないのに、グレイハルトはあまりにも眩く輝いてしまった。

 髪を切り、礼儀作法の復習、綺麗な服を着せ、猫背を止めさせただけで、このありさまだ。逆にエリーゼが見劣りしないよう、自分を必死で磨いたほどだ。

 驚いたのは、猫背を止めさせると、リツハルトよりも身長が高かった。さらにスタイル抜群……才貌両全というが、やりすぎだ。

 

「あー、早く終わらないかな」


 当の本人は、無自覚だ。

 自身がどれほど美しいのかを理解していない。今も、シャンパングラスに口を付けてゆっくり飲んでいるが……見惚れてしまうほど美しい。こちらをチラチラ見ていた令嬢が顔を真っ赤にしていた。


「で、復讐はおしまい?」

「ええ。あなたと私が仲睦まじいだけで十分。あのプリメラがどんな噂を流そうと関係ないわ」

「そんなものかい?」

「ええ。ま、しばらく女子はあなたの話題で持ちきりでしょうね。それこそ、悪評なんて問題にならないほどに」

「……よくわからないなぁ」


 グレイハルトはシャンパンを飲む。

 ノンアルコールなので酔わない。むしろ甘くておいしかった。

 エリーゼは、グレイハルトに寄りそう。


「な、なに?」

「本当に、よくやったわね。グレイハルト」

「え……?」

「あなたのおかげでスッキリしたわ。見て、誰もリツハルトとプリメラのところに行かない……令嬢たち、みんなあなたに釘付け」

「う……それは嫌だなぁ」

「大丈夫。私がいるしね」

「頼りにしてますよ……っと。ちょっとズレたかも」

「あらら、大丈夫? 見せて」

「あ、ああ」


 エリーゼは、グレイハルトの顔を掴んで目を覗き込む……まるでキスをねだる恋人のような姿に、会場内の令嬢たちは興奮していた。

 だが、実際は違う。


「これ、本当に大丈夫なのかい?」

「ええ。リトハルド公爵家とヘルマン侯爵家の共同開発の一つ、『コンタクトレンズ』……眼鏡の代わりに、目に直接レンズを入れる新しい技術の一つよ」

「試作品だっけ……よく手に入ったね」

「私のお父様が、あなたのお父様にかけあってくれたのよ」


 これが、ヘルマン侯爵家の新技術。

 極薄レンズという、ガラスを極限まで伸ばし薄くしたものだ。

 次世代のガラスとして、新しい産業になろうとしている。

 コンタクトレンズは、その試作品の一つ。これにより、グレイハルトはべっ甲縁眼鏡を卒業……最初は、目にレンズを入れるのが恐くてたまらないようだったが、今は問題ない。

 むしろ、喜んでいた。


「あの眼鏡、実はすごく重かったんだよね……コンタクトレンズ、これは偉大な発明だよ。ヘルマン侯爵家は本当にすごいよ」

「プリメラの家を褒めるのは癪だけどね」

「違いない」


 二人は顔を近づけたまま、クスっと笑った。


 ◇◇◇◇◇◇


 その後。

 リトハルド公爵家の三男グレイハルトが、実はものすごくイケメンだったと、学園中に広まった。

 だが、グレイハルトの傍には常にエリーゼが寄り添っていたという。

 眼鏡をやめ、前髪を切ったグレイハルトは確かにイケメン。一気に話題をかっさらったグレイハルトは、学園で知らぬ者はいない存在となった。

 リツハルトとプリメラも確かに美男美女なのだが……グレイハルトのインパクトがすさまじかったせいか、いつの間にかグレイハルトとエリーゼの影に隠れてしまう。


 さらにさらに、エリーゼがずっと書いていた恋愛小説が書籍化。

 悪役令嬢が婚約者を寝取り、追放された聖女が、常に傍にいた騎士を新しく婚約者に迎えるという内容で大ヒット。なぜか悪役令嬢がプリメラと勘違いされ、『プリメラは悪役令嬢!』みたいな扱いになっていたという。

 リツハルトとプリメラが学園を卒業し結婚しても、悪役令嬢プリメラの伝説は残っているのだとか。

 

 グレイハルトは卒業後、言っていた通り平民となった。

 現在、使用人テスラとメイドのエリ、そしてグレイハルトとエリーゼの四人で、城下町外れの屋敷で暮らしている。

 グレイハルトは有名小説家として、エリーゼも恋愛小説作家として、二人で仲良く暮らしているとか。

 たまに、仲良くデートをしている姿が目撃されるとか。


「ね、いいネタを思いついたの」

「お、なんだい?」

「ふふ……パッとしない公爵家の三男が、婚約破棄された令嬢と恋に落ちるって話」

「え、そ、それって」

「ふふふ……面白そうでしょ?」


 グレイハルト、エリーゼの物語は、これからも続く。

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お読みいただき有難うございます!
最強種族『竜人』の落ちこぼれ少年~最強の力に覚醒し無双する~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三男ってあるけど、次男が出てこない。 次男が既に死んでるなら、予備として三男も教育受けると思うのだけど? [一言] 美形ってだけで、次期平民と、次期公爵だし、 噂を操れば、こういう結末…
[一言] 面白かったです!最後までまっすぐで強くかっこいいエリーゼ素敵でした
[一言] スッキリ爽快。 平民にならなくてもどちらかの家が使ってない爵位を持ってそうな気もするのですが。でもグレイハルトに貴族は窮屈かもしれませんね。 テスラが途中から出てきてないのですが、いますか?…
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