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森の奥の白い家の魔女  作者: プーマン
2/3

【承】森の奥にはナニがある?

この街には邪悪な魔女がいる。

残酷で醜悪なソレのせいで、僕の両親は死んだ。


3人で夕食を食べた帰り、鍵を開けて家に入った途端、潜んでいた『誰か』に刺し殺された。

家の鍵は、僕ら家族か伯父夫婦しか持っていなかったので、大人たちは魔女の仕業だと言う。


そうか。

あの時、一瞬見えた『誰か』の顔が伯父さんそっくりだったのは、魔女の魔法のせいだったんだね。


僕を引き取ってくれた優しい叔父夫婦は、死んだ両親の遺産で沢山あった借金を返済した。

それから僕に『魔女の呪いで家に置いてあげられない』と言って、少しのお金と古くて買手のつかなかった小屋をくれたっきり、疎遠になった。


たまに顔を合わせると、バツの悪そうな顔をして、そそくさと僕から離れていく。

魔女のせいなのだから何も気にせず、もっとお話をして欲しいなと思ってしまう。




そうして今日も1人、小屋の隙間風に震えていると、とてもいい考えが浮かんできた。


僕には何もない。誰もいない。失うものはない。



ーーそうだ、僕が魔女を殺そう。



居場所は知っている、森の奥の白い家だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


深夜。


魔女の森に接するこの街の外れには、街灯一つなく、手に持った松明だけが唯一の光源だ。

この松明は、僕を魔女の家まで導く灯火であるとともに、魔女を殺すための却火。


魔女を殺す方法の一つとして、身動きを封じて炎で焼き続けることも有効だと授業で言っていた。


首から下げたこの瓶には、全財産をはたいて買った燃料が入っている。


簡単だ。魔女を見つけて抱きつき、松明を瓶の中に入れれば火は僕ごと燃え上がるだろう。

あとは意識の続く限り、魔女を離さなければいいだけだ。



一歩、森の中に踏み出してみる。

入るだけで呪われるというこの森は、雑草が伸び放題で、松明を持っていても足下が覚束ない。

虫の音や動物の鳴き声も聞こえない静寂に包まれた空間。


でも、それだけだった。


近寄るだけで呪われると皆が言っていたけれど、中に入ってもなにも変わらない。

もしかすると、すでに呪われてしまっているのかも知れないけど。


あと少し、魔女の白い家に辿り着くまで生きていれば問題はないんだ。



そうして、一歩、二歩と、どんどん森の奥に進んでいく。



「ーーこんなに動いたの、いつぶりだっけ」


おかしな話だけど、久しぶりに生きている実感がある気がする。


1人になって以来、初めて目標をもって動いているからだろうか。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


頭の中で何度も殺し方のシュミレートをしながら先に進んでいくと、急に開けた場所に出た。


《森の奥の白い家》


月明かりに照らされたその家を見て、ようやく目的地に着いたのだと分かった。

思っていたよりもずっと綺麗なその2階建ての家は、明かりも落とされていて、近寄ってしばらく聞き耳を立ててみたけど、魔女は眠っているのか何の物音もしない。


試しに玄関の扉に手をかけると、ギイと小さな音を立てて開いた。


ーーよし、やろう。


ここに至っても、僕の決心が鈍る事はなかった。

手に持った松明をギュッと握りしめて、靴のまま静かに家の中に入っていく。



魔女の家の中は拍子抜けするほど普通だった。


玄関を入ってすぐに居間が広がっており、その奥にキッチンという造り。

居間には観葉植物やテーブル、小物を並べた棚が置かれていて、見かけは魔女然としていない。


そして、肝心の魔女の姿はなかった。


ーー2階かな


「」





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