罰と出会い
愛していた。
離れていてもずっとずっと
愛していた。
愛していた貴方にそんなことをさせてしまった。
ごめんなさい。
謝っても
謝っても
足りない
ごめんなさい…っ
それからマリアは考え付く全ての苦痛を受けた。
自信を切り付け、痛めつけ。
娼婦の真似事をし、肉体と精神を傷つけ。
やがて食うこともしなくなり、路上に倒れ伏した。
ごめんなさい…
何度目か分からない謝罪の涙が零れ落ちる。
「何を寝ている」
不意にした人の声は何の感情も込められていなかった。邪魔だと蹴られるだろうか。みぐるみをはがされるだろうか。そんなことが頭をよぎるが動ける気は全くしなかった。だが、抵抗も何も全てがどうでもいい今の現状何でも良かった。
「陛下!おやめください!!病が移りますよ!!」
「病が移って困るほど専属医は無能か?」
「そういう話ではありません!」
黒髪の青年が静かに歩み寄ってくるのが分かった。その後ろで眼鏡の青年がオロオロと動揺している。黒髪の青年はそっとマリアの体を抱き上げた。
「ほら。水だ」
少しずつ水が口の中へと流し込まれる。体が本能的にその水を飲み込んだ。水は体に染み渡るように広がった。
「お前名は?」
黒髪の青年はマリアに水を飲ませながら問いかける。マリアはその水を嚥下して答えた。
「マリ…ア…」
「マリアか。マリア。俺の城で働け。拒否権は存在しない。お前達のような人間に人権はないからな。拒否したいならば俺の城で働いて自分の権利を掴みとれ」
ボーッと何も分からないような状態で告げられたのだが、それでもああ、この青年はおかしいのだなというのが分かった。眼鏡の青年が何かわめいているのが聞こえる。これから先どうなるのかという不安より、睡眠という本能的欲求の方が勝った。
次に目覚めた時視界に入ったのは豪華な天蓋だった。そこから仕事を任され、訳も分からぬままこなしていく日々だった――。
「これが…私の全てでございます」
そう締めくくったマリアの指先にライドは口付けをした。
「ありがとうございます」
「こんな…つまらない人間のせいで貴方の人生を狂わせてしまったのかと思うと申し訳なく…「では私もつまらない人間ですね」
ライドの言葉を否定しようとしたマリアだったが、それよりも先にライドが口を開く。
「私が心から素敵だと恋い慕う貴方を卑下するということは、そんな人間を思う私を否定しているのと同じですよ」
そう言って微笑む彼は引く気配がなかった。言葉を捜すマリアにライドは代わりに言葉を紡ぐ。
「今度はそんな私の30年の思いを告げましょう」
ライドはマリアと出会った時のことから語り始めた。