サマーレ会戦~防衛戦の夜明け~
なんとか敵の攻撃を退いた突撃砲兵隊と南方軍であったが先の攻撃で消耗が激しく戦線維持が困難なものとなっていた。
「援軍は・・・・まだか・・・」
戦闘開始が明け方だったがもう当りは暗くなり始めていた。
前線救護所は戦場さながら負傷兵であふれかえっている。救護所では軽傷・重症・処置不能と分けられ、重症でもすぐに命に関わる傷出なければ軽傷者の治療を重視し、それ以外の重症者は後送し病院に移動させていた。医師やそれを補助する者が必然的に足りなくなって医療品も不足し始めたのだった。この時突撃砲兵隊の残りが南方軍に操縦を教えた輸送車が街の病院に負傷兵を輸送し帰りに補給物資を持って前線に戻ることの繰り返しをしていた。
「相手の出血の方がでかいと思うけどこちらも危ない出血・・・どうしようか」
「耐えるしかないよミリアちゃん・・・それより休憩できる時に休憩しないと」
「そうだね・・・機銃に弾再分配して休憩・・・」
突撃砲兵隊は最低の人員を残し戦える者は休憩に入る。その間塹壕は延長を続け今では全長5kmとなった。
夜が深まり異様に静かな時を刻み、月明りに照らされる塹壕前の死体は異常だった。そんな中ヤークは匍匐しながら死体の山を盾に敵塹壕を偵察する。
塹壕中央部と西側は兵士が大量に待機中、東側では随時戦力補強、その後方では輸送車が稼働してるようだった。ヤークは特に後方に注目して偵察をする。静かな夜にうっすら聞こえる馬の声、塹壕の奥の森に多数の陰が視認できていた。ヤークはばれないように慎重に戻りミリアに報告。
「偵察ありがとう・・・塹壕に騎兵突撃の可能性か夜が明けたら攻撃されそう・突撃砲兵隊と南方軍の指揮官に連絡を」
ヤークが連絡に奔走している時増援が朝に来るという情報がもたらされた。
「あと半日・・・あと半日持ちこたえたら援軍が来る」
「ミリアちゃん今度こそ攻撃されたら火力不足でどうしようにも・・・」
「攻撃させないために攻撃するしか・・・榴弾の残りを自走砲に均等分配・・あと先ほど届いた機銃を南方軍に」
新しい30口径機銃がヴィーレ市から鉄道で12丁と弾薬10万ほど送られきたのだ。
まだ陽が上るような時間ではなく暗いが、作業が始まった。南方軍に今の機銃の配置の間に入ってもらい新たに機銃を据え付け防御力を上げる。
「砲撃用意!!」
まだ暗い中、突撃砲兵隊の号令と共に南方軍も戦闘配置についていた。機銃は全て南方軍の兵士に操作させ、突撃砲兵隊は自走砲の操作に専念する。
「目標!敵塹壕後方の森一帯!一斉射後各個に弾が無くなるまで全力射!」
きりきりと歯車が回る音が響く
「「砲撃用意よし!」」
「てーーーーーぃ!」
暗闇の中辺りは一瞬昼間のように明るくなる。
「ん?砲撃だ!待避待避!!」
「また砲撃か勘弁!」「ひい!」
神聖プロシアの兵士は突然の砲撃で混乱していた。歩兵が塹壕に隠れた時、後方の騎兵では阿鼻叫喚となっていた。
馬がしぶきになったり、空高く吹っ飛んだり、運悪くその下敷きになった兵士もいた。
突撃砲兵隊の自走榴弾砲は、装填手二人のため毎分20発の速度で速射をしている。戦場は榴弾砲の発砲音と着弾の爆発音で一気に騒がしく、10分ほど過ぎると105mm砲弾の備蓄量は半分になっていた。装填手がバテ始めどんどんと装填速度が遅くなる。それでも、30分ほど過ぎると全弾撃ち尽くしていた。そして、自走砲が沈黙する。
「すげぇ・・・・地面が今まで以上にぼこぼこだ・・」
「ここは・・・地球なのか?」
南方軍の兵士は驚いていた。
「う・・・後ろの騎兵は・・・?!」
森に居た騎兵は、無残にも森ごと耕されそこら中に肉片が飛び散っていた。そう、弾幕射撃によりほぼ全滅したのである。
「敵が突撃してくる可能性が高い!」
自走砲から突撃砲兵隊が降り塹壕で射撃姿勢を取る。しかし、南方軍と突撃砲兵隊は、臨戦態勢のまま1時間ほど何も無いまま待機の状態になっていた。
辺りは再び静まりかえって虫の音もしない。ただただ兵士の息遣いが聞こえるだけである。
両軍とも動きが無いまま少しずつ辺りは明るくなっていく。




