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とある言葉の二重意味《ダブルミーニング》

「説明してください!」

バンッと蹴り開け……る勢いで扉を開ける。(※設備は大事に使いましょう)


「あ、スズ姉おはよーっ。どしたのー?そんなカリカリして」

「ふぉっふぉっふぉ。若い者は元気じゃのう」

「おー。スズネは朝から元気だなー」

「人間族の力位では壊れないように作ってますが、扉壊さないでくださいね」

おぉー。伊予ちゃんだけじゃなくて三公組も勢ぞろいだー。

……じゃないっ!昨日の式典、そして『導き手』の意味ですっ!


「何がどうなって、私がノーヴの長なんかになってるんですかっ!」

昨日、あの式典の後

お祭り騒ぎの飲み会になって、伊予ちゃんが脱ぎ始め……着やせ……隠れ巨乳……うっ……頭が。

……それは置いておくとして。

お酌して回りつつ(一応主賓?ですし)話を聞いてみました。

何でも、

『だいたい300エイアぶりの国主』とか、

『国主を継ぐカムイはヤマモトさん以来久しぶり』とか、

何とも今まで聞いてた『カムイ』と『導き手』像から離れた話を聞きました。

みんなお酒が入ると本当の事漏らしてくれるよね。

前の戦争の事を何度も語ってくれた人も居ましたが……。(どうやら山本提督が導き手の頃に世界規模の戦争が有ったとか)

「今まで聞いて来た事と全く違うじゃないですか。ウィルヘムさんから聞いた追加説明とも違うし、ちゃんと説明してください」


「あー……ウィルヘム君って、ヤマモトさんの時に居なかったって聞くし、知らなかったのかな」


「ウィルヘムがノーヴに来たのはついこの間、30エイア程前じゃよ」

30エイアがついこの間とは、流石長生きな人は違いますねぇ。

……って、そういう事じゃないですっ!

それじゃあ、そもそも説明の人選ミスじゃないですか。

ウィルヘムさんも『正式に導き手に任命する』とか言ってましたが、その意味を分かってない人じゃ説明できないですよ。

「元々、ワシ等もスズネに国主を継がせるつもりも無かったのじゃ。急な決定じゃからウィルヘムに文句を言うのも筋ではあるまい」


「そうは言ってもこうなった以上、スズネさんにはノーヴの方針とこの世界の『カムイ』の扱いを説明しないといけませんね」

ふむ。では天龍さんに説明してもらいましょうか。

納得いかなかったらノーヴ見捨てて放浪の旅に出ますからね!

「そもそも、この200エイアくらいは国主を継ぐ『導き手』になる『カムイ』も居ませんでしたので。私達も久しぶりなのですよ。伊予や他国では、そもそも覚えている人も居ないでしょう」


国主を継ぐ『導き手』、と言っても……そもそも『導き手』って、国に属する『カムイ』なのですよね。

私より前の人達って、そんなに放浪癖の有る人達ばかりだったのかな。

「と、言うとどういう事でしょうか。『導き手』とは、特定の国家に所属し重用されている『カムイ』の総称ですよね?」


「あぁ、そりゃ広い意味の方だな」


「私から説明します。皆さん、少し口を挟まずに」

ん?広い意味も狭い意味も有るのですか?

名ばかり所属とか、実際は冒険者してます。とかそういう人達の事なのかな。

「まず、スズネさんの持つ知識は少しばかりこの世界には重要過ぎます」


そこの点はウィルヘムさんからも説明受けた気がする。

私達の世界(時代)の人が考え付く程度の事なら、既にこの世界で別の形で実現している。

魔法や種族の力は凄い訳で、私達の世界で何とか実現出来た事、実現困難な事が、この世界ではサクっと出来ていたりする。

空間転移なんてその主たるものだし、自由に空を飛べる竜族(竜人族)の人達の存在だって、私達の世界の常識を覆しちゃいますよね。

「私の持つ知識なんて、既に陳腐化した『別のやり方』でしかないです。そりゃ、私の大先輩達は凄い発想を遺してきたでしょうけど、私にそこまでの能力は有りません」


「そんな事は有りません。まず、今までスズネさんがしてきた事で三つほど重要な技術躍進が有ります」

三つ……?

そりゃ、銃の改良はちょっとやり過ぎちゃった気もするけど、魔法の方が実用性が有るんだし……。



「一つ目、通信魔法の改良です。『れぇだぁ』と言いましたか、スズネさんの世界に有る技術を基に提案して頂いた技術です」

あぁ、通信魔法の逆探知で方角と距離を測定する魔法ですね。

ついさっき実用試験……と、言うかぶっつけ本番で何とか使える感じだった物ですが。

「この技術は今まで、こちらの世界に概念すら存在しなかった技術です。スズネさんならお分かりの通り、軍事的にも民生的にも発展性が有ります」

概念くらいは有ると思ったんだけど……意外と影響が有る知識だったんだ。

GPSだとか、無線誘導弾だとか、その辺の知識じゃないから大丈夫かと思ってたよ……。


「ウィルヘムさんがすぐに組み上げてくれた事実も有りますし、研究されていた技術では無いのですか?」

いくら同郷人のウィルヘムさんで知っている技術でも、無から作り上げるのは難しいはず。

元々、『こんな使い方出来たら良いな』で研究されていた技術(知識)なら、私に全責任を押しつけられるのはおかしいです。


「ウィルヘムだってスズネさんと同じ異世界人じゃないですか。概念を知っているからこそ実現できる技術です」

うわぁ。ウィルヘムさん、異世界人だってバレてますよ。

天龍さんも『知らないと思ってました?』みたいな目で見てますけど、そんなバレてるとは思ってませんでしたよ。

「二つ目に行きますが、運用概念としての『空母機動艦隊』と言う概念です」


ちょ、それは絶対に山本提督が言ってるでしょ!

「それこそ、私よりも前に来た『カムイ』から聞いていると思います。前の『導き手』の山本提督であれば提案したはずです」

山本提督って言ったら、旧海軍の空母部隊を熱烈に推進した人ですよ!


「スズネさんはヤマモトを知っているのですか?……確かに、似ている指摘はされましたが、船を基盤に混成部隊の運用までは案に有りませんでした。ヤマモトから聞いていた知識は、空から偵察をすれば有用である。と言う程度です」

こんな所で出し惜しみするなーっ!

もしかして、山本提督って実は航空戦の時代を悔いてたんですか!?

自分で艦上航空戦隊発足させときながら、こっちの世界に来たら陸上航空隊しか作らないとか、どういう事ですか!

「……もしかして、ヤマモトはこの『空母機動艦隊』の知識を持っていたのですか?」


「そもそも、私の世界……私の国で最初に航空部隊が重要であると気付いた一人です。また、海軍将官だった人です」

そうなると……私の世界の人が『導き手』で居ても、その人のやった事って参考にしかならないって事なの?

『その人が生み出した知識』が一般化している。と考えちゃダメなのかな。

うぅ。どこの世界でも異世界人って大変……。


「ま、まぁ、三つ目です。これは直接的に重要な知識とは言えませんが、銃と言う武具の改良をしたと聞きました」

う、うん。それは最初に言われる気がしてた。

「今の所はゲール工房で情報を止めてます。しかし、スズネさんが伝えた『ライフリング』の技術により、今まで実用的は無かった『銃』が急激な変化をする危険性が出てきました」

でも……魔法の方が便利だし、そもそもこの世界では有用じゃないでしょ。

ヴィル君なんて『避けれる』って言ってたし。

「詳しい理屈は分かりませんが、命中精度の改良と聞いています。ここから推測になりますが……スズネさん、それ以上の知識を持っていますよね?」

ぅ……オートマチック拳銃の開発とか考えてたとは言えないっ。

わ、私が使うだけだしっ!

「いくらノーヴでは能力不足な武具とはいえ、他国では主力になりつつある武具ですからね。改良できる知識を持っているならば、最優先で狙われる知識です」

確かに、キーリのエリート(らしい)なワマイ君達も持ってたしね。

魔法や力が弱い人達には便利なのか。特に他国勢なんかには。

言われてみれば、私の世界でも銃器が発達した事で『弱者』が簡単に人を殺傷できるようになった。って言う問題も聞いた事が有るよね。


「その件については……ごめんなさいとしか。ヴィル君と改良した後で、『この技術って良かったのかな?』と思いましたし」

変に高性能化(魔法で撃ち出すので音が静かなんです)しているおかげで、使い物になるレベルになったら危ないよね。と思いました。

狙撃とか出来るようになったら……と思うと、今更ながら『大変なことしたなぁ』と思います。


「と、スズネさんがこの世界に来てから一月と経っていないのに複数の偉業を成し遂げています。ここ250エイア程の間で、このような『カムイ』が現れた事は有りません」


「その事に関してはワシ等も悪いんじゃがのう。嬢ちゃんは異世界人だと言うのに、この世界に順応するのが早かったからと言って仕事を任せてしまった事はワシ等の落ち度じゃ」

ま、まぁ……5回も異世界に飛ばされてれば慣れますよ。

とは言っても、流石に異世界に来た翌日から仕事をするような人は居ないか。


「ところで、何で250エイアの間なのですか?以前に聞いた『導き手』と、私の今の扱いが異なる事についても教えてほしいのですが」

ずっと前は私みたいに、すぐ順応して色々開発する人が多かったのかな。

……確かに、時代が昔だったら何を言っても『新知識』になりそうだけど。


「まず一つ目の疑問ですが、我が国の歴史を振り返ってみると分かると思います。さて、歴史の御勉強ですが……伊予、ヤマモトがノーヴの『導き手』になったのは何エイア前か分かりますね」

はいっ。知りませんっ!

うん……図書室とか言って国史見ておくんだった。


「え、あっ、はいっ、えっ?」

寝ている所を当てられた生徒みたいな反応をしてくれる伊予ちゃん。

「えーっと……ずっと前?」


「公務も大事ですが勉学も大事ですよ。二代目のノーヴ国主の即位は皇暦321アウア、今から241アウア前です。伊予は皇暦表の書き取りをやり直しなさい」

皇暦って年号なのかな。そう言えば私、この世界の年号も良く知らないや。

「スズネさんは知らないと思いますので説明します。初代国主ノヴナガの即位及びノーヴの建国を皇暦1アウアとして、今は皇暦562アウアです。他国にもそれぞれに教暦や帝国暦等の暦が有ります」

日本で言えば皇紀って感じなのかな。共通の年号が無いと他国とのやりとりで困りそうだけど……。

それにしても、山本提督ってこっちの世界だと241アウア前の人になるんだ。


……私の前の『導き手』って言う事は、ノーヴは241アウア間ずっと『導き手』不在だったって事に?

「だいぶ間が空いている気がしますが、その間に『カムイ』がノーヴに来なかった。という事でしょうか」


「良い所に気付きましたね。他国から見ても我が国は『カムイ』保有率が高く、ヤマモトの後にも数百人の『カムイ』が所属していました。スズネさんも御存じの通り、『契約者』ですがウィルヘムもその一人です」

でも『導き手』じゃない。ってことに?

ウィルヘムさんが言っていたみたいに、広い意味での『導き手』でしかなかった。という事なのかな。

「今までも『カムイ』が『導き手』に就いた事は多いですが、あくまで一公務官としての立場で問題は有りませんでした。これが私達が最初に言っていた『導き手』です」

国に属する『カムイ』という意味での『導き手』ね。

「言い方を変えれば、建国の主ノヴナガや救国の主ヤマモトのように、国主として国が保護する必要が無かったのです。国益から考えればノーヴに留まって欲しいですが、他国に移っても異世界知識の恩恵は受けれますからね」

共有できる程度の情報しか持っていないなら、別に国として保護する必要もない。という事ですか。

ウィルヘムさんも言っていた通り、『カムイ』だから『導き手』ではない。という意味もそこですかね。


「つまり、私は色々やり過ぎて居ることからノーヴも国として保護……いえ、監視する事にした。という事ですか?」

国として保護する。と言えば聞こえは良いけど、つまりは首輪を付けて監視下に置く。という意味だよね。

私の世界で言えば、国の研究所に所属する研究者は……って言う感じ。

自由にしておくと何をするか分からないし、万が一でも犯罪組織や好戦的な国の手に渡った場合には危険な存在になる。

私はこの世界でそういう扱いを受けている。と言う事なんだろうね。


「監視とは人聞きが悪いですね。私達としてはスズネさんの知識を独占したいと言う訳ではなく、心無い組織や国からスズネさんを護るため、と言う考えですよ」


「気付いてね―かもだけど、もう何人かスズネを狙った工作員捕まえてっからな。ヴィルゲールとリュミエルを付けといて良かったぜ」

あー……もしかして、途中で感じた視線ってそういう。

リュミちゃんが夜遊び?してたのも、こっそり処理してくれてたのかな。


「ホントなら、ちゃんとスズ姉に説明してからのつもりだったんだよ。でも……予想以上に外の動きが早くて、このままだとスズ姉が危ないと思ったから、皆にお願いして急いで式典してもらったの」

急に決まったのは伊予ちゃんのせいだったのね。

でも状況が状況だったから、伊予ちゃんのおかげで助かった。とも言えるかな。


「大体分かりました。でも……最初の自己紹介でした通り、私は政治の事とか国の事とか分からないので、国主なんて受けれません」

国の長だと言われても、そんな事したことも無いしそんな知識も無いから出来ません。


「そもそも『導き手』たる『カムイ』は立場としては国の最高位です。とは言いましても、実務上の長としての職務は我々が受け持ちますし、スズネさんも今まで通りの仕事で構いません」


「ざっくりと言っちゃえば、スズ姉はノーヴで一番大事な人って事だよ。普段は私や三公組が一番大事ってことになるんだけど、今はスズ姉が一番だよって宣言しただけなの」

なんとなく状況を把握しました。

実権は無いけど最重要人物、つまり天皇陛下みたいな立場になるって事だよね。

伊予ちゃんが総理大臣、三公組が各大臣(天龍さんは官房長官かな?)って考えると分かりやすいのかな。

「とは言っても、うちの国だけの考え方だからね。他国の一般的な『導き手』と、うちの国独特な『国主を継ぐ導き手』の意味の違いと思ってくれて良いよ」

あぁ、そういう事なんだ。……と、言うかそれを先に言って欲しい!

最初に説明してもらってウィルヘムさんに聞いた事は、一般的な『導き手』って事なんだ。


「伊予ちゃんの説明でしっくりきました。同じ『導き手』に聞こえたので、『騙された!』と思ってましたが違うのですね」

もしかしたら、私が同じ『導き手』に聞こえてるだけで、言葉や単語が違うのかもしれないよね。

魔法覚える時もそういうこと有ったよね。万能翻訳魔法か何か知らないけど、これはちょっと困るなぁ。


「すまんが、同じ言葉で『導き手』じゃ。他国に概念が伝わって意味が変わっただけなんじゃよ」

あら、同じ言葉でしたか。

と、言うかそうなると『導き手』と言う言い方の発端はノーヴなのかな。他国の意味が違うとなると。

「同様に『賢人』の意味も元と異なっていて、一般的な意味は『国主待遇の導き手』じゃ。『十賢人』とは言うが、今の世では10人も居ないがのう」

他の人達は一般的な『導き手』でしかない。ってことだね。


「そうですね。スズネさんを『賢人』として扱う事を宣言しなければならないので、『賢人会議』を招集する必要が有りますか」

うぅ……なんかまた大変な場所に引っ張り出されそうな気がする。

今から胃が痛くなりそう。


「それじゃあ準備しなきゃね。スズ姉っ!一緒に服作りに行こうよっ!」

買い物っ!?行く行く!

……はっ。つい流される所だったっ。

と、言うか伊予ちゃん。机の上の書類だけでも終わらせてからにしなさい。

「シューメちゃんのお店に新作入ったんだよ。アイナさんのお店もイケてるネックレス入荷してたしっ!スズ姉は綺麗だから絶対似合うよっ」

いつの間にチェックして……あぁ、いつも仕事サボって遊びに行ってたっけ。


「伊予、今日こそは未決書類終わらせてからです。いつもそうやって遊びに行こうとして」

ぉぉぅ。天龍さんが龍どころか般若モードだっ。

玄武さん、『ワシ知らね』な顔してるけどあなたもですよ。


「うー……せっかくスズ姉とお買い物なのに。天龍のばかぁ!」


「わ、私も手伝うから……終わらせてからね?」



涙目の伊予ちゃんを見て、ついうっかり口を滑らせた結果……徹夜でした。

何で先月の書類が出てくるかなぁ……。

まぁ、慣れてるから良いんですがっ!

元の世界の上司は待ってても手伝っても終わらないから、口頭で決裁もらって私が判子押してたし。

同音異義語って怖いですよね。

「体調が悪い」って言ったら、「隊長が悪い」って思われたことが有ります。

悪いのは隊長じゃなくて室長だtt……げふん。


まぁ、『導き手』って同音異義語じゃなくて意味が国で違っただけですが。

それもそれで困るけどね。

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