正式着任
<<本部、こちらズイホウ。不審船を発見しました>>
<<了解しました。誘導通信機を投下して上空から監視を続けてください>>
<<魔道具投下。不審船、移動を開始していますが監視続行中です>>
通信用魔道具(水上用カスタム版)の通信を受信。
方角と距離を特定して、地図に不審船マーカーをセットする。
ズイホウちゃんの通信魔法も探知して、同じ場所にマーカーをセット。
<<本部よりズイホウ、受信感度良好、監視と報告を続行するように>>
ズイホウちゃんからの通信魔法に意識を向けつつ、地図を確認し最寄りの船に行動指示を出す。
<<本部よりイナ、方位130に転進し現場へ急行。ズイホウはイナを視認後、誘導するように>>
<<イナりょーかいっ。ざっぶ~ん>>
人魚族のイナさんの速力であれば、数分……じゃなかった、数ミノトで現場に到着するはず。
その間に、ズイホウちゃんから監視を引き継ぐ係の子を向かわせなきゃ。
<<輸送船シーラから報告で~す。ミヤ君がノーミちゃん抱えて発艦しましたぁ>>
指示を出す前に対応してくれたみたい。
交信規則とか細かい事は置いておこう。
ミヤさんは竜族の飛竜種なので、背中に載せて人を運びながら空を飛べます。
そこで、獣人族のノーミちゃんを乗せて現場の引き継ぎに向かってもらいます。
<<私達もそっち向かいますねぇ>>
ミヤさんのマーカー(ノーミちゃん付き)を地図に載せて、シーラのマーカーに矢印を付ける。
シーラは船だから、急いでもそんなに速度出ないんだよね。距離も少し離れてるし、20ミノトは掛かるかなぁ……。
地図とマーカーをにらめっこしつつ5ミノト。
<<本部さーん、イナですよー。船見つけましたー>>
<<ズイホウより本部、イナさん確認しました>>
ほぼ同時に通信が入る。
イナさんのマーカーをズイっと動かして不審船ポイントに。
<<本部了解。ズイホウちゃんは警戒しながら接近して警告を、イナさんは攻撃位置に着いて隠れながら待機して下さい>>
イナさんも水中潜れるから機動力は有るけど、とっさの回避が出来るズイホウちゃんに警告をお願いする事に。
もし攻撃された時、空中の方が避けやすいからね。
<<イナりょーかいですよー。潜りまーす。ゴボゴボ>>
<<ズイホウ了解しました。接近するので、イナさん援護お願いします>>
<<はい、実地検証終了してください。玄武、イナとズイホウを回収してミヤを迎えに行って下さい>>
天龍さんの演習終了の宣言を聞いて、地図のマーカーを外す。
うん。演習だったのです。
今日は空母機動部隊を提案して3日後。何と『もう準備できたから試しに運用してみましょう』との提案が。
流石にいきなり現場投入は危ないので、玄武さんに不審船役をやってもらって演習形式の実地検証をしていました。
「どうでしょう。スズネさんの考えている通りに動けていますか?」
いや、もう予想以上です。
竜族(竜人族)や海の民の皆は一人部隊の人達ばかりだからなのか、私から指示を出す前に適切に動いてくれて助かります。
「予想以上の完成度です。私の世界の部隊より凄いんじゃないかって思うくらいです」
航空戦力の速力や監視継続能力、海上・海中戦力の速力や戦力が違うので一概に比較できないとは思います。
でも、提案して三日目でこんなに上手く動けるなんて凄いですよ。
ウィルヘムさんに作ってもらった、通信魔法の位置探知魔法(魔道具)も十分に実用圏です。
……流石にレーダーみたいな物は無理でした。実現は出来るけど、魔力消費が現実的ではないとか。
「では、今日以降はこの体制で勤務してもらいましょう。司令用通信魔道具……でしたっけ、そちらも上手く使えているようですね」
私の付けているチョーカー型魔道具。
これも今回作ってもらった魔道具の一つで、同時に複数の人に通信魔法を出せる物です。
私が中継役になって、私が同時に複数の人に通信を出す。と言った形で、消費魔力を分散させる事で私が使えるようにした。とのことです。
……問題は、この魔道具使うとノーヴ民全員に通信開いちゃうんですよね。
使うのは作戦指揮だけにしておこうっと。
「それにしても、こんなに早く対応してもらえるとは思いませんでした。空軍の皆さんも、慣れない船上からの飛行って苦労しませんでした?」
空母の離着艦なんて数百回単位の訓練をしないと無理だって聞きますしね。
いくら竜や竜人の方達は滑走路要らず。と言っても、船の上は揺れるし滑るし慣れるのに時間がかかると思ってました。
「スズネさんには馴染みが薄いかもしれませんが、私の眷属からすれば空を飛ぶ事は日常ですからね。スズネさんも、『船に乗る練習』なんてしませんよね?私達にとっては、そんな感じなのですよ」
つまり、竜や竜人の方達にとって『空を飛ぶ』って言うのは、私達が『歩く』のと同じような物。ってことなのかな。
生まれた時から翼が有って空が飛べる人は違うんだなぁ。
「さてスズネさん、ちょっと謁見の間まで来てもらえますか」
急になんでしょう?
謁見の間って普段あんまり入った事無いですが、公的な儀式とか他国の使者を迎えたりとかする場所ですよね。
―――
何が起こるのかも分からず連れてこられました。謁見の間の入り口です。
珍しく扉に明かりが灯ってます。
今日って、特に他国から誰か来るとか聞いてないんだけどなぁ。
「まぁ、ちょっとした儀式です。いつも通りにお願いします」
頭の上に『?』が3つほど浮かんだ私を置いてけぼりにしたまま扉を開ける天龍さん。
中にはずらっと並んだノーヴの皆さん。
いつの間に戻ったのか、玄武さんも居ました。銀狼さんと一緒に伊予ちゃんの脇に。
天龍さんに導かれるままに足を進め……何故壇上に向かわせられるんですか。
「ノーヴの新たな『導き手』様に対し、敬礼っ!」
衛兵長さんの声に、びくっと身を震わせて挙動不審になった私は悪くないと思うよ。
な、何ですか。これはっ!?
<<そのまま伊予の隣まで進んでください>>
通信で指示してくれるのは良いんだけど、これが何事か説明してくださいよ!
ぅー……皆の視線が私に……。
「皆さんご存じの通り、ノーヴに新たなカムイのスズネ様が来られました」
な、なに、伊予ちゃん、なんか変な物食べたのっ!?伊予ちゃんっぽくないよ!?
……はい、ノーヴ皇モードの伊予ちゃんですよね。他
国の使者さんが来た時に見たこと有ります。
良く分からないけど、私の紹介イベントってことなのかな。だいぶ今更な気もするけど。
まぁ、良く分からないけど紹介されたんだから挨拶しておいた方が良いのかな。
天龍さんも目で『一言言え』と言ってきてるし。
「御紹介頂きました三笠 鈴音です。未熟者ですが宜しくお願いします」
ピシッと挙手の敬礼。
この世界、と言うかノーヴは胸に手を当てる形の敬礼みたい。
私はカムイだし、私個人として敬礼するのであれば、私の世界(と、言うか私の所属)のやり方で敬礼するのが礼儀じゃないかな。と思ってます。
一応、伊予ちゃんとか天龍さんには説明してOKもらってますよ。
「スズネ様はこの度、異世界の知識を用いてノーヴに新たな知識をもたらしました。私はノーヴ皇として、その功績に対し『導き手』の名を与える事により報いようと考えています」
「天龍公、異議は有りません」
「玄武公、叙任に対し異議は無いぞよ」
「銀狼公も賛同する」
「四公の同意の基にスズネ様の『導き手』着任を宣言します」
これが、正式に『導き手』に着任する儀式。ってことなのかな。
ところで、四公って……伊予ちゃんは皇だから、三公と皇じゃない?
「国祖たる『導き手』ノヴナガ様との盟約に従い、ノーヴ皇伊予はスズネ様に権限をお返しし主君の契りを結びます」
「ノヴナガ様の盟約に従い、天龍公はスズネ様に対し無二の忠誠を誓います」
「国祖ノヴナガ皇との盟約の通り、玄武公は堅実な忠誠を誓おう」
「国父との契約により、銀狼公は絶対の忠誠を誓う」
な!?
『導き手』ってそういうものだったの!?
伊予ちゃんから権限を移されるって、ノーヴの長ってことじゃない!
<<忠誠を受けるって宣言してください。スズ姉の宣言で導き手の儀が完了します>>
急かされてもね!天龍さんも伊予ちゃんも先に説明してよ!
あーもう、こうなったら言うしかないじゃない!
「ノーヴ四公の忠誠、確かに承りました」
<<ありがとうスズ姉!後でちゃんと説明するからっ>>
後でじゃなくて先に説明してよ……。
そのまま、集まった人達で祝賀式典に。
式典と言うか単なるお祭り騒ぎですが……。
ウィルヘムさん、何をニヤニヤしてるんですか。知ってたなら教えて下さいよ!
玄武さん、酔っぱらって『スズネはワシが育てた』とか何言ってるんですか。
天龍さんと銀狼さんは居なくなってるし……。
酔って脱ぐのは止めなさい伊予ちゃん!
……はぁ、何がなんやら。
正式に導き手になりました。
と、思ったら国の長にまでなってしまいました。
「スズ姉は今まで通りでだいじょーぶだよ!」
とか言われましたが……はぁ。なんか先が大変そう。




