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夢と料理とエルフと

「恒例の突発イベント、作戦班大会議だ」

うわぁ、また何か変な事言いだしたこの上官。

「議題はだな……」

我等が室長、榊1佐が毎度恒例(一週間ぶり今年82回目)の戯言を抜かし始めました。


ガタッ たゆんっ

これ見よがしに揺らしやがって!

「冬の祭典の人気カプ予想ですねっ!」

反応しちゃダメだと言ったじゃないですか。

副長やってる癖に頭に入る物胸に入ってませんか水嶋2佐。


ガタッ

「ついに俺の痛F-2案が通りましたか!」

違うって。少なくとも戦車道はダメ。せめて『パンツじゃないから恥ずかしくない』方にしなさい。

てかもう幕の広報行っちゃいなさい安藤1曹。その辺は全部広報担当だから。

「ちゃんと152mm砲が機銃口に合うようにデザインしたんですから。力作なんですから」

良いから新刊の原稿描いてなさい。


ガタッ

「やはりおっぱいは至高です」

何言い出したコイツ。てか、こっち見んな。

柊士長、外出申請許可出さないからね♪

「いえ、控えめなのも素晴らしいとは思いますが……三笠1尉はその……まな板?」

良い度胸だ。ちょっと営庭出ろ!


「良いから予算案作ってください。また防衛部長から怒られますよ」

おいこら、聞こえなかったふりするな!

皆も目をそらさないっ!


「ま、まぁ……議題はだな、『もし異世界に行ったら何をするか』だ」

自作小説のネタは良いからさっさと仕事しなさい。この階級だけ高い駄目幹部が。

「優秀作品は俺がネタに使ってやる」


「それはもちろん逆ハーレムよ~。獣耳ショタっ子とか素敵だわ~」

「ったく……トーン張ってる最中に……。そんな事より俺のネタ出し手伝って下さーい」

「ボン・キュッ・ボンのエルフ探します!」

おい、安藤1曹。仕事中に何してる。

……あ、はい。うちの部署自体が何してるんだって話ですよね。


「私は……陰謀とか策略とか、下剋上とかやってみたいですね」

と、言いつつ私も混ざる。面白そうな話じゃん。


「三笠ちゃん良い事言う~。私もそれやりたいっ!」

「とりあえずアシスタント募集する……っすかねー。暇ならベタ塗り手伝って下さーい」

「え?淫棒と搾乳、ゲイとコクるッスか?」

水嶋2佐が言うとなんかアヤしい方になりそうなのでご遠慮ください。

ひぃ~らぎくぅ~ん、ど~して私から目をそらすのかなぁ~?

「だって三笠1尉じゃ絵的にマズいっすよ。児ポひっかかりますって」

「それだっ!合法ロリを触手で縛って……」

おいそこの男衆。ちょっと表出ろ。


「ハーレム系は多すぎるんだよな。三笠のネタは面白いかもな」

あら、意外。キャッキャウフフ系が好きだと思ってたら。

「ちなみに安藤、柊、胸はサイズじゃないぞ。美しいかどうかだ」


―――


……。

なんか昔の夢を見てた気がする。

色々突っ込みどころ満載……あ、いや。雄×雄で突っ込むとかじゃなくてっ。

……こほん。

なんか色々おかしい状況だった気もするけど、良く考えるとあんな日常だった気もする。

うん。これ以上深く考えるのは辞めよう。

なんか思い出したらムカムカ来たから、元の世界に戻ったら柊君は運動場10周の罰。


「んーっ……」

ベットの上でぐ~~っと伸び。

「ふぅ……起きようっと」

外はもう明るいし、ぱぱっと身支度をしてっと。



1階の食堂に降りると、ヴィル君が一人で本を読んでいました。

確か昨日、私よりも飲んでたような気がするけど……凄いなぁ。

「おはよー。他の皆はまだ寝てるのかな?」


「おはようです。リュミは『遊んでくるー!』って言って坑道潜ってて、カルメンさんはまだ起きてきてないですね」

リュミちゃんも元気だなぁ。

……日中にぐっすり寝てたらそりゃそうか。

「そうそう。アルケインから『僕は起きるの遅いので、厨房とか適当に使って下さい』とのことです。何でアイツが宿屋やってるのか不思議ですよ」


それじゃ、お邪魔して……。

「むー……」

なんだこの厨房。お酒しか無い。


「食料は奥にポトトとカロート、アニエンが。燻製肉も少し有りました」

ポトトはジャガイモ(的な物)で、カロートはニンジン(的な物)、アニエンって確か玉ねぎ?ネギ?だったかな。

流石に街から離れた所。日持ちのする食材しか無い……。

調味料は有るし、手抜きポトフでも作っておきますか。


とは言っても、コンソメなんて手軽な物は無いのです。

しょうがないので、燻製肉(ベーコンとハムの間みたいな感じかな)を炒めて味を出す感じで。

コトコト煮込んでも居られないから、ちょこっと魔法で圧力鍋的な細工を。

鍋の水をぎゅっと抑えるようなイメージで良いのかな。

良く分からないけど、まぁ……野菜も柔らかくなったし良いか。

風味付けでお酒、塩コショウで味付け。

この世界でコショウ的な物って、魔獣の肝らしいんだよね。『んな訳ないじゃん』と思ったけど、香りも味も変わらないから気にしない事にしました。

「さて、スズネ風ポトフもどき完成なのです」


ちょうど良いお椀が無かったのでコップに。

うん……食べづらい……。

「茹でたお湯そのまま?しかもそれを飲む?見た事無い料理ですけど、スズネさんの世界の料理ですか?」

あら、こっちの世界って煮込み……というかスープ系料理無いのかな。

焼いたものか茹でたものが多い。とは思ってたけど……。


「うん。スープって言うんだけど、こっちじゃこういう料理って無いの?」

意外と料理は原始的なのかな?


「見た事無いっすね。茹で汁なんて美味しいんです……?」

茹でただけではないんだけどなー。

まあ、飲んでみなさい!


「そんなに量作って無いから少しだけど飲んでみてよ。手抜きの割に、意外と味はちゃんと出てるからさ」

味の好みが分からないから何とも言えないけどね。

具は入れずにスープだけを少し。具はコップじゃ食べづらかった……。


恐る恐る口を付けるヴィル君。

最初は『?』な顔をしたけど、すぐに全部飲みほして

「すげぇ。美味いッス!肉の味と、なんか甘い感じの味が!」

ほらほら、がっつかなくてもおかわりあげますよ。


「それにしても意外ね。こういう料理法が無いのは」

む~。ジャガイモ……じゃなかった、ポトト柔らかくし過ぎた。コップから上手く出てこないっ!

スプーンとコップで悪戦苦闘。

と、言うかこっちの世界はコップ大きすぎるんだよっ!コップじゃなくてジョッキじゃないですか。


「う~ん。茹でて毒抜きとか、茹でて薬にするとか多いですしね。茹で汁を料理にしようって考えた事は無かったですよ」

そっか。食材がそもそも違うんだもんね。

毒抜き……とは違うのかもだけど、あく抜きみたいな感じにしか使ってなかった。ってことかな。

後は煮出して薬に。みたいな。

「やっぱりスズネさんは賢人なんですね。俺達の知らない事を色々知ってる」

あぁ。こういう事から『賢人』という言葉が生まれたのね。

イメージが付かなかったけど、言われてみれば確かにそうよね。ライフリングだってそうだし、汁物料理だって、その知識が無い世界にすれば『賢人の知識』になるんだ。


「そう言う物なのかな。実感は無いけど……」

新しい知識……ね。

料理なんかは良いけど、それ以外は気を付けないといけないかな。

ライフリングなんて物を伝えちゃった後で気付くのも遅いけど、世界の有り方とか大きく変えちゃう恐れはあるよね。



少し考え込みながらスープを飲んでいると、やっとカルメンさんが降りてきました。

「おはようございます……。すいません、寝過ごしました」

頭がぼさぼさで凄い寝ぐせ。


「おはようございます。カルメンさん、凄く髪がボサボサですよ」

……でも、寝ぐせで初めて気付いたけどカルメンさんってエルフ系の人なのかな?

いつも髪で隠れてて気付かなかったけど、耳が長くて尖ってるし。


「はわっ。な、直してきますっ!」

バタバタと部屋に駆け戻って行った。


「ん~……焦るほど乱れてる訳じゃないけど。むしろ、髪上げてる方がイケメンに見えないかな」

髪を下ろしてると、こう言っちゃ悪いけど『さえないおじさん』にしか見えないけど、髪を上げると『ちょい悪お兄ちゃん』みたいでかっこいいのに。


「『人』の国は色々難しいんですよ。『原初の民』は亜人扱いですからね」

森の民ってエルフ系の人の事かな。

そっか。ノーヴは色んな系統の人居るから考えて無かったけど、こう言う世界だと種族って結構大事なのかな。

例えが悪いけど、一昔前の人種差別みたいに色々有るのかも。

「うちの国は特に気にしませんが、キーリなんかは『人による人の為の国』ですから。国際ギルド経由で行く分には『普通の国』に見せてるつもりでしょうけど亜人種への迫害は酷いです」

う、うん。顔は普通のつもりだろうけど、眼が笑ってないよ……。

言われてみれば確かに、ワマイ君もリュミちゃんやヴィル君に偉そうな口調だったね。


「私も気にしないけどねぇ。個性みたいなものだし」

それに、たぶん種族特性みたいなのもあるんじゃないのかな。

誇る物であっても、蔑む物ではないと思うよ。


「いやはや、うちの国もノーヴの皆さんを見習ってもらいたいですよ。……先ほどはお目汚し失礼しました」

あら素早い。もう戻ってきた。

髪も下ろしてる。残念……。

「キーリの亜人という事で御心配と思いますが、ヴィラードの商会員と言うのは本当です。総代が種族を気にしない方でして、私みたいな亜人でも雇って下さったのですよ」

別に疑ったりはしてないけど、そう思われる事も多いのね。

この世界もこの世界で大変なようで。


「ノーヴじゃ良くあることですから俺達は何も言いません。……てか、この場でスズネさんだけですよ。人族なのは」

うん……ある意味逆に疎外感?

ノーヴじゃ気にしないんだもんっ!

……むしろ異世界人って時点で別扱いな気もするけどね。

「さて、日が高いうちにミルム向かいますか。ミルムの地に入ったって言っても、ある程度離れてますし」

えーっと、ちょっと待って。頭の中で地図を思い出すから。

ここミルム廃坑は山沿い、つまり中央付近なのです。

もうミルム村の範囲内なのは確かなのですが、村の集落は海沿いに広がってるので……うん。遠いわ。

馬車で一日とか、書類の中で見た覚えが有るよ。


「それじゃあリュミちゃん呼んでおく……」


「ただいまだニャー!」

ばぁーんと扉を開いてリュミちゃん登場。

なんとタイミングの良い。

「少し潜って無い間に階層増えてたニャ」

なにそれこわい。

実は廃坑じゃなくて遺跡だったりするんじゃ……。

「ヴィルにお土産でダマスク鉱石とオリハル塊取ってきたニャ。もう馬車に積んであるから、村に帰ったらなんか作ってニャ」

う~ん。私のやってたオンラインゲームだと、どっちも超高級レアだった気がするなぁ。

だいぶ今更感は有るけど、やっぱりバランス的におかしくない!?


「またダマスクか。在庫有り過ぎて困ってるから要らねぇよ……」

余ってるの!?

う、うん。突っ込んでたらキリが無いよね……。


「さて、準備が出来たら出発ニャー!」

い、今戻ってきたばかりなのに元気だなぁ。

私はこのやり取りで疲れたよ……。

文中の組織及び内情はフィクションです。

実在の組織と似通った名前をしてますが、こんな所じゃありません。

空シスはともかく、少なくともここは違うはず……。

# どっちにしても課業時間中に原稿制作なんて出来ませんからね!

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