第三十一話 カトル爺の相談
スーとルーがお昼寝するということなので俺も一緒に寝ようかと思っていると、カトル爺とシェバスに拉致されてしまった。
セーラはついてこないのか。護衛なのに! まあ俺のじゃなくて双子のだけど。
連れてこられたのはカトル爺の執務室のようだ。子供の頃に想像した社長室を思わせる重厚な雰囲気。落ち着いた配色に材質。良い木が使われているのだろう。空気すらも落ち着いたどっしりとした感じに思える。
悲しいかな実際の社長室ってそれなりのところじゃないとしょぼかったり、スチール製のオフィス家具とかで味気ないんだけど、カトル爺のところはさすがにお貴族さまだけあってちゃんと立派。
室内の様子を興味深く窺っていると、後ろからティトに鼻で押された。早く進めってことらしい。たしかに入り口付近で止まってたら邪魔か。中々こういった部屋に入る機会もないので、ついつい長い間見てしまっていたようだ。
視線を前に向ければローテーブルが置かれたソファでカトル爺が手招きしている。表情を見るにどうも嬉しい話ではなさそうなので、足取り重く近づいてよっこらせっとソファへ飛び乗った。
隣の部屋に入っていたシェバスが戻って来るとワゴンを押している。そんな姿も似合うのだからずるい。
ティーポットなどがあることから目的はすぐにわかる。今のこの場にはメイドがいないので、彼がお茶を淹れるらしい。やはりなんでもできる人か。
それにしても隣には給湯室みたいな感じなのかな。これだけ大きな屋敷ならばそういったスペースが多くても不思議ではない。あると便利だしね。帰り際に覗いてみようかな。興味があるしさ。
それらの用意が終わると、必然的に目的であっただろう話し合いが始まる。真剣な表情に変わったカトル爺。初めて会った時のような凄みがある。
対してシェバスさんは微笑んだ表情のまま。おかげで空気感が硬くなり過ぎない。
「わざわざ来てもらってすまんな。話したいことがあっての」
最初に口を開いたのはもちろんカトル爺。シェバスさんはその後ろに控えている。ティトは隣で欠伸中。
「実は話というのは、スースの力のことじゃ。すでにあっちのメイドからある程度の話は聞いておるはずじゃがどうかな?」
「ミャ!」
肯定の意味を込めて一鳴き。ついでに右手を上げておく。こうすればたぶん伝わりやすい。
「そうかそうか。でな、簡潔に述べるとこのまま隠し通すことはおそらく無理。そうなるとスースの立場が危ういということになるんじゃ」
力がバレるのは仕方がないことだろう。何かの拍子に使用人や兵士たちから漏れるというリスクは常に付きまとうのだから。「話せば処分する」といっても、話した後ではすでに手遅れなわけだしね。
それにもしかすると他家からのスパイがいるかもしれない。そうなれば防ぎようがない。
だがスースの立場が危ういとはどういう意味なのだろうか。
わからないので聞く。首を傾げいつものポーズ。
「その表情は、スースの立場がどう危ういかわからんといったところかの」
うんうん。
そうなんですよ。
「バカな話と思うかもしれんが、動物側ではないという証が必要になってくるということなんじゃ。目に見える成果。周囲の人間から見てわかるほどのな。貴族同士の足の引っ張り合いというくだらん理由だが、付け入る隙を与えるわけにはいかん。それにそうやってきた歴史があるのでな。スースだけやらなくても良いとはならんのじゃ」
本当にバカらしい理由。猫の俺としては呆れちゃう。きっとティトもそうなのだろう。先程からつまらなそうにしているからね。
しかしそれを改まった形でなぜ俺に語るのか。
スーと行動を共にしバレにくくすることには協力するし、今だってやっているつもり。でもカトル爺が言いたいのはそういうことではないのだろう。
「スパイツからは森を切り開く許可を求められておる。ありふれた手段じゃ。それも一つの手なのでな。しかしその場合、生半可な成果ではダメじゃろう。でな、何か他に良い案がないかとアンバーに聞きたいのじゃ。先程の菓子のように、お主まだ隠してることがあろう?」
あら。
バレてますね。
というかスーの力の話ではないけれど、バレないはずがない。別世界なんて部分は気付かれることはないと思うが、何か隠していることはわかりやすいからね。頑張って隠してるつもりだけどこうなることは薄々感じてた。エッチな本を頑張って隠しても親に見つかるようなものですよ!
さて、冷静に今の言葉を受けてどうするかだ。
別世界から来た者だからっておいそれと成果なんて出せるわけもない。これは向こうで一か月仕事するよりも大変なことかも。




