第二十九話 お土産
久しぶりに人間での生活を過ごした俺は、前回と同じような方法でエルミーナの屋敷へと帰って来ていた。
よって今回も深夜に帰宅することになったのだが、前回同様アミーは室内から窓を監視し待ち構えていた。
「ご不在になられるならばお教えくださいとお伝えしたはずですよ」
招き入れられてすぐにこの一言。
今回も書置きを残さず外出したのでアミーはご立腹だ。ただ一度やらかしているので、前回ほど心配はされていなかった様子。その分怒りの方に回っているようで、少しだけ言葉に力が込められている。
「またルアナ様から戻ったら連れて来るようにと仰せつかっていますからね。起きたら迎えに参りますのでお部屋にて待機をお願いします」
「ミャ……」
怒られ耳が後ろ気味にへにょんとなる。反省しないとね。
だが悪い事とは知りつつも繰り返す。これが猫という生き物なのだ。
俺はまた次回同じことをするだろう。
またしても途中まではアミーが監視というなの添い寝をしてくれていた。
やはり脱走はいいものだ! むにゃにゃ。
朝の諸々が終わるとアミーが迎えに来た。この後お約束のルアナとの対面が待っている。ちょっと怖い。
「そちらお土産でございますか?」
「ミャ!」
昨日隠しておいたお土産を用意しているとアミーが声をかけてきたので返事をする。どうやら持ち運んでくれるらしい。このまま超能力で運ぶつもりだったので助かる。能力を使いっぱなしだと疲れちゃうからね。
実はこんなこともあろうかと元の世界でルー分のみならずスーやルアナにもお土産を用意していたのだ。きっとこれでルアナも納得するはず。安心して会うことができる。
「なぜこのような物があるのを隠していたのですか!」
おかしい。
お土産を渡したのに前回より状況が悪化している。前はお土産がなくても素っ気ない感じだけで済んだのに、用意するとそれはそれで怒られるという理不尽。
「よもやこの様なものが売られているとは……。アンバー。これはどこで手に入れたのです?」
「ミャア……」
「アミー。何と言っているの?」
「申し訳ありません。わかりかねます」
よほどお土産が気に入ったのか、珍しく感情を露にするルアナ。「供の者を付けるので案内をお願い」と言われたが、のらりくらりとわからない振りでやりすごした。だって地球産のチョコレートだもん。こっちじゃ買えないし。似たものがあったとしてもどこに売っているか知らない。むしろあるならルアナの方が詳しそうだ。
しばらくするとさすがに諦めてくれた。こっちの言葉が伝わらないから続けていても無駄だからね。こういうときは話せないことが有利に働く。
「はあ。次回いなくなった時も持って帰るのよ。いいわね?」
そう言ってルアナは残っているチョコレートを全部自分の物にしてしまった。あれここにいないバーマンの分も含まれてるのになあ。まあサイズが贈答用の中でも小さめの物だし、元々数は多くない。自分用のお土産だと勘違いしても不思議ではないかも?
結局怒られるというか、強いプレッシャーに曝されたわけだが悪い事ばかりでもなかった。次回購入分ということでお金を用意してくれることになったのだ。かなり気に入ったみたい。
いくらかって話だが、猫でも持ち運びやすいように金貨とか言っていたっけ。最近地球では金が高騰しているし、どれくらいの価値になるか知らないけど売れば二十個入りの箱くらい買えるでしょ。これであっちのお金が減りにくくなるし助かる。
今回は近所のスーパーマーケットで買ったけど、次回はもう少し種類の多いところにしようかな。デパートとかショッピングモールの専門店とかさ。
ルアナのところを後にすれば、スーとルーの元へ。
「わー! これくれるの? きれい!」
ルーにはお手玉をあげた。嬉しそうに見ている。なので宙に浮かせて、遊び方を実演。手が人とは違うので雰囲気だけだけどね。
最初はボールを用意するつもりだったんだけど、お安く済ませようとすると色がカラフル過ぎたのでやめた。こっちにもゴムっぽい素材はあるけれど、さすがに地球のおもちゃのような色ではない。お手玉も使われてる生地が派手っちゃ派手だけど、科学的なあれらとは違う。きっとセーフだセーフ。
スーには竹製の水鉄砲。
本人に水の素養があるのでいいかなってことで。こちらも喜んでくれたけど、実演した際に部屋の中が濡れてしまい怒られた。
俺はちゃんと外に向けて発射したのに! やったのはスーだよ!




