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ぼくの会いたい人

 *** 安良坂視点


時空間移動魔法パラレル


 ぼくは、行きたいところを思い浮かべた。

 もちろんゆかりさんの居る異世界だ。

 魔法が発動し、まばゆい光に包まれて…ほんの一瞬で移動は完了していた。


「あれ?安良坂、何で…」


 ぼくは、ゆかりさんの部屋の前の廊下で呆気に取られていた。

 上原くんは、目を見開いて驚いている。


 今、ぼくは突然彼の前に姿を現したわけで…。


「え、えっと…」


 悪い事をしているわけではないのに、冷や汗が出てきた。


「お前、元の世界に送ったはずだよな。何でここに…っ!」


 彼は、左手の中指にはめている銀の指輪を見ている。


「まさか、しおりから指輪を?これは一体どういうことだ!」


 突然、上原くんに襟元を掴まれ体を揺さぶられていた。

 ど、どうしよう。

 何とか誤解を解かないと。


「「ち、違うって!これは女神さまから、さっき貰った物で…」」


「女神さまだと?」


 上原くんが、ぼくを睨みつけていて今にも殴りそうな勢いだ。

 こ、怖い。


 キイー。

 目の前のドアが開いた。


「お兄、何騒いでんの?」


 ゆかりさんが、ドアを開けて顔を覗かせる。


「ゆかり…」


「えっ?安良坂さん?」


 ゆかりさんが出てきたところで、上原くんは少し冷静になったようだった。

 上原くんの腕の力が緩み、ぼくは床に膝をついた。


「た、助かった…」




 ぼくたちは、ゆかりさんの部屋に入っていた。


「女神さまが、俺たちをしばらく監視していた?んで、安良坂は特別に指輪を貰ったと…」


「な、何故かぼく、女神さまに気に入られたみたいなんだよね」


 嘘は言っていない。

 上原くんは首を傾げていた。

 指輪を貰った理由を濁していたからだ。


「へ、へえ~。じゃあ安良坂さんは、これからはいつでもこっちに来れるの?」


「うん。そう…だね」


「そっかー。良かった…」


 ゆかりさんは、頬を赤く染めて微笑んでいた。

 か、可愛い。


「安心したらお腹すいちゃった…まだ夕飯残っているかな」


 ツインテールの髪が揺れる。

 ニコニコしたゆかりさんは、ダイニングへ向かったようだ。




「まさか、ゆかりがなぁ…安良坂、今後ともゆかりと友達として仲良くしてやってくれよ」


 上原くんが、ぼくを見てため息をついていた。



 ***



「寂しいものだよな…これが父親の心境ってものか」


「何言ってんの」


 しおりは、先ほどゆかりが使った食器を洗っていた。


「ゆかりは最近まで、俺の後をいつも付けていたんだぜ?」


「それはそれでどうかと思うけど…ゆうってシスコンだったのね」


「そうかもしれないな」


 しおりに会うまでは、ゆかりが最優先だった。

 必死になって、元の世界に帰ろうとしたのもゆかりが居たからだった。

 家には両親が居ないから。

 俺が居ないと一人ぼっちになってしまう。


「大事な妹だからな」


 大事過ぎて、一時期俺は「ゆかりが好きなんじゃないか」と思っていたくらいだった。

 どうやらそれは、家族としての愛情だったのだと最近気が付いたのだけど。


「ちょっと、妬けちゃうわね」


「何言ってんだよ」


 俺は、しおりを後ろからぎゅっと抱きしめる。


「ちょ…ゆう、こんな所で、手を拭かないと濡れちゃうわ」


「俺の好きな人はしおりだけだよ」


「嬉しいけど…恥ずかしいから。ここじゃ誰が来るか分からないし」


「もう夫婦なんだし、別に気にしなくて良いじゃないか」


「それもそうだけど…」


 女神から銀の指輪を貰った時、しおりとお揃いで嬉しかった。

 でも安良坂も一緒と考えると、複雑な心境になっている。


 俺は、今度改めてちゃんとした指輪を買おうと思ったのだった。

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