王子と対峙
俺としおりは、久しぶりに冒険者ギルドに来ていた。
「お前ら一ヶ月も姿を現さないとはどういう事だ?」
来て早々ギルド長に苦言を言われる。
そう言われてもなー。
学校で期末試験あったりバタバタしてたんだよ。
夏休みに入ったのでようやく異世界に来れたのだ。
ギルド長は眉間にシワを寄せてるけど、一体どうしたんだ?
「王子がクロダを探しているぞ」
「え?もう?」
「早く結婚しちまえ。見つかる前に」
「へー。冒険者ギルドなんて初めてきたよ。男ばっかりだね」
「少ないけど、女性も居るわよ。ほら、そこの白いローブの人とか」
今日は安良坂も一緒に付いてきていた。
「そちらの方は?」
「俺たちの知り合いだ」
「ぼくも冒険者登録しようかな…」
「カウンターはあっちだ。それと、これやるから」
俺は、銀貨3枚を安良坂に渡した。
彼はこの世界の硬貨を持っていないだろうからな。
「悪いね。後で返すから」
「いや別にいいぞ。どうせゆかりも守ってもらうし」
安良坂は銀貨をしばらく眺めていた。
「あれ、このお金持ってるかも…」
「お前もかよ!」
安良坂も同じ世界に呼び出されていたらしい。
「お前、どこの国に居たんだ?」
「プロンっていう所。北国でとにかく寒かったよ。まあ、5年も前の事だし」
「5年前って10歳?…小学生じゃないか」
「召喚されたけど、流石に子供だったから戦えなかったんだよね。呼び出した方の手違いだったみたいで。結局、再度他の人を召喚することにしたらしいよ」
「その割には、戦い慣れていなかったか?」
「3年間位、異世界にいたんだ。その間に魔法とか教わったんだ。運よく元の世界に戻って来れたけど」
安良坂も色々あったんだな。
*
安良坂が冒険者登録をした。
タイミングを見計らって俺は声をかける。
「教会に行ってみるか?」
ギルド長にも急かされたので、結婚式を挙げる為教会に行ってみる事にした。
教会っていうくらいだから、神を祭っているのだろうけど。
「こんにちは~」
教会はギルドから遠くない所にあった。
中に入ると、静かで人が居ない様子だ。
「お祈りですか?」
奥から神父が現れた。
「あの、結婚式をしたいのですが…」
「そうなのですね。結婚式ですと…」
金額を具体的に提示される。
プランA・プランB・プランCとランクがあるらしい。
一番簡素なプランCにしてもらった。
参加する人数も少ないからな。
「驚いた。教会ってキチンとお金取るんだね」
「具体的に言ってくれて助かったよ。そういうのよく分からんしな」
「衣装とかはどうすればいいのかしら?」
「近くに貸衣装屋があるらしい。ウェディングドレスもそこで借りればいいさ」
三日後に予約を取った。
それまでは王子に会わないようにしたいが。
三人で、町を歩いていると視線を感じる。
黒髪が珍しいのだろう。
ガタガタ…。
馬車が隣を通り過ぎようとして、しばらくして停止した。
「おお、クロダ!」
若い男性の声が聞こえた。
豪勢な馬車。
窓から顔を覗かせている男性。
金髪で青い目、恰好からして王族っぽい。
「げっ!」
しおりが嫌そうな顔をした。
どうやら張本人の王子らしい。
「逃げるか?」
「いえ、ハッキリと断るわ」
王子は馬車から降りてしおりの前に来た。
彼女は王子と向き合う。
「お久しぶりです。フィリップ王子」
しおりは頭を下げた。
「異世界へ帰ったと思っていたのだが、戻ってきたんだね?顔を見れて嬉しいよ。前にも言ったが、是非オレと結婚してほしい」
「僭越ながら、お断り致します。わたしは上原くんと結婚することにしましたので」
「ウエハラ?」
フィリップ王子が俺をチラリと見る。
「異世界の同郷の人かな?オレほど貴方を幸せにできる人は居ない。神に誓って。何が不満なのだろうか?」
なおも食い下がる王子。
「しおりが、俺の方が良いって言っているんだから…それで良いだろうが」
王子の傍に居た騎士が、剣を俺に向けた。
「平民の分際で失礼な者ですな。いかが致しましょうか」
「まあ、待て」
王子は騎士を制する。
「う、上原くん?王子様にその言い方は…」
「ゆう、ほら謝って!」
「別に謝る事なんてないさ。しつこくて困っているのだろう?ハッキリ言ってやれば良いんだ」
「君は随分と強気のようだが。実際強いのかな?」
王子は俺を見下しているようだ。
「一応、勇者として召喚されたからな。バルバトークは知っているか?」
一瞬、間が開いた。
王子は顎に手を付けて話す。
「そ、そうか…バルバトークか。…今日の所は引き下がるとしよう」
王子は馬車へ戻っていった。
しおりと安良坂は、地面にへたり込んだ。
「ゆう一応、王子相手なのだから怒らせないようにしてもらいたいわね。ヒヤヒヤしたわ」
「ほんとブレないよね。上原くんの良いところなんだろうけど」
「何かいけなかったか?それよりそこに座ると土がついて服が汚れるぞ?」
俺は、本音を言っただけなのだが。
しおりに右手を差し出して、立ち上がらせる。
しおりはスカートの土を払った。
「ねえ。ぼくには?」
「お前は一人で勝手に立てるだろ?」
「ついでにやってくれても良いじゃないか。ケチ」
可愛い彼女以外には、手を貸してやる義理は無い。
安良坂は、ブツブツ言いながら自力で立ち上がった。




