ギルド長の答え
*** ギルド職員ラナ視点
「ラナ、ウエハラとクロダは来ていないのか?」
私は、ギルド長室に呼ばれていた。
「前回もそうでしたが、何日か経ってから訪れるのですよ。今回もしばらく来ないのかもしれませんが」
「う~ん。本人たちに確認したい事があるだけなのだが…。何か事情があるのだろうか」
「どうでしょうか」
ウエハラ様が訪れてから三日が経っていた。
あと数日しないと会えないのかもしれない。
クロダ様が体調不良と言っていたから、看病でもしているのだろうか。
「女性の、クロダ様は体調が悪いと言っていたので、家に一緒に居るだけなのかもしれませんが」
「どちらにしても待つしかないか。現れたらオレに声をかけてくれ」
ギルド長は顎髭を撫でた。
「はい、分かりました。では失礼いたします」
私は、頭を下げて部屋を出る。
緊張した。
上司と話すのは何年たっても慣れないわ。
私は十年このギルドに勤めているけれども。
***
「ウエハラ様!」
「わっ!」
一週間ぶりに冒険者ギルドへ訪れていた。
青い髪のラナさんに急に迫られる。
「びっくりした…どうしたんだ。急に」
隣にいるしおりが、ラナさんを睨んでいた。
しおりは俺の腕を掴んでいて…この間から少し距離感が縮まった気がする。
「す、すみません。えっと実は…ウエハラ様とクロダ様を待っていたのです。この後、少しお時間よろしいですか?」
「別に俺はかまわないが。しおりは?」
「わたしもいいけど」
俺たちはラナさんに連れられ、冒険者ギルドの奥の部屋へ案内された。
コンコンコン。
「ギルド長、お二人をお連れしました」
「ああ、入ってくれ」
「ギルド長?」
確か冒険者ギルドの偉い人だよな。
何で俺たちが呼ばれたんだ?
「まあ、ソファに腰かけてくれ」
「「はい」」
俺としおりはギルド長に、二人掛けのソファに座るように勧められた。
ギルド長は、銀色の短髪で顎髭がある中年男性だ。
「急に呼んですまなかったな。一つ訊きたいことがあって。ウエハラ、君はバルバトークで召喚された勇者ではないか?」
「えっ」
オリビアさんが俺の正体を言ったのだろうか?
「それと、クロダ。貴方はこの国で召喚された聖女ではないだろうか?」
ごくっ。
隣で息をのむ音が聞こえた。
「俺が勇者だという証拠が?」
「魔法属性だ。一般的に全属性持ちはいない。普通は一属性しか使えないからな。あと黒髪、聖女も同じような理由だ」
俺は魔法の一般常識を知らなかった。
そういえば、仲間の魔法は一つの系統しか使っていなかったような。
あえて聞かなかったけども。
しおりも同じようなものなのだろう。
「ギルドカードが黒いだろう?あれは魔力量が多いとか、特殊な人が持つカードなのだよ」
黒が普通なのかと思っていた。
「わたしは…ある方に居場所を知られたくないのです。どうか王城には内緒にしておいてもらえませんか?」
「しおり…」
「内緒か…報告の義務があるからな。難しいな。理由を訊いても?」
「わたしは王子に結婚を迫られていました。どうしても嫌で、必死に逃げていたのですが…今は隣の彼と付き合っているのです」
「なるほど…」
「そんな事があったのか」
しおりは、大変な思いをしていたのだな。
「だったら、彼と結婚をしてしまえばいいのでは?婚姻していれば、流石に王家は諦めるでしょうし」
壁側に立っていた、ラナさんが提案してきた。
「おお、そうか。その手があったな」
ポンとギルド長が手を叩いた。
「「え?」」
「なあに、式なんて軽いものでいいんだ。お前たち、いずれ結婚するつもりなのだろう?」
*
俺としおりは、泊っている宿屋で呆けていた。
一部屋にベットが二つある部屋を借りていた。
単純に値段が安かったからだ。
二人で、ベッドの縁に座っていた。
「なあ、俺と結婚って…まだ、早いよな。しおりは15歳だっけ」
しおりは元の世界に帰る時に、女神に年齢を戻してもらったらしい。
どの位の期間、居たのかは不明だ。
俺は異世界で過ごした三年分、歳をとっているのだが。
なので、俺は18歳だったりする。
「こっちの世界は、数え年だから16歳よ。一応、結婚は出来るわね」
異世界では16歳で大人とみなされている。
酒も飲めるし、結婚も出来る。
「ゆうだったらしてもいいよ」
「しおり…」
しおりは頬を赤らめ、俺たちはじっと目を見つめ合う。
お互いの手を繋いだ。
「後悔しないな?」
「うん」
「じゃあ、結婚しよう」
俺はしおりを抱き寄せると、彼女の胸の鼓動が伝わってくる。
彼女の唇にそっと口を重ねた。




