小屋の持ち主
「変だな。人の気配がする…」
僕は、久しぶりにファームズの森の小屋に来ていた。
ここは誰も知らない唯一の寛げる場所だ。
窓を覗くと、黒髪の少年と少女が小屋の中に見えた。
「ここは、僕の家(秘密の隠れ家)なのだけど…」
カップルに住まわせる許可は出していないよ?
ギイー。
ドアを開けてみた。
少年が僕に気が付いて、驚いている。
しばらくして、少女も僕に気が付いたようだ。
「ここ、僕の家なんだけど?君たちは一体…」
「勝手に入ってしまって申し訳ない。人が居なかったから、てっきり空き家だと思っていた…今すぐ出て行くから許してくれ」
「あら、そうだったのね。ごめんなさい」
二人に頭を下げられる。
黒髪の少女は、僕の顔をじーっと見て首を傾げている。
眼鏡をかけているが、中々の美少女のようだ。
あれ?初対面だと思うのだが、見覚えがあった。
何処でだろう?
「えっと?僕の顔に何か付いてます?」
「しおり、初対面の人に失礼だろう」
「貴方、もしかして女の子?」
少女に指摘された。
「えっ、分かります?」
「えっ?そうなのか?」
少年は驚いているようだった。
***
森の小屋で休んでいたら、家の持ち主という人物が現れた。
ワインレッドの長髪に金色の瞳。
白いシャツに紺のジャケット・青いズボンを穿いていて、「僕」と言っていたからてっきり男だと思っていたのだが。
女だったらしい。
胸も控えめだったから余計に。
何で男装しているんだ?
「僕はオリビア近くに住んでるんだ」
「俺は上原勇、隣が黒田しおりだ」
「ところで君たちは冒険者なのかい?見慣れない服装をしているけど」
俺は黒いTシャツにGパン、しおりは緑色のTシャツにGパンだった。
暑かったので、パーカーは脱いで仕舞ってある。
俺としおりは顔を見合わせる。
初対面だし、正直に言わないほうが良いだろう。
「遠い所からやって来たんだ。冒険者登録は近いうちにするつもりだ」
嘘は言っていない。
「そうなんだ?わざわざ何も無い田舎へ?」
「森で迷ってしまって、困っていたら小屋があったから休ませてもらっていたんだよ」
「ああ、そういう事ね。家に地図があったはずだ。見せるから付いておいでよ」
何とか誤魔化せた。
*
「ここがオリビアさんの家?」
大きな屋敷。
庭が広くて屋敷に入るまでに結構時間がかかった。
広い玄関で、使用人たちに頭を下げられた。
大きな部屋に通される。
「辺境伯の令嬢なんだ。だから田舎に住んでるってわけ」
広大な森林は、オリビアさんの家の敷地だったらしい。
「「貴族?」」
まさか貴族だとは思っていなかったので、普通に接してしまっていたが不味かったか。
平民にしては、しっかりした服装だったし変だとは思ったけど。
「ああ、畏まらないでいいよ。言葉使いもそのままで。僕は、身分とかそういうの全く気にしないから」
階級社会の異世界で、オリビアさんは変わった人なのだろう。
あらためて名前を聞くと、オリビア・スターマルクと言う名前らしい。
貴族と思われると、気を使われるので黙っていたみたいだ。
「ところで、クロダだっけ。何だか見覚えがある気がするんだけど、気のせいかな…」
俺はしおりに耳打ちする。
「おい、王城で会った事あるんじゃないのか?」
「ええ…っ。人が多かったから、いちいち憶えていないわよ」
「黒髪と眼鏡っていうと「聖女様」くらいしか思いつかないのだけど…まさかね。今、地図持ってくるから待ってて」
オリビアさんは部屋を出て、探しに行ったようだ。
「しおりって確か聖女だったんだよな?」
「ゆう、黙っていてよ?後で面倒なことになるから。特に王族の人には」
「あったよ。奥に仕舞ってあった」
オリビアさんがテーブルに地図を広げる。
森と町や村、川など大雑把な事しか書かれていない。
材質は羊皮紙だろうか。
「今居るのがここらへんね。ファームズの森のあたり。東へ行くとアッスラ国の都、王都があって冒険者ギルドもあるよ。この地図持って行くかい?」
「貰っても良いのか?貴重な物だろう?」
「余分にあるし、そうでもないよ」
俺は地図を受け取った。
「そういえば、ウエハラは旅人の割には荷物持ってないよね?」
「俺はアイテムボックス持ちなんだ」
「なるほど。クロダも?」
「ええ。そうね」
「そうなんだ。二人とも、今日は家に泊まっていきなよ。部屋を用意するから」
オリビアさんは使用人を呼んで指示をする。
早速用意してくれるらしい。
「部屋を準備している間…何か話を聞かせてくれるかい?」
「わたしは逆に、オリビアさんの事が知りたいのですけど」
しおりが尋ねる。
「ああ、僕ね。何で男の恰好をしているかって事?王都で演劇の男装をしている人が気に入って、ずっと真似していたら癖になってしまってね。もうドレスには戻れないよ」
宝塚みたいなものだろうか?
前来た時は、遊んだりする暇無かったしな。
俺は首を傾げた。
「あれ、ウエハラ今疑ったでしょ。次は二人の話を聞かせてほしいかな」




