再び異世界へ
『みなさま、お疲れさまでした」
室内に、鈴の音のような声が響く。
金髪の女神リリアホワイトが、俺の部屋に突然現れた。
いつも思うが、突然現れるんだよな。
ちょうど、俺と黒田さん、安良坂で寛いでいた時だった。
六畳の部屋なので、四人いると窮屈に感じる。
「女神さまが現れたって事は、もう終わりって事で良いのか?」
『無事時空は修復終わりました。有難うございました』
「「「よかった~」」」
俺たちはホッとする。
寝不足もあって結構大変だったからな。
『みなさまのお陰です。それで前に言っていた報償なのですが、何か欲しい物はありますか?』
「欲しい物?」
「そんな事すっかり忘れていたわ」
「そういえば、そんな事言ってたねー」
以前に報償を出すとは訊いていたけど、全然考えていなかった。
「どんなものでも良いのか?お金一億円とか、広い豪邸とか、車とか」
『世界を滅ぼす…とか悪いものでなければ、何でも構いませんよ。ハーレムとかでも良いですし』
「「ハーレム??」」
俺と安良坂の声が重なる。
男のロマンだな。
頭の中で想像をめぐらしていると、黒田さんがジロリと俺を睨みつけている。
「黒田さん、目が怖いよ…俺はそんなお願いはしないよ…そんな事は…」
安良坂も、黒田さんの視線に怯えてしまっているみたいだ。
すこーし興味はあったりするんだけどな。
とっても…残念。
「また異世界に行ってみたいわ…行き来する能力っていうのもアリなのかしら?」
『お望みであれば可能ですよ?』
「確かにこっちの世界だと、制限が多すぎる気がするんだよな。自由に飛べないし…」
「上原くんが動き過ぎなんじゃ…」
黒田さんは、異世界を行き来する能力を貰うらしい。
安良坂は回復魔法の能力。
「俺も黒田さんと同じ能力をお願いしたい」
「え?良いの?他の物の方が良いんじゃない?」
「かといって他に思いつかないし…異世界に行けたら魔法を気兼ねなく使えるだろ?」
「それはそうかもしれないけど…」
『黒田さんと上原さんは時空間移動魔法、安良坂さんは回復魔法ですね?』
俺と黒田さんは、女神から小さい指輪を受け取った。
見た目は普通のシルバーリングだ。
「上原くんとペアリングみたい」
「そう言われればそうだな」
『この指輪で時空間移動が簡単に出来ます。決して無くさないようにしてくださいね。使い方は、はめれば分かりますので』
「分かりました」
「分かった」
時空間移動魔法は魔力を膨大に使うらしく、俺たちでは魔力が足りなくて発動すら出来ないらしい。
仕組みは解らないが、誰でも使える代物のようだった。
『では、安良坂さん魔法を渡しますので手を出してください』
「はい」
安良坂は女神から直接、回復魔法を貰っていた。
緑色の光が、右手から吸い込まれていった。
「やった!これでぼくもヒールが使えるようになった!」
安良坂は、両手をあげて喜んでいる。
よっぽどヒールが欲しかったのだろうか?
異世界ならいざ知らず、現代なら病院があるから必要ない気がするのだけど。
しばらくして、女神と安良坂は帰っていった。
*
「上原くん、悪いけどちょっと異世界まで一緒に付き合ってくれる?流石に一人じゃ心細くて」
「分かった」
俺は黒田さんに付き合う事にする。
ふたりでしっかりと手を繋いだ。
『時空間移動魔法』
黒田さんは早速、女神に貰った指輪で魔法を発動させた。
床に魔法陣が現れ、眩しい光に包まれた。
次の瞬間、俺たちは大自然の森の中にいた。
爽やかな空気が気持ちいい。
数秒で移動したようだ。
足が地面について冷たい。
土で足が汚れる事をすっかり失念していた。
黒田さんがスリッパをアイテムボックスから取り出す。
用意が良いな。
「はい、とりあえず使って」
「ありがとう」
「それにしても…また異世界に来れるとは思ってもいなかったな。ところでここは何処なのだろう」
「一応、前来た所と同じような場所ってイメージはしたのだけど…」
『世界地図』
黒田さんが呪文を唱えた。
何だその魔法。
俺が首を傾げていると。
「現在位置を調べる魔法よ。森の中で迷子になった時とか、街中で迷った時とか便利よ」
彼女の前には地図のホログラムが映し出されていた。
今の現在位置が、赤い点で表されている。
地形が表示されているみたいだ。
「もしかして黒田さんって、すぐ迷う人?」
「そうなのよ。ここは前と同じ世界なのかしら?見たこと無い場所なのだけど…」
彼女は、方向音痴なのかな?
「上原くん、落ち着いたらこっちで一緒に暮らさない?異世界って、今の生活よりのんびりしていて好きなのよね」
確かに異世界は時間がのんびり流れている感じがする。
出来れば俺も暮らしたい。
「でも、黒田さん学校はどうするんだ?辞めて完全に移住するのか?」
俺には妹も居るしな。
心配で残してはいけない。
「学校…別に行かなくても良いんじゃないの?」
「いや、一応親に訊いたほうが良いんじゃないか?」
学校も無料じゃない。
親にお金を出してもらっているからな。
話しながら、森の中を歩いていると一軒の小屋を見つけた。
「コンコンコン」
ドアをノックしてみたが、返事はない。
ドアノブを回すと、鍵がかかっていなかった。
俺たちは、そっとドアを開けて中に入る。
「失礼します」
「お邪魔します」
空き家だろうか。
それにしてはキレイに片付いているな。
「誰か住んでいたのかしら?コップもお皿もあるし、台所もキレイで直ぐにでも使えそうね。快適に暮らせそうだわ」
黒田さんは、異世界に住む気満々のようだ。




