ゆかりの友達
「ただいま~」
俺は遠足から帰ってきた。
体力的に疲れていないはずなのに、どっと疲れたのは精神的な疲れかな。
慣れないバスでの移動や集団行動。
「頼まれていた物、買って来たぞ。これで良かったのか?」
「わーい。ありがとう!」
玄関先で、買ってきた物を渡した。
実はあの後、道の駅には寄れなかったのだが、高速道路のサービスエリアで妹に言われた物を見つけたのだ。
キーホルダーの種類が色々あって、よく分からなくて…結局、黒田さんに選んでもらっていたけど。
キテ〇―ちゃんのキーホルダーとか、色々なキャラのキーホルダーがあったしな。
ビニール袋の中から小さい包みを手渡す。
ゆかりは直ぐに包みを開封した。
「わぁ。かわいいー」
「良かった。後で黒田さんにお礼を言っておけよ?」
「黒田さん?」
「選んでくれたのは彼女だからな」
「ふうん、そうなんだ…」
あれ、落ち込んでないか?
どうしたのだろう。
「ゆかー」
奥の部屋の方から女性の声が聞こえた。
「誰か来ているのか?」
「ああ、ごめん。友達がどうしても家に来たいってきかなくて…」
「全く、しょうがないな。奈々は…」
ぶつぶつ言いながら、ゆかりは自室に歩いて行った。
*** 上原ゆかり視点
今から、数時間前の事。
お昼休みに、学校のベランダで奈々と会話していると。
奈々が突然言い出した。
「ねえ、今日ゆかの家に遊びに行っても良い?」
「え?」
多分、お兄を見てみたいだけなのだろうけど。
「なあに、怖い顔して。何もしないから…顔を見るだけだよ?だってカッコいいって聞いたら気になるじゃない」
お兄を自慢したい気持ちと見せたくない気持ち。
複雑な思いが入り交じっていた。
特に断る理由がないんだよね。
何で今日なんだろう。
今日はお兄は遠足で、疲れて帰ってくるって言うのに。
迷惑じゃないかな。
結局、断れなくて奈々を家に招いた。
彼女は、しばらく私の部屋でマンガを読んでいたのだけど。
カチャ。
ドアが開く音がした。
お兄が帰ってきた。
「お兄さんが帰ってきたの?」
「奈々は待ってて」
私は制止する。
疲れているだろうに、本当は会わせたくないのだけど。
仕方ないな。
***
コンコンコン。
俺はゆかりの部屋のドアを叩いた。
「ゆかり?ちょっといいか?」
「えっ?何?」
「お土産買ってきたんだ。良かったら友達に食べて貰ったらどうかな」
俺はドア越しにゆかりに話しかけた。
俺はクッキーと、缶のお茶を二つトレーに乗せて運んでいた。
ドアがゆっくり開かれる。
部屋にはゆかりと、ゆかりの友人の女性が座っていた。
二人ともセーラー服の制服姿だ。
少し暑いのか、上のボタンを外していた。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
俺は、お菓子と飲み物をテーブルに丁寧に置いた。
「お邪魔しています。お兄様ですか、初めまして。あたし、ゆかりの友達の森崎奈々って言います」
「いつも妹のゆかりがお世話になってるね。兄の勇です」
自己紹介されて、少し戸惑ったが丁寧に言葉を返す。
森崎さんに、じーっと顔を見つめられた。
「ありがとね。お兄、疲れてるだろうから戻りなよ」
「ああ…」
ゆかりに部屋から出るように促された。
彼女に見られていたけど、一体何だったんだろう。
まあいいか。
パタンとドアを閉める。
「「きゃーっ!!」」
女性の声がした。
森崎さんだろうか。
「……」
「……」
何か会話をしているようだが、聞き取れない。
女子同士、アイドルの話でもしているのだろうか。
*** 再び、上原ゆかり視点
「お兄さん?想像していた人とだいぶ違うのだけど!」
奈々が興奮して、声が高くなっていた。
「カッコいいって言うから、イケメンっぽい人なのかなって…めっちゃ優しそうじゃない。見た目割と普通っぽいのに、落ち着いた雰囲気あるわぁ…」
「そうなんだ…」
お兄が褒められて嬉しい様な…複雑な気分だわ。
「あたしはゆかを応援するからね!」
「え?」
何を言ってるの?奈々ってば。
「彼女が居ても、まだ大丈夫よ。こっちの方が若いんだし。いくらでも挽回できるわ」




