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あの日から私は暗い部屋にいる。
簪を叩き折った後、私は走って家に帰った。驚いた母の制止も聞かずに一直線に庭に向かった私は、庭師の手から除草剤を奪い取って自分の両眼に注いだのだった。
お前さんが姉の死骸を背負って帰ってきたときには、既に私の視界は光を失っていた。
座敷牢にぶちこまれた私の世話を見ているのは、あの年老いた庭師だ。上手く育たない植物を愛でるのと同じ手で、庭師は私の着物を替え、食事を運んで、排泄物を処理する。
無口な庭師は、時折私に話しかける。声は聞こえるのだが、何を言っているのか私は理解できない。理解しようともしていない。
暗闇に染まった視界の奥に、私は一筋の光を見ている。
鉄窓から射しこむその朝日は、一人の少年の横顔を照らし出している。少年は地下室で立ち尽くしている。私も同じ地下室にいる。飛び立った小鳥と遥かな青空を見上げる少年を、私は見ている。
挿絵の少年が動くことはない。私も動かない。ただ少年を見つめる。何者にも邪魔されないその空間は、私をひどく安心させる。
お前さん。ねえ、お前さん。
たかが挿絵の少年に、私がどれほど心を救われているかなんて。
お前さんには一生かかっても分かるまい。




