マリア・フォン・ゴルディナー大勝利! 希望の未来へレディー・ゴー!!! 11
なんだか滅茶苦茶筆がノったので
一気に最終回まで連投します。
ついでに450年後の次回作のプロローグも投稿します。
戦闘開始からわずか数分で、辺り一面は焼け野原と化した。元々は王都の周囲ということもあり、絵に描いたような王都の城壁の外側といったイメージ通りだった風景は、今やその名残は欠片も残っていない。
もしもこの世界が剣と魔法の世界だったら、王都の周りで薬草が採取されなくなって新米冒険者が立ち行かなくなっていたことだろう。
まぁこの世界に剣はあっても魔法なんてものはないんだけどね! 当然、使うだけで即座に傷が治るような都合のいい回復アイテムだってない。
つまり何が言いたいのかと言えば、この状況を簡単に解決できるご都合主義なパワーは存在しないってことだ。
周辺環境は滅茶苦茶になっているが、それでも俺たちはなんとか全員持ちこたえられていた。簡単な理由だ。
ナスラー枢機卿が、戦いにおいては素人だからである。複数機を同時に狙うと途端に狙いが甘くなったり、一機だけを狙う場合には砲撃の組み立て方が滅茶苦茶で、簡単に包囲を抜けれる。細いビームも最初は誘導ビームかと思ったが、どうやら曲がるのは最初だけで、機体を追いかけるような効果が無かったのも大きい。
つーかビームが敵を追いかけて曲がるってどんな理屈だよ。アニメじゃねえんだから現実であるわけないだろそんなの。
こちらの被害はないに等しいが、始硬・合一剣にもダメージを与えてはいない。俺の指示で回避を優先しているからだ。一度、ヴァイトが砲撃の全身からマイクロミサイルを発射したが、それらはビームの弾幕によって防がれてしまった。
敵の攻撃が俺に集中する。それを俺は守護薔薇の変形機構を生かして重心を変えることで回避した。
『うわ気持ちわる……。何スか今の挙動』
『怪しい動きを……! やはり悪魔の子に違いない!!』
『オーッホッホッホッホ! わたくしばかり注目していてよろしいんですの素人さん!!』
直後に、始硬・合一剣に砲弾が2発叩き込まれた。零式獅子・砲撃のバックパックから延びる2門の複合式大砲が火を噴いたのだ。直撃した敵機が爆炎に包まれ―――
「! 避けなさい、ヴァイトさん!!」
煙に穴を開けて、一筋のビーム光が砲撃へと向かった。
『ぬっ! くうぅ!!』
本体は避けれた。だが、背負ったユニットが巻き込まれた。直後に起こった背面からの爆発に零式獅子・砲撃が吹き飛び、地面を転がっていく。煙が搔き消え、そこに立っていたのは、全身を黄色く輝かせた始硬・合一剣だ。光は即座に消え、再び黒い姿に戻る。
『馬鹿な、無傷!?』
「プラズマですわ! プラズマで機体全体を覆って、砲撃を防いだのです! その技術、リアが盗まれた設計図には乗っていなかったはず!!」
そう、プラズマ系の兵器は俺が開発し、リアがそれを知ったのはリントヴルムに留学してからだ。だから時系列的に考えて、設計図には書かれていない。
『知れたこと。我らが神は、全知にして全能である故に』
「わたくしのところからも盗んだだけでしょうがぁー!?」
俺も飛翔魔爪に搭載されたビーム砲で攻撃する。ビームは命中したのだが、やはり合一剣がまとった防御膜、プラズマ・スキンに弾かれた。
『マリアセンパイ! あれどうすりゃいいんスか!?』
「純粋な質量兵器。つまり実弾ですわね。十分に大きければプラズマ層を抜けてダメージが通りますわ。そしてプラズマ・レールガンならベスト。同じプラズマなのでスキンに弾かれず着弾します。一方でプラズマとビームは反発しあうので、ビーム攻撃は効果が薄いですわね。あと、プラズマ自体が高熱なので、範囲へ熱と衝撃でダメージを与える爆発の類も効果は薄いですわ」
『ウチらの火器、殆どビーム系かグレネード弾なんスけどぉ!?』
だから複合式大砲では攻撃が通らなかったのだ。あれは榴弾を発射するのだが、初速をレールガンの作用で稼ぎ、レールガンの充填時間を火薬を用いて短縮するという兵装だ。つまり、質量も足りなければ、プラズマを纏っているわけでもない。
まぁ反撃でぶっ壊されたんでもう使えないんだけどな。
『あの防御膜そのものを消すことは出来ないんですか?』
アリスの問いかけに、俺は少しばかり考えた。
「高出力のビーム兵器……守護薔薇の主砲を5分くらい照射し続ければ、プラズマ・ジェネレーターがオーバーヒートして使えなくなるとは思いますわ」
『……どう考えても不可能ですよね』
『つまり、オレたちが本命ってことだよなぁ!!』
レオニスが回転式武装腕部機構の折り畳み式大型ブレードを展開する。確かにあのブレードはプラズマを纏わせることが可能なので、十分なダメージを与えることが出来るだろう。
合一剣の攻撃が、目に見えて剣撃に集中した。
『どわぁああああ!!?』
「近付ければ、の話ですわね」
レオニスを助けるため、グレイが追撃を地上に降ろし、足を止めて火力を集中させた。追撃は機動力自慢だ。加えてターニャの眼もある。狙われてからでも回避できるとの判断だろう。すると、
『……成程。おおよそ理解出来た。この理解の速さ、やはり主は我が悪魔の子らを滅することをお望みなのだろう』
ナスラー枢機卿が追撃へと右手の高出力ビーム砲を向け、発射した。だが、その攻撃は追撃への直撃コースではない。グレイは一応その場から離れるが、
『駄目ッ! グレイ君、もっと距離を取って!!』
アリスの忠告は、僅かに遅かった。
地上に着弾した高出力のビームが地表を吹き飛ばし、高熱を帯びた岩や土が零式獅子・追撃を襲ったのだ。
『防げグレイーーーッ!!!』
リギアの叫びに、追撃が両腕で胴体を守った。直撃するビーム。爆発する腕。体勢を崩した機体にとどめを刺さんと無数の細いビームが放たれ、危ういところで不知恐怖が中破した追撃を真横から掴んで火線から退避させた。
「リギア様はそのまま退避なさって!」
『何を!』
「グレイさんを庇いながらでは戦えませんわ! 一度戻って増援を連れてきてください!」
そもそも不知恐怖は肉弾戦特化機だ。始硬・合一剣には接近できないうえに、機体サイズも違い過ぎて得意の格闘術も効果が薄い。後ろに下がって全体の指揮を取ってもらった方が役に立つ。
『何を連れてこようと、この使徒の前では無駄なこと。……む? ロンゴミニアドの王女はどこに、……上か!!』
合一剣が真上を見上げた。そこには、空高くで上下逆さになった始硬剣・束。天竺葵の主砲を始硬・合一剣に向け、
『―――取った』
弾丸を発射した。グリプスとの最終決戦で用いた徹甲榴弾ではなく、本来の仕様。即ち、大口径のプラズマ・レールガン。プラズマ・スキンの守りを貫き、始硬・合一剣に致命打を与える一撃を、
『フンッ!!』
実体剣で切り払った。
『嘘でしょ!?』
動揺し、動きが止まった始硬剣・束へと、剣を持っていない方の手、左腕のビーム砲が狙う。
ビームが直撃する直前、飛翔魔爪が機体を掴んで引っ張った。だが完全には回避しきれない。背中から上方向へと延びる主砲部分にビームが当たり、施したビーム・コーティングを容易く揮発させ、砲身そのものを焼き溶かした。
『しまった、虎の子が……!』
『どんな反射神経してるっスか!?』
《感想:マスターもやろうと思えば同じことが出来ますよ。当機との契約で、反射神経や思考速度は常人の比ではないほど強化されていますので》
やれると分かっててもやりたくはねえよ。
「ラッキーパンチ、ならぬラッキーソードですか」
『幸運などといった言葉で片付けるものではない。我は主の御業より祝福を受けし者。さすればこれは必然なり』
《感想:祝福……成程、『祝福』ですか。マスター、艦長から聞いた話を覚えていますか? 薬物強化の話です》
そういや言ってたな。薬物強化のことを『祝福』と呼んでるって。思い返せばヴァイトの攻撃に対しても、直撃したと思ったら寸前でプラズマ・スキンを展開されて防がれていたしな。
《感想:加えてあの武装量。普通の人間が一人で制御するのは困難な数です》
つってもそれが分かったところで、敵が超反応でこっちの攻撃を防いでくるクソゲーだってことが判明したってだけなんだが……。
『慣らしも終えた。終焉を始めよう。汝ら悪魔の子を滅ぼした後、悪竜の国も滅ぼさねばならぬ』
剣を持ったまま、右腕の銃砲が零式獅子・砲撃に狙いを定める。全身のミサイルを撃ち切り、バックパックを失って身軽になっているとはいえ、何度も回避できるものではないだろう。
……ヴァイトの回避ステータス、俺ほどではないけど、他の連中と比べると低い方だしなぁ。
『では、まずは貴様から主の元へと召されよ』
ビームが放たれ、零式獅子本体ではなく、その足元へと着弾し、機体をその場から大きく吹き飛ばした。
何だ? グレイにやったのと同じようにやったのか? 砲撃の機動力は低いってのに、あいつはそれに気付いていない?
『ぬ……? 照準がずれたか?』
俺の疑問は、その一言で氷解した。同時に、
「待っていましたわ、この瞬間を……!」
右腕、飛翔魔爪を合一剣へ向けて発射する。プラズマ・スキンを纏った魔爪は迎撃に放たれたビームを弾き、肉薄し、
『甘い!!』
実体剣で刺し貫かれた。構わない。
「進め……!」
貫かれたまま、スラスターがさらに火を噴く。傷を広げながらも前へと向かい、
『甘いと言ったぁ!!』
手首を返され移動方向を誘導され、地に突き刺さったところで踏みつけられて本体と繋がっていたワイヤーを切断されてしまう。金属が軋む音がした。
『無駄なことは止めよ、悪魔の子よ。この使徒、その程度で傷を付けられるなどと思わぬことだ。……む? 何だ、この耳障りな音は?』
そして、始硬・合一剣の右腕が、肩の関節部から砕けて大地に落下した。
『な、に……? 何をした、悪魔の子よ!?』
「何もしておりませんわ」
『嘘をつくな!!』
「嘘などついてはおりませんわ。わたくしは何もしておりません。原因は貴方自身にありますわ、ナスラー枢機卿」
『ふざけたことを……!』
「本当ですわよ。ねぇ、ナスラー枢機卿。どうして騎乗士が8メートル程度しかないのかご存知? どうしてその機体が、最初から合体した状態ではなく、普段は分離した状態で設計されたのか、ご存知かしら?」
『何……?』
「とても簡単な話ですわ。自重に耐えられないからです。時間を稼げば貴方は自滅する。わざわざ真面目に戦う必要すらありませんわ」
『つーか馬鹿っスよね、アンタ。なんでそんなの作らせたんスか。しかも一人乗りだし。合一剣モードはメインパイロット以外の全員で、機体各部のバーニアを微調整し続けて機体にかかる負担を分散させなきゃすぐにぶっ壊れるっスよ』
そう、操縦者全員の息があっていなければ使えたものではない機体だ。だから通常ルートでは解禁されないのだ。だから逆ハーレムルート限定の必殺技なのだ。
……今更だけど、悪い意味でみんなの心が一つになっていないと使えない、汚いゲッタ○ロボだなこれ。
「プラズマ・スキンを使ったのも悪手でしたわね。機体を守るという点では優秀な機能ですが、プラズマそのものが機体を蝕んでいきます。全身に纏えば、当然関節にかかる負担も増大しますわ」
守護薔薇にもプラズマ・スキンはあるが、それは飛翔魔爪だけに限られる。だってあれ、扱いとしては消耗品だしな。壊れたら新しいのに付け替えればいい。つーかロケットパンチの類は予備があって当然だし。
「さぁ、覚悟はよろしくて? クライマックスの時間ですわ!」




