マリア・フォン・ゴルディナー大勝利! 希望の未来へレディー・ゴー!!! 7
『マ、マリアセンパァアアイ!!!』
コクピットを剣で貫かれ、薔薇獅子が爆散するのを見て、リアは思わず叫んでした。
『アリスセンパイ、マリアセンパイが!!』
『リアちゃん、落ち着いて』
薔薇獅子が撃墜されたとしても、戦闘が終わったわけではない。爆発に気を取られて隙だらけの始硬剣・束に接近し、切りつけようとする敵機を、近付ききる前に不知恐怖が蹴り飛ばした。
『集中しろ、ヴィネリア王女! まだ戦闘中だぞ!』
『で、でも、マリアセンパイが……』
『あー……、あれは、大丈夫だ』
『リギア様も見えていたんですね』
『大丈夫って何スか!? ていうか二人ともマリアセンパイが死んだのに落ち着き過ぎじゃないっスか!?』
『いや、だって、なぁ?』
『ええっと、リアちゃん? マリア様、死んでないよ?』
『はい? え、だって……。え?』
『そうか、王女はマリアのあれを見るのは初めてだったな』
『どうやったら、あんなこと実行しようと考えるんですかね……。あたしの主と言えど、そこは本当に理解不能と言うか』
『俺、時おり思うんだよ。あいつ、死ぬ時は戦場で戦死とかじゃなくって、ベッドの上で子供や孫たちに囲まれながら大往生する以外にイメージ出来ないなって』
『あぁー。分かります分かります』
『ちょっと、なんなんスか! 二人だけで分かりあってないで、ウチにも分かるように説明するっスよ!』
リアに不満を言われたアリスとリギアは、口をそろえてこう言った。見てれば分かる、と。
●
『ははははははは! はーっはっはっは! やった、やったぞ!! ついにあのマリア・フォン・ゴルディナーを! この私が!!』
薔薇獅子から生じた爆炎を前にして、エルバが高笑いを続けていた。まだ戦闘は終わっていない。それは分かっているものの、この喜びは抑えられるものではなかった。
たったの三発。わずか三発の砲撃だけで、己が切り札であった超巨大騎乗士、アードラーティタンを屠られたことを思い出す。あの瞬間は今でも夢に見る。つい昨晩も見た。まさしく悪夢だった。だが、今この瞬間、あの全身に汗をかきながら飛び起きる感覚からは解き放たれたのだと確信していた。
『エルバ君! 気をつけろ、まだ終わっていない!』
通信機からは指揮官機、カヴァーランジェからの声が聞こえてくる。
「ああ、分かっているよ、エドワード先生。残りの連中も一人残らず殺してやらないとなぁ……」
『違う! そうではなく、マリア・フォン・ゴルディナーはまだ』
「あ?」
エドワードの忠告を、エルバは最後まで聞くことはなかった。爆炎の中から突如として現れた、4つの爪を持つ巨大な構造体に機体を掴まれ、
「は?」
コクピットの真正面という超至近距離から、4本の爪の根元にある大出力ビーム砲を接射されたからだ。
痛みは、感じなかった。痛覚どころか、自分が死んだのだという自覚すらなく、エルバ・ディア・グリプスは、肉片の一つすら残さず、この世界から消滅した。
機体が爆散する。薔薇獅子を貫いた大剣はどこかへと吹き飛んでいく。エルバを屠った機体、4本腕の赤い蛸のような外見をした、超巨大ミサイルの中から飛んできた怪物からは、
『うふっ、うふふふふふ……!』
女性の笑い声が、漏れ聞こえてきた。
●
『エ……、エルバ・グリプスー!!!』
エリザベートの叫びを聞きながら、
『オッホッホッホホホ、オーッホッホッホ!!! まったく、口を開けば死ねか殺すしか言えないなんて、王族としての教育を受けたのでしたら、もう少し教養のある所を見せて欲しいものですわね』
俺はついにこらえきれなくなり、新型機、守護薔薇の操縦席で高笑いをした。
『どうやら一手足りなかったようですわねぇ~、エリザベート・ド・ペイジヴォントぉ? 勝利の女神に見放されたのかしらぁ~?』
いや、むしろ俺が勝利の女神っつーか? この世界の創造主だしよぉ? 創造物に殺されない運命ってやつぅ~?
生意気なんだよぉ……。俺が作ったモノが俺を殺そうとするなんてなぁ~~~。
―――先ほどまで死にそうな顔で助けを求めていたのに、めっちゃ調子に乗ってますわね。
はははははは! 調子にも乗るってもんよ! いいかマリア、この世界の不文律を一つ教えてやる! 後継機への乗換回はなぁ! 無双するってお約束があるんだよぉ!! このピンチは切り抜けたも同然ってやつだ!
何が起こったのか、もうお分かりだろう。薔薇獅子の操縦席に青の大剣が突き刺さる寸前、俺は通信機を頼りに飛んできた後継機、守護薔薇へと飛び移ったのだ!
《感想:飛び移ったというか、普通に飛距離が足りず、落下死しそうになりましたよね。乗換回で落下死することってあるんですか?》
いや、俺が知る限りではないな……。乗換回どころか平時に車で基地内を移動中、量産機に踏みつぶされそうになったりとかなら覚えがあるが。
《感想:勘弁してほしいですね……。突然「ドライコイン、着地は任せた!」とか言われましても、当機は非戦闘用なんで、一瞬たりともこの世界に本体を出現させたくはないんですよ。流れ弾の一発で破壊されかねません》
―――突然守護薔薇の表面から黒い機体が出てきて、一体何事かと思いましたわ。あれがドライコインさんですの?
《肯定:ミス・マリアは当機を視認するのは初めてでしたね》
そういや他の連中に見られてねえだろうな。さすがにお前のことはなんて説明したらいいか分からんぞ。
《感想:その点はご安心ください。当機を始めとして機械仕掛けの神は救世世界への出現時、機体周辺を結界で覆います。結界の外側からでは我々の存在を認識することは出来ません》
―――そう言えば、何やら一瞬、聞いたことのない音楽が聞こえましたわね。
マジかよ。風呂が覗き放題じゃねえか。
《感想:覗きませんよ。機械仕掛けの神は世界にとっては異物なので、存在を検知すると何らかの手段で排除しようとして来るのです。ですので、音、世界に存在する事象で機体全体を覆い隠し、ついでに少し不思議な力で結界外からは視認も出来ないようにしてあります》
そこのSFパワーの説明はねえのかよ。
《感想:説明したところで、マスターの方に理解するだけの下地がありませんので》
そうかい。さて、それじゃあそろそろ、この戦いを終わらせるかね。
守護薔薇を変形させる。というのも、この機体は可変機なのだ。変形方法の説明が面倒なのでぶっちゃけよう。殆どイ○ジスガ○ダムの変形方法と一緒だ。パク、もとい参考にさせてもらった。
分からん奴はググってくれ。
《感想:あの、マスター。このレポートの送信先はそういうの見れない環境なんで、そういう描写は控えてもらえると……》
そう言われてもこれ文字で説明するの無理があるだろ。実物見てもらった方がはええって。
《感想:それについては同意します。何をどうしたらこんな変形方法を思い付くんでしょうか》
それな。そういや思い出すなぁ。放送当時、どんな変形してるのか映像見ただけじゃ全ッ然分かんねえの。プラモ組んでやっと理解できたぜ。そういや、イ○ジスのRG出るのはまだですかねバ○ダイさん。いや、仮に出たとしても俺はもう手に入れることは出来ないわけだが……。
じゃ、ちょっとわかりにくいけど説明しますか。
簡単に言えば、長座体前屈伸だ。人型形態から、両手両足を前方にまとめることで高速移動形態へと変形している。ただ、これだと腕側の長さが脚側に合わないので、コクピットがある胴体正面部、それに頭部を背面スラスターユニットにくっついている形で取り外し、変形状態の後方に配置。残った腰から腕につながるまでの部分を肩の延長として長さを合わせているってわけよ。ついでに腰の横から伸ばしているスカート上の装甲。これを回転させて、後ろ側をがばっと覆って完成。ちなみにイ○ジスガ○ダム同様、変形状態での腕と脚の根元にある部分からは、大出力のビームだって撃てる。さっきエルバにぶち込んだのもこれだ。
歴史上初の可変機の構造じゃねえだろ!! もっと簡単なところからトライさせろや!!
《感想:設計した本人が何言ってるんですか》
いや待て。ちょっと言い訳させて欲しい。俺だって最初からこんな奇天烈変形機体を作ろうとしたわけじゃないんだ。なんというか、搭載する機能の構造的な問題でこうならざるを得なかったっていうか、そう、不可抗力……!
ともあれ人型形態へと変形完了! 色々と解説していたが、実際の変形にかかる時間は僅か一瞬であることをご了承ください。
『な、なんて大きさ……!?』
エリザベートがビビってるビビってる。ふふふ、それもそうだろう。この守護薔薇、人型の全高は実に14メートルに達する。エリザベートが乗る偽始硬剣からすれば、実に2倍の大きさだ。
意図的にこんなサイズにしたわけではない。搭載する動力源と試験したい機構の関係で、どんどんデカくなってしまったというか……。
腕の内臓兵器からビームソードを展開する。30メートルくらいあるなこれ……。というのも雌型マリウス・ジェネレーターを腕に内蔵、つまりジェネレーター直結型のビームソードだからだ。いや想像よりでけえなこれ。とりあえず雑に振るえば、近くにいた雑魚敵が3機纏めて両断された。
『いけない……! その機体から離れて! 密集も避けなさい!』
エリザベートの指示通り、敵機は守護薔薇から離れ、さらに機体同士でも間隔を広める。
そのおかげで、視線が通った。指揮官機である緑の機体に向け、指先を向ける。指差し確認、ヨシ!
『貴方ですわね、全体を指揮しておられるのは』
いかにも気付いておりますわよって感じで言う。俺は既に戦いに勝った後のことを考えているのだ。ここでこう言っておけば、突然緑を狙った言い訳が立つからな。
そして、肘から先、緑を指差した状態で腕が飛んだ。有線式ロケットパンチ。その名も飛翔魔爪!
緑が逃げようとする。動きから困惑しているのが伝わる。そりゃそうだろうな。俺のいた世界じゃロケットパンチなんて一般的な知識だが、この世界には存在しなかった概念だからなぁ!
逃げたところで無駄無駄ァ! なんのための有線式だと思ってるんだ!
撃ち出した飛翔魔爪が、4つのアポジモーターを駆使して軌道を変えながら緑を追尾する。ついでに搭載されたウェポンコンテナからマイクロミサイルをばら撒いて、近くにいる雑魚敵に至近距離で発射してやる。最初はフレアで誘導されたが、この距離じゃあ逸らすことは出来やしない。
さらには指揮官機を守るために、雑魚敵が緑との間に割り込んできた。立派な心意気だ。ビームソードを展開して真っ二つにしてやろう。
わずか一本の飛翔魔爪が飛んだだけで、その射出線上にいる敵部隊が面白いように瓦解していく。
『ほらほら、いつまで逃げますの!? 一人前の男なら、レディの手を取るくらいの甲斐性を見せてはいかがかしら!?』
緑が逃げるのをやめ、ビームソードを取り出した。あの機体は合体機構の構造上の問題で、戦闘能力があまり高くない。それは移動速度や機動力も同様だ。そのことを自覚しているから悟ったのだろう。このままでは、遅かれ早かれ追いつかれるだけだと。
飛翔魔爪と緑の距離が急速に狭まる。緑が腕を振り上げ、飛翔魔爪から延びるビームソードを切り払おうとする。
はい、じゃあ激突直前にこっちはビームソードを消しまーす。するとどうなるかって? 簡単だ。
緑が、ビームソードを空振った。
―――せ、性格が悪い……。
やかましいわ。戦いの駆け引きだよ駆け引き。
がら空きとなった胴体に、プラズマを纏った指先が激突する。この機体、合体時に開きになるせいで、他の5機と比べても格段に装甲が薄い。その上、守護薔薇の指先は、打突武器としても使えるように先端部を鋭く成形してある。だから、飛翔魔爪は簡単に緑の胴体へと突き刺さった。
『げぼごっ……!』
お、声が聞こえる。激突で回路がおかしくなったか、衝撃で誤操作したか。もしくは接触しているから声が聞こえるようになったのかな? 守護薔薇は騎乗士の技術だけではなく、マキャヴェリーのものも使って開発されている。俺も全部の仕様を把握しているわけではないので、同じマキャヴェリー同士で接触回線が使えるのかも知れない。
まぁ、今はどうでもいいや。指先が突き刺さった状態で、再び腕からビームソードを展開する。ビーム刃は緑を簡単に貫通し、さらに背中に取り付けられたフライトユニットも破壊した。そのまま重力に従い、落下し、途中で爆散した。
『エドワード先生ぇーーー!!!』
エリザベートの叫びを聞きながら、ワイヤーを巻き取って飛翔魔爪を回収する。
『オーッホッホッホ! これで今までのようには行きませんわよ!』
具体的に言えば指揮能力を持つパイロットが撃墜されたことで、敵軍全体から命中率と回避率の30%アップ効果が消滅だ!
《感想:数字が具体的過ぎますね》
そういう能力だからなぁ。この効果が強力なせいで、指揮能力以外のパイロット能力も機体も弱く調整されたんだよな。おかげで攻撃出来るようになるまでは大変だったが、殺しやすくて助かったよ。いや、苦労した分で帳消しか?
『あら?』
戻ってきた腕、その指先を見れば、赤黒い液体でベットリと濡れていた。うえ~ばっちぃ~。
『いやですわ。新品の機体が汚れてしまいました』
指を振って液体を飛ばした。
《報告:右上方、及び左下方から敵機接近》
ほいほい。どっちも色付きじゃない雑魚敵か。
左足を部分的に変形させ、収納された『手』を展開する。そのまま、右腕と左脚の手で、敵機の胴体を掴み取った。
雌型騎操剣なんて5メートル程度の大きさしかないのだ。3倍もの体格差があれば、胴を掴むくらいならギリギリ可能だ。掴んだ機体の胴から、金属が軋む不穏な音がする。
『ひっ、や、やめ』『か、母さ』
何か聞こえたが、気にせず握り潰し、爆発する前に放り投げた。マリウス・ジェネレーターはサイズの割に、妙に爆発の威力が高いんだよな。
《感想:残骸から解析されないように、爆薬を仕込んでいるのかも知れませんね。不正に分解しようとした場合でも、物理的に防ぐことが出来ますし》
やっぱ宗教ってクズだわ。
《感想:※マスター個人の感想です》
俺一人に責任を押し付けようとするんじゃあない! ドライコ院!
流行りのもう遅い追放もの短編を思いつくまま書いてみたので、こちらもどうぞ
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