一つ目の終わりと、二つ目の始まり
厳かに、教会の鐘が鳴り響く。
七の稲光戦争からあれよあれよと日々は過ぎ、今は桜が咲き始める三月末だ。
この辺、日本より寒冷なんで、桜が満開になる時期が日本より半月ほどずれ込むんだなぁ。
まぁ、戦後の事後処理やらなんやらで、お排泄物忙しい日々を送っていたというわけよ。
なので、この日を迎えるのが随分と遅くなってしまった。
今日は、マリア・フォン・ゴルディナー公爵令嬢と、リギア・リントヴルム第一王子。その二人の、婚約式だ。
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赤い絨毯の上を、アリスと共に歩いていく。
目指す先は、聖書台に立つニオスと、一足先にたどり着き、俺たちを待っているリギアの元へだ。
チャペルの座席には、俺とリギアに関係する人々が座っている。
マリアの両親に、リギアの両親、つまり国王陛下と王妃殿下。
そしてその後ろには、義弟ニコルに、アリスの両親や兄弟たち。まだ年幼いリギアの弟の姿も見える。
カタリナに、リリーナ。レオニスにヴァイト、そしてグレイ。
さらには、グリプス公国の君主、フラウ・フォウ・グリプス。
グリプス王国はあの後、リントヴルムの属国となったのだ。なので、グリプスの女王を意味するディー・グリプスから、グリプスの領地を修める貴族を意味するフォウ・グリプスに名が改められている。
ほかにも大勢いるのだが、さすがに全部は分からん。
王族の婚約式ということなので、警備の都合から相当に厳選されているはずなのだが、それでも結構な数だ。
多くの人々に見守られながら、俺たちはリギアの元へとたどり着いた。
アリスが斜め後ろへと下がり、待機する。この辺りは父親がエスコートした場合と、キャバリエがエスコートした場合の違いだなぁ。
「これより、リントヴルム王国第一王子、リギア・リントヴルム。及び、ゴルディナー公爵家長女、マリア・フォン・ゴルディナーの婚約式を始めます」
そして、ニオスの言葉で、今度こそ婚約式が始まったのであった。
……Fin.
●
……。
…………。
………………。
《感想:いや、勝手に終わらせないでください。『クロスマン』の件とか、何も解決していませんよ》
ですよねー。
ちなみに『クロスマン』というのは、元グリプス王都で遭遇したビーム兵器を使ってきた未確認機につけた名前だ。
逃げる時に十字架に変形したので、とりあえずそう呼ぶようになった。
―――で、そろそろ思い出せましたの?
いや、それが全く。
どこかで見たことはある。それは間違いないと思うんだが。
《感想:マスターが遊んだことがあるゲームからでしょうか》
多分だけど、違うかなー。
会社で見た気がするんだよなー。
なんというか、歌を思い出せない感じに似ている。歌詞も曖昧で、ゲームかアニメかオープニングエンディングか、それとも劇中歌か、それすらも覚えていないのだが、その中のワンフレーズだけを覚えていて、それだけを頼りに何の歌だったか調べている感じ。
有り体に言えば、モヤモヤする。
「で、フラウはどうしてそんな気の抜けた顔になってるんですの」
考えても分からないな、と思った俺は、気分でも変えるかとばかりに、ぐったりとソファに体重をかけているフラウに声をかけた。
婚約式が終わった後、新婦準備室に戻ったところに、疲れた顔で押しかけてきたのだ。
「グリプスの方が大変になったとか?」
「いんや、あっちは相変わらず、びっくりするくらい平和よ」
さもありなん。
というのも、前王が楯突いた者たちを多数粛清しまくったらしいのだ。
加えて、前王の側に付いた者たちも、アードラーティタンの出現時に城から吹き飛ばされて落下死か、瓦礫に激突して殆どが死んだので、城勤めしていた貴族はほぼ全滅。
さらに、リントヴルムを侵略していた軍人連中についてだが、クリスマスイヴに宣戦布告が行われたことで、殆どの連中が不満を持っていたらしい。抵抗らしい抵抗もなく、すんなりと、マジで何事もなく、属国化が進んでいった。
「それでは、なんでそのように疲れておいでなのかしら」
「いやー、お姉様も見たでしょ、第二王子」
なんだ、ただの気疲れか。
フラウの言う第二王子とは、当然だがリギアの弟だ。もっとも、リギアは本物の王子ではないので血は繋がっていないが。
「アタシ、あの子と婚約するのよねー……」
なので、フラウはゴルディナー家の庇護から外れた今になっても、未だに俺のことを姉呼ばわりしている。
ちなみに件の第二王子だが、リギアの熱病騒ぎが落ち着いた後に生まれた子供なので、実はまだ4歳だったりする。
「まぁ、仕方ありませんわよ。グリプスのいざこざの責任は、誰かが取らねばなりません」
「いや、それはまぁ納得してるんだけどさ。12歳差よ、12歳差」
「何も問題ないじゃありませんか!」
と、力強く言い切ったのはもちろんリリーナだ。フラウが新婦準備室を訪れた際、リリーナとカタリナも一緒に来ていたのだ。
「まぁ、リリーナさんの言う通りですわね。その程度の年の差、貴族間の婚姻ではよくあることですわ」
そういえば、
「アリスの婚約者も探さないといけませんわね」
「え、あたしのですか?」
思ってもいなかったことを言われた、という顔で、アリスが返事をした。
「要りませんか?」
「う~ん」
と、アリスは少しばかり考え、
「婚約者は要らないけど、マリア様のお子様のお側には、あたしの子供がいて欲しいですね。種だけ貰ったりできないでしょうか」
なかなか凄いことを言っている気もするが、キャバリエは既に個人に忠誠を誓った身。つまりどこかの家に嫁入りすることはなく、逆に婿養子を迎え入れることになる。
……未来の王妃のキャバリエ、その夫ともなると、引く手あまたなのは間違いないな。
さすがは乙女ゲームの主人公役。俺のキャバリエになったからと言って、モテ期に陰りはないらしい。
まぁ、俺がアリスをキャバリエにしたのは、俺の破滅を防ぐためという目的もある。
婚約式が為されたことで、俺が婚約破棄される可能性は完全についえた。
さらに、俺が亡命することになるグリプス王国は既に属国となり、亡命のきっかけとなる戦争も既に終わっている。
なので、俺はもう安全だ。さすがに、ここから一発逆転ホームランで追放されることはありえないだろ。
アリスには乙女ゲームの主人公よろしく、適当に攻略対象なりその他モブなりと愛を育んでくれてもいいかなとは思う。
ただしリギアを除く。
いや、種馬としてだけならリギアが相手でもいいかも知れんが。ふさわしい相手が見つからなかった場合に備えて、検討はしておこう。
女五人寄れば姦し。
《報告:数が足りていないので適当にルビで増やしておきました》
おっ、ナイスゥ。
皆との会話を楽しみながら、俺は来年度のアリスの活躍に、思いをはせるのだった。
●
翌日、俺はリギアと共に、学園長室へと呼び出された。
ちなみにだが、ここの学園長はグリプス国王の弟だ。
呼び出された要件は聞いていないが、俺が王族の一員となるのが確定したことで、何か話したいことがあるのかもしれない。
ということでアリスを連れ、途中でリギアと合流。学園長室の扉を、リギアがノックする。
「リギアです。マリアと、彼女のキャバリエも一緒です」
入ってくれ、と言う言葉が、扉越しに聞こえた。
「リギア君。マリア君。まずは婚約おめでとう」
部屋に入った途端、椅子に座るよう促されもせず、早々にそう言われた。
「ありがとうございます。学園長。……早速ですが、わたくしたちにどのようなご用件でしょうか?」
「うむ、それなのだが……。君たちは、ロンゴミニアド王国を知っているかね?」
「たしか、大陸の西、その先にある島国ですわよね」
俺の故郷では、こう言った方が早いだろう。グレートブリテン王国。
つまりは、イギリスだ。
「うむ。そこの第三王女から、ここ、リントヴルム王立貴族学園に、留学したいという連絡があった。……正確には、」
学園長はそこで言葉を区切り、俺の顔を見る。
「マリア・フォン・ゴルディナー。君の元で、騎乗士の開発について学びたい、と」
「……王女が、騎乗士について? その、それは王女の配下の技術者たちが、と言う言葉を省いているとかではなく?」
「いや、王女自ら、という話だ。我が国とロンゴミニアドは、途中で小国を多数挟むから交流は乏しいが、どうにも、君に負けず劣らずおてんばらしい」
それはつまり、俺と同じく騎乗士の開発に積極的ということだろうか。
うーん。しかし、ロンゴミニアドの王女か。
ぶっちゃけ、グリプスとの戦争に備えた準備ばかりをしてきたので、グリプス以外の国が今どうなっているのかまでは俺もよく分かってないんだよね。
原作ゲーム『騎乗士の胸に抱きしめて』でも、部隊となるのは母国リントヴルムと、隣国グリプスだけだ。
それ以外の国については、設定すら存在しない。
なので俺も、他の国については正直なところ、全くの無知というわけだ。
ところで、さっきの学園長の言葉に、一つ聞き流せない言葉があったんだが。
「お言葉ですが学園長。わたくし、これでも淑女で通っておりますのよ」
「婚約者の前で取り繕いたいのは分からないでもないが、君の冗談に付き合っていられるほど、こちらも余裕があるわけではないのだよ」
「ズケズケと言ってくれますわね……。まぁ、お話は分かりましたわ。それで、その第三王女とやらは、いつこちらに来られますの?」
「もう来ている」
「……はい?」
「はいりたまえ」
その言葉に、俺たちが使った扉とは別の、部屋の奥にある扉が開き、この学園の制服に身を包む、一人の少女が姿を現した。
体躯は小さい。
金の髪に青い瞳。王女な割に髪は短い。ショートボブってやつだ。
そして、アリスに負けず劣らずのつるペタっぷり。
「なんで今あたしの胸を見たんですか?」
そしてその頃には、俺はこの少女の名前を思い出していた。
「初めまして、ヴィネリア・ロンゴミニアドっス! リアって呼んでくれたら嬉しいっス!!」
その名前は、俺の記憶と一部が異なっていた。具体的には家名が。すなわち、国の名前が。
そして、『ヴィネリア』と言う名前は、俺が作った五つの乙女ゲーム、その三番目の作品『貫いて、マキャヴェリズム』の主人公の名前なのだ。
誰だよ!! この世界が『騎乗士の胸に抱きしめて』をベースにした世界だって言ったやつ!!!
《返答:マスターですよ》
もしかしなくても他のゲームが混ざってるじゃねえか!!!
ていうかグリプスの動きがやたらと早くなったのって絶対これが原因だろ!!!
はい! というわけでね、1年目が無事終了でございます。
気付けば思い付きで書き始めてから、もう三ヶ月も経ってました。光陰矢の如し。
筆の乗るまま気の向くまま、駄文乱文を書き連ねてきましたが、ここまで呼んでくださりありがとうございました。
2年目はオチは決めてるけど途中の話を全く思いついていないので、途中途中で間が開くかもですが、そんな時はチャンネルは変えてもいいけどブックマークはしたままでお待ちください。
ついでに評価ポイント入れてくれるとドュッフフフ言いながら作者が喜びます。




