序章 ―北軍の進軍 5―
降下の衝撃でジープの板バネが弾ける。アフソーバの機能を失ったジープは窪地にハンドルをとられ、勢い良く横転した。
ジープに乗車していた橋本や班員は、勢いで放り出された…辺りには班員達のうめき声が聞こえる。
橋本は横転した車両の陰に入ると班員に呼び掛けた。
「動ける者はいるか?!
いるならそのまま腹這いで車両の陰に入れ!!」
橋本は続けて班員に声を掛ける。
「兼村、小橋…状況はどうか?」
何処からともなく声がする…
「橋本二曹!バイクはダメです…着地の時にフロントフォークがいっちまった…後…足も…」
橋本は愕然とした…班に配備された全ての機動力が着地と同時に瓦解した…これからどうする…橋本は唇を噛み締めながら呟いた…敵勢力は不明…機動力はない…もしかしたら既に包囲されてるやもしない…
その時、無線からのコールが入った。
本来なら展開後、座標と展開状況を連絡しなければいけない…小隊本部が不信に思ったか…
橋本は車両から放り出された無線機を引き寄せる通話のスイッチを入れる。
「ブラボー!ブラボー!こちらガンマ…送れ!」
「…こちらブラボー!ガンマ…状況知らせ!」
「…こちらガンマ…敵の奇襲にあい、現在足止めされている…アルファはロスト!繰り返す…アルファはロスト!」
「…状況了解…ガンマ、火力支援を行う敵勢力の座標知らせ!」
「了解!座標2785/1825…繰り返す2785/1825!」
「了解!これより3分後に野戦特火による火力支援を行う!繰り返す…3分後に火力支援を行う!」
そして…橋本の告げた座標に砲弾の雨が降り頻った…砲撃の轟音が山間部に轟き、着弾によって辺りに土煙が舞い上がっている視界は0だ…