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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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序章 ―北軍の進軍 3―

 程無くして、橋本は車中に居た。

丸山の言った通り、乗車しているのは数人…皆、私服のままだ。


 木製の座席を透し、振動が腰に響く…ホロの隙間風が妙に冷たい。


 衛門を抜けるとグランドに普段はないチヌークが二機停められている。


 橋本は不安を感じながらも営内に急いだ。


 営舎の廊下は慌ただしい、武器庫は開放され…所々に隊員が腰を落とし小銃の手入れをしている。


 橋本は人波を掻き分け、営内に入った。


 見慣れた営内は、妙に殺気立っている…帽子のつばに金刺繍の入ったのを目深に被った男が橋本を見付、呼んでいる。


「橋本二曹!こっちだ!」


 橋本は敬礼をすると男の元に駆け寄る。


「小隊長!状況は?」


 小隊長と呼ばれる男は地図を展げると口を開いた…


「現時点で北は本土に上陸したとの事だ!

詳細は不明…半島で軍事境界線を挟んで韓国と戦闘中、米軍も海軍を軸に日本海に展開しちゃいるが…中国が領海だ何だかんだで当てに出来ん。

現在は、新潟方面で第2普連と第30普連が水際で小規模の戦闘を行っている…橋本…事態は思っていた以上だよ。」


 橋本は顔から血の気が引いていくのを感じた。爪先が冷たい…小隊長は話しを続ける。


「富士の機甲科も動いている…習志野の空艇も動いたらしい…我が情報小隊はすでに飯田三曹の二班がチヌークで先行、橋本、千葉の両名は班員が揃い次第、先発に続いてくれ!」


 橋本は唇を噛み締めて復唱した…


 いつもなら片付けられているロッカールームには宛先の書かれた段ボールが積まれている…もしもの時、親元に送られる隊員の遺品だ。


 橋本は迷彩に袖を通し、戦闘靴の紐を結ぶ…コレクションのナイフからサスペンダーに一本、左足首に一本…そして、腰に刃渡りのあるグルカを身に付け、予備も背納と雑納に数本づつ入れる。


 橋本は私物と以前に認めておいた遺書を段ボールに無造作に放り込む…空になったロッカーを静かに祈る様に閉じた。


 普段は抜かない鞘から抜き、刀身を見つめる。

ダマスカス鋼が鈍く光る…ダマスカスを弾帯に止、

備えてあった背納を担ぎ、隊舎の廊下を進む。

武器庫から自分の小銃と弾薬を受け取り、営内班で改めて予備弾倉を弾帯にある予備弾入れに納める。

 最後に小銃に弾倉を入れ、装填はせず安全装置にして廊下に再び出る。歩く度に小銃や身に付けた装備からカチャカチャと小気味良い音を奏で、チヌークの待つグランドに向かう…

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