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終末都市の塵芥  作者: Anzsake
ジニア:セオウ/ゼロkgの重り
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ここで生きてる

補給支援砲台のさらに後ろ、貨車に載ったベティをロープで固定する。


他の回収員がジロジロとエヴェリンを見るのは、この際仕方ない。


戦車の中であり、分厚い軍服を着ているからか、余計に艶やかに見られているが、エヴェリン本人はあまり気にしていないようだ。

ルンクの反応が若々しく面白いので放置する。


「カリン、さっきから全然平気な顔しててすげぇな。あの姉ちゃん見ても何とも思わねぇの?」


「え?うん」


カリンの顔は、性的関心云々よりも、もっと別のことを考えているような顔だ。


突如鳴り響く轟音に座っていた者も立ち上がる。

聞こえた東側を見ると、遠くのビルの隙間から煙が上がっているのが見える。


「おい…なんだあれ…」


誰かがそうこぼした。生ぬるい風が顔を吹き付ける。

眉ひとつ動かさずにユウトが呟く。


「核ではない」


「…当たり前だ!そんなもの」


回収員たちがザワついている。


「旧市街を破壊しに来たのか?」

「人を巻き込んだらどうするんだ」

「俺たちが拾うものまで壊されたら」


そんな囁きが聞こえてくる。そのざわつきを掻き消すように、警笛が鳴らされて皆静かになった。帰還の合図だ。




コミュニティに戻り、ベティを下ろす。

ユウトは、ここのリーダーであるマリーに会いに行った。


タネと帰ろうとすると、肩を掴まれる。ジニアがタネとユユを反対の手で掴んでいる。


その後ろに居るカリンは、何だかキョロキョロと周りを見ている。


「お前は治療を受けに行け」


「…へい」




診察台に寝転がるのは何時ぶりだろうか。応急処置だった傷口をキキョウが縫い合わせている。

少し気恥しい。


「これだけ傷があるのに、倒れた原因が過労とは」


「慣れない戦闘をしすぎたかな」


「ベゴニアさんが1番慣れてますよ」


「これからは、そういう事もしなくていいかもな」


「…だといいですね」


僕の思い描いていた終末は、もっと何も無くて、ただ自分と向き合える時間だけが無限に続くのだと思っていた。


やりたいことをやって、行きたい所に行けて。

仲良くなれた奴らと、好き勝手やって死んでいく。


今、確かに幸せなのだろう。十分な食料があり、こうして怪我の手当も出来る。


それなのに僕らは、その作り上げた安寧と、人の為に生きることに囚われている。


「キキョウは、何もしなくていいなら何する?」


「…それは、ベゴニアさんも助けなくていいと?」


「そうだね」


しばらく悩んだあと、キキョウはメガネを外し、拭きながら答える。


「どこかにある、最高のロケーションで死ぬ」


「そんなとこあるかな」


「どうかな。それを作るのも悪くないかも」


綺麗にしたメガネをかけ直し、いつもの柔らかい目に戻った。


「しばらくは安静にしててくださいね」


「わかった」




医療用の建物のベッドに寝転がって外に顔を向ける。

すっかり夏の色をした野山と青空をぼんやりと見ていると、横にリズが来た。


医療用のエプロンを着ていて、様になっている。

キキョウ曰く、女性看護師として人気らしい。


優しく微笑むリズが横に座るので、僕もベッドに座る。


「ベゴニアさんも人間なんだって安心しました」


人間。


そういえば、カリンの目。あれはリズのケラ喰いに認知されにくかったことと関係あるのだろうか?

"あれは化け物だ"と言い放ったユウトの顔を思い出す。


「これまで、他より強かっただけだと思い知ったよ。世界は広い」


「私も、ここに来て、旧市街に行って、色んな人に会って…小さい頃は分からなかった、私の知らない明日を見るのが、今は楽しみなんです」


「…カリンから聞いたんだが、リズは旧市街の産まれなのか?」


リズは、うーんと声を漏らして悩む。


「それは…そうです。でもごめんなさい。あまり覚えていないというか…そんなに色んな所には行ってないんです」


「そうか。いや、大丈夫だ」


「でも…」


リズは少し言いにくそうな顔をしている。


「小さい頃から、お前は人とは違うって、言われて育ってきました。何が違うのか分かりませんでしたけど…私、ケラ喰い?から攻撃されないんですよね?」


「それかもしれないと?」


リズは小さく頷き、前で小さく組んでいる指の位置を変える。


「それってつまり…私は、タネちゃんとかと関係がある…って事ですよね?」


カリンのことを言うべきか。頭で巡らせる。


「かも、しれないな。昔の事を聞いてすまない」


「そんな、気にしないでください。私が役に立てるのなら」


前で手を振って笑うリズを見て、あの時より強くなったなと、おっさんみたいな事を考えてしまう。


そういえば、あの落人の籠。彼らも逞しく生きているのだろうか。

そうであると信じたい。機会があれば、また立ち寄ろう。


「そういえば、カリンはちゃんとやれていますか?」


「…あぁ、先の遠征も活躍していた。あいつはここぞでちゃんと踏み出せる。そういう所は、2人とも同じだな」


「…何だか、嬉しいです」


リズの顔を見ると、カリンの事はやっぱり言えない。

カリンの事も、リズの事も、分からないことはまだまだある。


でも、今焦って言う事でもないだろう。2人なら、これからも支え合って生きていけるはずだ。


こうして、成長したリズと話しているとそう感じる。

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