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終末都市の塵芥  作者: Anzsake
サルビア:ケイフ/それでも前へ
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因縁の再開

「ベェ」


建物の上に登っていたタネが降りてきて声をかけられる。顔を見て、良い報告でない事はすぐに分かった。


「来る」


「来る?…何が?」


タネは南東に顔を向けた。そちらを見るが建物が邪魔で遠くは見えない。


斧を抜く。横にいたカリンもメイスを取り出した。



音がない。虫の音もしない。ただ静かに風が吹いている。


「……上か」


影が通り見上げる。飛んできたしっぽの突きを横に飛んで躱す。


地上に降りてきたそいつの顔には見覚えがあった。

カリンもシライシも顔色を変える。


長いしっぽに、背中に生えた5本の腕。本来6本だったが、以前タネが1つ切り落としたのだ。


「フュ…ジ……」


「こいつ…!」


シライシが話終わる前に5本個体がしっぽを全方位に振り回す。

カリンがメイスで受け止めて吹き飛ぶ。

トラックのボディを削り取り、後輪をパンクさせた。


「シライシ、カリン連れて退避しよう」


「他の人は?」


「こっちで何とかする」


「了解」


離れようとするシライシに5本個体がしっぽで攻撃しようとするが、それをタネが防ぐ。


禍々しい色をした背部腕が動く。タネに見慣れつつあるが、やはり腕の数が増えると化け物感は増す。


「ベゴニア!こいつは」


カワイの声に反応して背中を向けた5本個体にすかさず空気銃を発砲する。

近接主体の僕様に短くした短銃だ。


発砲音にピクリと反応し、背部腕で弾丸を止められた。

前よりも硬くなってる気がする。


「トラックは置いてく。逃げるぞ」


「次はどっか行くなよ」


「こいつからのアプローチ次第だな」


攻撃を捌きながらカワイと話す。トラックの荷台から一番最初に出てきたのは、予想に反してサルビアだった。


普通に歩いている。足の負傷をあまり感じないが、右腕の固定具がけが人の証だ。


5本個体がこちらに目もくれずサルビアに近づいた。弱い判定をしたのか。迂闊だ。


5本個体と目が合ったサルビアは一撃目を笑って躱し弓を取り出す。


5本個体の掴みを弓のリム上部に取り付けられた仕込みナイフで受け止める。


「ブク……」


「あら可愛い。ママはどこかな?」


"ママ"と言う言葉に一瞬反応を示したが、依然攻撃の姿勢は止めない。


サルビアが弓から手を離し、腰に付けた小さな矢筒から収納状態の矢を取り出して5本個体の脇腹に刺す。


それと同時にサルビアの左顎にしっぽが通る。血と音を立ててサルビアの頬が抉れる。


ダメージに反応した5本個体が後ろに下がる。

後ろに待機していたタネの攻撃を背部腕で受け止められて更に後ろに下がる。


「…ゆい、返せよ」


「一旦逃げるぞけが人」


「あとおな奴が戦わないから、おクが殺さなきゃ行けないんじゃんか」


サルビアの左顎が外れて、そちら側だけがだらしなく開いている。少し喋りにくそうだ。


ホルンがサルビアの左手を掴んで走る。バランスを崩しながらもサルビアはつられて走る。


「リズ?そこに居る?」


「……はい」


「合図するから飛び出して逃げて」


威嚇する5本個体は、やはりリズの事は眼中に無い。

詳しくは分からないが、使えるなら使おう。


少しずつトラックから離れる。タネに目配せをすると、タネが小さく頷く。


「いいぞ!リズ!」


そう声をかけて後ろに走り出す。背中に飛んでくるしっぽの攻撃はタネに防いでもらう。


リズがトラックから飛び出した次の瞬間、トラックに巻き込み攻撃が当たる。

やはりリズは眼中に無く、リズは離れたところで身を隠す。


「タネ、ありがとう」




建物を越えた先は廃校だった。校庭まで5本個体は追ってくる。タネか、僕か、どちらに執着しているのか。


「さて、僕にサルビアみたいな事ができるかな」


後ろに下がり斧を構えた時、横の校舎の壁面の違和感に気付いた。


大きな絵が描かれている。剥げや汚れの無い。比較的新しい壁画。

目を閉じた女の人が、空を見上げている。


慌てて正面を見たが、5本個体も壁画を見つめていた。

その後ろに人影。


乾いた散弾銃の音と共に、5本個体の胸部が大きく抉れる。

血が吹き飛び、倒れた5本個体の後ろには、右の口角だけを上げたサルビアが立っていた。




動かない5本個体に、サルビアがエアカートリッジの付いた爆破矢を刺そうとするのを手で抑える。


「あだ死んでないかおしれないじゃん」


短空気銃で5本個体の喉に一発撃つ。ビクリと動いたが、やはり動かない。


「これで死んだな」


「ケチ」


「死体をバラバラにして、またキキョウに怒られるのは御免だ」


「あいつ怒るんだ」


「そりゃあもう恐ろしい」


サルビアが壁画を見上げる。

壁画の女の人は、東を見ているよう設計されている。

午前中の陽射しが、女の人の顔を照らす。


走ってきたカリンが、壁画を見て立ち止まる。後ろからほかのメンバーも集まっては、全員が壁画を見上げた。


「…リズ?」


タネが壁画を見てそう呟く。

まぁ、この中で1番似てるのはリズだと思う。


微かに、鼻歌が聞こえる。校舎の中からだ。


「どんなやあい奴が居るのかな?」


「顎外れてるし喋るな。お前の方がよほどヤバい」


「ひdおい」


ホルンに座らされたサルビアは、リズの応急処置を受ける。


校舎の中に入る。

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