6.珍しい客(4)
そしてある日突然、また彼が来た。やはり同じマントで。そして同じように、棚を向いたまま止まっている。
「何かお探しですか?」
何か考えているような客には、少し様子を見てから、近づいていって声をかける。それはいつものこと。アッチェラードはいつもと同じ営業スマイルを浮かべている。だが、相手の返事を聞くまでの間、時間が止まったように長く感じられた。いつもと違う。
「え……」
その剣士は、なぜか照れ笑いを押し隠したように、にやっとして、まずアッチェラードの顔を見た。
何かこの客は変だ。普通の客なら、何か探しているのか聞くと、こちらの方を向きながら、顔を見るより先にまず話し出す。
この人は変な人なんじゃなかろうか、という可能性が頭をよぎったところで、
「いや~、それが……」
そう口ごもりながら、アッチェラードの方へ体ごと向き直り、わずかに首を傾げてアッチェラードを見下ろし、そのまま今度はその後方のカウンターへ視線を向けた。
それにつれて、アッチェラードも後ろを振り返る。いつも自分が座っているカウンターの向こうに、大きな絵が飾ってある。
「あの絵が気になってしまって」