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17.旅のしたく(8)

 ルステムルは、姫の説明に納得したようだった。


「そうでしたか。それにしても、明後日ご出発とはお早いことです。まだ昨日戻っていらしたばかりなのに、とんぼ帰りではありませんか」


「ええ、そうなのですが……。わたくしも父が倒れたと聞いて、急遽、予定を変更して王都へ戻って来ましたのに、何のことはない、ただの風邪だということでしたから、ご心配をおかけしたお詫びとご報告を兼ねて、早くヴィオラ伯とドルチア嬢にお伝えしなければと思いまして。ドルチア嬢のお誕生日のお祝いでしたし」


「そうですか……」


「ドルチア嬢はわたくしの親友ですの。毎年、お誕生日には一ヶ月はお城に滞在させていただくのです。せっかくルステムル殿がいらしているのに残念ですが……そうですね、帰りは二週間ほど後になるかもしれませんが、ルステムル殿はゆっくり王都見物なさってくださいね」


「残念です……。私もご同行させてはいただけないでしょうか」


「申し訳ないです。お忍びの旅でなければ一緒に来ていただいて、ドルチア姫とも仲良くなっていただけたのに。正式な旅ともなると、お伴の者も大勢行列になって引き連れて、とても大がかりなものになってしまいますでしょう? これはプライベートな、少しのお伴だけを連れたお忍びの旅なんですの。でも二週間後にわたくしが戻ってくるまで、ぜひ王城で待っていらしてくださいね。そうしまたら一緒にダンスを踊ったりしましょうね。ヴァルナ地方の歌も教えていただきたいわ」



 そう話しながら、フィオーナ姫はルステムル殿の腕を取って並んで通用門へ歩き、振り向かずに城内へ入っていった。その他の貴族や侍女たちも、ダルセニオンとエスプリにお辞儀をした後で姫の後を追って入って行く。


 全員が去ってしまった後で、ダルセニオンが発言する。


「やれやれ。息が詰まった。うっかりまずいことを言いそうで黙っているのは苦痛なものだな。しかし姫が来たのは余計だった」


 いや、あなたは黙っていて正解です。


「すまんね、ダルセニオン。門衛が呼びに来たときにちょうど授業中だったものだから。姫はあの性格だから来ずにはいられないだろう。しかしあのお付きの多さには辟易したね」


「あの、ルステムル様というのはヴァルナ地方の貴族様でしょうか?」


 姫も可愛らしいが、ルステムル殿も子犬のようで可愛らしい。姫の婚約者だろうか?


「ヴァルナ地方を治めているヴァルナ公爵の次男だよ。今回の事件の発端だな。本人には何の悪気もないしむしろ被害者なんだが」


 エスプリは周囲を見渡した。そして、王城前広場の真ん中へと移動する。


 密室で話せば誰に聞き耳を立てられているか分からないが、広い空間でなら逆に、近づいて来る者に対して警戒できるので内緒話ができるというものだ。


 だが、ダルセニオンは不満そうだ。


「アッチェラードは買い物があるから、話は後ですればよくないか」


 しかしエスプリが反論する。


「そんなこと言っても、ダルセニオンはアッチェラードにきちんと旅の目的も説明していないんだろう。そんなことでは旅に出るにも出られないよ」


 いや、そもそも、自分が旅に出るということすら聞いていないんですが……。


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