先手必勝
「それでは、私黒服めが。今回のゲーム『日めくりカレンダーゲーム』のルールをご説明いたします。ご使用する道具はおひとつ。この卓上に私がお出ししました。日めくりカレンダーでございます」
黒服は、テーブルの日めくりカレンダーを再度手にし、日付を皆に見せる。
「1枚目は今日の日付と同じく、11月22日でございます。無論。種も仕掛けも、落丁も乱丁も、ございません。最後の日付はもちろん12月31日」
黒服は、日めくりカレンダーの日付の束を、こちらにめくりあげる。
ぴんっと、一枚だけ指から離して、最後のページをひらひらと、皆に見せる。
当然のこと。12月31日。
そしてぱらぱらと、全ての日付をめくり、11月22日の面を再び皆に見せる。
その11月22日の面を上にして、日めくりカレンダーを再びテーブルの上に置く。
「ルールは、非常にシンプルでございます。この卓上に置いてあるカレンダー。その一番上の日付からめくっていただき、カレンダーから切り離していただきます。勝利条件はもちろん、勘の良いお二人でしたらお気づきかもしれません。姫様クリスマス争奪の勝負なのですから、クリスマスの日付を切り離し、手に入れた方の勝利でございます」
このゲーム必勝法があるっ!
俺のアルコールに侵されている頭の中に、火打石のスパーク。
21ゲームっ! さすが黒服。
No.1とNo.2を決めるゲームだからか?
だが、まずいっ。だとするとこのゲーム。
一瞬で決着がつく。思い出せ、確か……。
「黒服ちゃ〜ん」
「はっ、姫」
「それって〜、このカレンダー早びりびり選手権〜っ、てこと〜?」
「いえいえ、そのような野蛮な行為で決まるゲームではございません。日めくりカレンダーをめくる順番。先手後手がございます」
そうだ。先手後手どちらかの必勝。
つまりは先攻後攻の順番決めで決着。
時間がない、思い出せっ、考えつけっ。
この一年がこの一日で決まるっ。
頭の中、ライターのニッケルシルバーのリッドが。
鈍い蓋が開く音。そして、煌々と燃える、炎。
21ゲームっ!
二人のプレイヤーが互いに数字を「1」から順に数え上げていき、
「21」を言った方の負けのゲーム。
ただし一度に数えられる数字は3つまで。
「せんこ〜こ〜こ〜?」
「はい姫さま。まずは先攻。先手プレイヤーのターンでございます。先手ターン時、後手のプレイヤーはカレンダーに接触すること。また、先手プレイヤーがカレンダーをめくる行為の妨害など。暴力行為やそれに準ずる野蛮な行為は禁止させていただきます」
「こ〜こ〜の人はせんこ〜の人に暴力振るってもいいの?」
「ダメです。常識的に考えましょう。さて、先手プレイヤーは、カレンダーに触れ、カレンダーをめくることができます。ただ、禁止事項があります。」
「禁止事項〜?」
来たっ。
「制限事項。と呼んだ方が良いかもしれません。めくっていいカレンダーは、テーブルの上に置かれたカレンダーの、一番上の1枚目のみです。これを禁止せねば、いきなり日めくりカレンダーのクリスマスの日付を中抜き。めくり。切り取り。先手の勝利になってしまうからです」
「にゃるにゃる〜」
「二つ目の制限事項。カレンダーをめくる枚数は、1ターンに1枚から7枚まで。一週間にちなんだ。7枚までです。パスは、認められません」
一手7枚までのめくり。なら、
「にゃにゃにゃにゃ〜」
「めくり終わりましたら、ターンプレイヤーはターンの終了を宣言します。そして、後手プレイヤーが今ご説明しました。先手プレイヤーの役割を担い。カレンダーをめくります」
「にゃるホロ。それを繰り返してって〜。私の〜、姫のクリスマスの日付をめくった人が勝ち〜ってわけね〜」
「さようでございます。クリスマスの日付をめくった者が、姫様のクリスマスの本指名をいただくことができ、ホストクラブΔVのNo.1になるのです」
先手だ。
このゲーム。
先手必勝!
「んじゃ〜、先攻は〜、一番だから〜、No.1の唯我ね〜」
「姫の言うことがルールだ。んじゃ、僕から。No.1の僕が、先手で良いよね」
なっ、唯我。ふざっけんなっ。
「あれあれ? 統夜くぅん。先手が良かった?」
やられた。先手必勝の。このゲーム。
流石に。唯我も気がついていたか。
「No.1の僕が、めくるのは。当然。1枚」
1枚?
1枚!?
「どうしたの? 統夜くん?」
「……1枚?」
「No.1の1枚さ。当然」
1枚。それは、先手必勝を捨てる大悪手。
気が、つかなかった。のか?
それとも、俺は。何か見落としを?




