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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第1章
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偽物彼女〈ロメル〉

 いつも時間厳守の私だけど、待ち合わせにちょっと遅れてしまった。


 そう、流河くんも二葉ちゃんも私の巻き添えで3分の遅刻。



 そのせいかな?


 沙入くんのご機嫌がすっごく悪いみたい。


 私が『沙入くん』って『くん』をつけて呼んだだけでムッとしている。


 だって、本当はまだ知り合って間もない男の子なのに、なれなれしいんじゃないかと思って気が引けてしまうの。


 後でタイミングを見て沙入くんに遅れた訳を話そう。


 そうしないと流河くんと二葉ちゃんまで悪く思われてしまう。




 沙入くんは流河くんに対していつもこんな感じなのかしら?


 なんかつっけんどんな態度。男の子同士ってこんなもの?



 ベンチにだれて座っていた沙入くん。


 きっと早めに来ていて待ちくたびれてしまっていたのね。本当にごめんなさい。



「おはよ、ロメル。会いたかったぜ。とりあえず隣に座れよ。」



 沙入くん。さっそく、彼氏のふりしてくれてるのね?


 でも、私は二葉ちゃんにだけは本当のことを言ってあるの。私が二葉ちゃんに話したことを沙入くんは知らない。

 このことも沙入くんにお話しておかなくっちゃ。

 沙入くんも流河くんには言ったのよね?だからさっき流河くんも私の彼氏のふりして助けてくれたんだよね。


 だから今は無理して、彼氏を演じる必要はないのだけれど。



「俺、ロメルに用があるからさ、お前ら向こうで話してこいよ。流河、こいつに謝んだろ?」



 私も、沙入くんに言うことがあるからちょうど良かったわ。


 私は沙入くんの隣に座った。


 するとそれまで背もたれに肘を掛けていた腕で私の肩を抱き寄せた。



 流河くんも二葉ちゃんも目の前にいるのに、超恥ずかしいんですけど‥‥‥‥!



 沙入くんの彼氏の振りは続いている。


 そして、私の髪にほとんど口がついているのではないかと思われる距離でささやいたの。



「俺さ、1曲、曲作ってスマホにセルフィー撮ってきたんだぜ。聴いて感想きかせてよ。」



 すごい!沙入くんてそんなことまで出来ちゃうの!


 音楽がすごく好きなのはこの1週間のラインのやり取りでわかっていたけど‥‥‥‥‥。


 見かけだけではなかったのね。沙入くんて、凄すぎて別世界の人。

 こんな男の子にフェイク彼氏頼んじゃってたなんて申し訳ないです、私ったら。



「本当?沙入ってすごいのね。」



 私は耳元に沙入くんの顔があるので前を見たまま言った。


 だって、沙入くんがしゃべると息がかかってくる距離。


 それも、爽やかミント系の。



「それ、ロメルに捧げるラブソング。」



 そのミントの息が私の耳をそっと撫でた。



 わっわっわっ!私に?


 私は思わず横を向いた。



 私にラブソングってどう言うことなの?



 まさか、私のためにラブソングを作ってくれたの?


 どうして?偽物彼女の私にそこまでしてくれるなんて。



「‥‥‥‥私に?」



 びっくりして横を見た私に沙入くんは、ただ口角を少し上げただけだった。


 超至近距離に沙入くんの顔があったけど、肩を押さえられていたからそこまで避けられない。

 私はすぐにまた正面に顔を戻した。



 あー、びっくりした。

 私、からかわれているの?


 どこからが本当でどこからが振りしてるのかわからない。


 沙入くん、何を考えているのかしら?




「早く行けよ、流河。俺らここにいるからさ。」


 沙入くんがうざそうに流河くんを見た。



 あ、もしかして。

 時間に厳しい沙入くんは遅れて来た流河くんと二葉ちゃんのことまだ怒ってるの?



「ほら、行くよっ!」


「いてっ!」


「おまえ‥‥‥‥‥いきなり何すんだよ!痛てーじゃねーか!」



 流河くんと、二葉ちゃんが楽しそう。仲良くじゃれている。 

 流河くんとは、私もお話したかったのに。



 私は肩にかかった沙入くんの腕のことを忘れて思わず立ち上がってしまった。


「二葉ちゃんたら。ダメよ、流河くんにそんなことしないで。流河くん、ごめんなさい。大丈夫?」


 私は流河くんに近づいて二葉ちゃんに引っ張られた流河くんの耳を見る。


 流河くんは右手で耳を押さえながら言った。



「ああ、別に。」



 ふと、流河くんと目が合った。


 涼しげな目元。


 私の目をじっと見てる。


 どうかしたの?


 流河くんの目、何か言っている?


 気のせい?


 私‥‥‥‥目が離せないの。 



「‥‥‥‥‥‥ったく、おまえらうっせーぞ!ロメル、俺らがどっか行こうぜ。」



 沙入くんが私の左手首を掴んで引っ張った。


「きゃっ!」


 よろけた私は沙入くんの胸にどんっとぶつかった。



「ごっ、ごめんなさい。沙入くん。」



 沙入くん、大丈夫だったかしら?



「じゃあなっ!」



 沙入くんは気にすることなく私の手首を掴んだままずんずん歩き始めた。



 沙入くんの不機嫌は相変わらずで流河くん、困惑してるみたいだったけど。




 沙入くんが私の手首を放した手で、今度は手をつないできた。


 これはフェイク彼氏してるの?それともちょっと遊んでるの?‥‥‥‥‥よくわからない。


 後ろの方で二葉ちゃんの声が響いた。



「ちょっと、あんた!15分後には戻りなさーい!さもないとお仕置きだよっ!ロメルちゃんもわかったねー?」



 私は沙入くんの顔をちらりと窺った。


 無表情‥‥‥‥のようで、でも怒ってるような嗤ってるような‥‥‥‥なんだろう?


 沙入くんは一体何を考えているの?




 私は手を引かれ歩きながら少し振り返って二葉ちゃんと流河くんに手を振った。







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