俺は認めない
自己紹介。
俺、池中流河。男。
青豆中学校の2年。
身長、169センチ。今、すっげ伸びてるとこ。体重、知らね。たぶん見かけより重い。
体型、見た感じ普通。但し、脱いだら結構いけてる。筋トレしてるから。
性格、さあな?
自分的には一般人ぽいんじゃね?周りからはよく、『今、怒ってんの?』って聞かれる。いつも不機嫌に見えるらしい。
好きな教科、理数系。成績、上の下。
趣味、歌うこと。けっこー物真似得意。だからって人前でやんねーぜ?
スポーツ、わりといける。でもやらない。スポ根好きじゃない。
何事も軽く楽に行きたい。
家族、父親、母親、姉、俺の4人。
普通の庭付き一軒家。ごくごくフツー。
親友、水籠沙入。同じクラス。男。
身長、俺と同じ位。でもひょろいから背が高く見える。
見た感じ不健康そう。でも、実際は至って健康。
前髪、長し。こだわりがあるらしい。でも、しばしば先生に注意されてる。
性格、シニカル。口悪い。好き嫌い激しい。人にも食べ物にも。
成績、優秀。でも努力してる形跡なし。
そんな沙入は遺憾無くカッコいい。
俺は沙入を気に入っている。マナカの次くらいに。
マナカは俺の姉貴。俺の二学年上の高校1年生。
俺とマナカはめっちゃ気が合う。マナカといる時が一番楽しいしリラックス出来る。
俺はマナカが大好きだ。
小さい頃からいつも一緒に遊んでいた。マナカは遊びに行く時、小さい俺のこともまったく足手まといにはしなかった。
他の子に遅れても、いつだって俺に合わせて、手をつないで一緒に連れて行ってくれた。流河は私のかわいい弟だから面倒は自分が見るって言って。
あれは俺が小学1年生の時、マナカとキャッチボールしてて、俺がうっかり庭の植え木鉢を割っちまった時なんか、マナカは流河は弟で私より小さいから怒られたら可哀想だって言って、俺を庇って母さんから身代わりで叱られて泣いていたこともあった。
俺が転んで怪我をすると、俺は痛くても我慢してんのになぜかマナカが泣く。流河が痛いのは嫌だって言って。
マジ、マナカって優しくて俺のこと思ってくれてていつも隣にいてくれて世話焼きで。
家じゃ、部屋ん中一緒に走り回って、一緒に歌歌ったり、風呂に潜って息止める競争したり、かくれんぼしたり、たまにはケンカもしたけど、幼き日々の記憶はマナカとの楽しいことばかりだ。
今じゃ俺の方が体は全然でかくなったのに、未だにお姉さんぶって俺を子ども扱いしている。
俺は今中2でマナカは高1だけど、誕生日でいったら1年とちょっとしか違わないんだぜ?
もう、俺は成長した。もう今は俺がマナカを護ってやる番なんだ。
今年の夏休み、マナカと二人でめちゃ楽しい時間を過ごした。何をしていたかというと‥‥‥‥‥‥‥
これは沙入にさえ秘密なんだけど、俺はマナカにメイクを施され女の子にさせられていた。
なんでも、マナカは夏休みが始まって間もなくのこと、私はお洒落に目覚めたとか突然言い出した。
そして、メイク道具を揃えてメイクの練習を始めた。
そのうち自分の顔だけでは飽きたらず、俺にも協力を求めて来た。
俺はメイクされんのは嫌だったけど、マナカの頼みだから仕方なく一回やらせてやったらそれ、マナカの部屋で二人で過ごせるし、マナカがめっちゃ真剣な顔で間近で俺の顔にメイクすんのはいい感じだったからそれ以降も協力した。
ああ、俺はバカだった。ガチ鈍感だった。その時気づくべきだった。
マナカが恋をしてたことに。
女の子が急にそんなにきれいになりたいなんて思うのは好きな人が出来たからに決まってんじゃねーか!
マナカは夏休み明けには以前とは見かけまったく違う雰囲気にイメチェンして登校した。
学校に行くときはノーメイクだったが、スカート丈は短く、ストレートの黒髪はピンクがかったツインテールのウェイビーに。それだけで全然今までと違って見えた。
俺はマナカにチャラい男が寄ってくんじゃないかと内心心配していたが、マナカは『私はぜーんぜんモテないのよ、近くに超美少女がいてさ、みんなそっちに集まっちゃってさー。』なんて言ってたからとりあえず俺は安心してた。
重ね重ね、俺はほんと、間抜けだ。
11月3日。マナカの高校の文化祭の日、突然判明した。
マナカに彼氏がいたことが。
俺はいきなりそいつを目の前で見せられた。心の準備もないままに。
そいつはどこにでもいそうなフツーの男。一回見ただけでは忘れてしまうような。
俺はこんなやつにマナカを盗られたのか?
俺がマナカのことこれからは護るって決めてたのに!おいおい、これじゃ俺の出番がねーじゃん。
俺、こんなの認めねーから。あんななんの特徴もないような平凡なモブ男がマナカを護れるわけがねーんだ。それにあいつじゃ俺は納得できねーし。
あんなやつに俺の大事な大好きなマナカを盗られる訳にはいかない。
俺はマナカを取り戻す。俺の大切なマナカを託すのはあの男じゃねぇ!