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幼馴染みと恋人と  作者: 美坂マコト


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4/7

あらぬ誤解

 翌日の教室。

 私が教室に入るとアスマとユミはすでに学校に来ていた。

アスマ「おっ、アヤ! おはよー!」

 アスマはいつもの明るさを取り戻したように、私に手を振る。しかしその笑顔には、どこか無理をしているような影が見える。

ユミ「おはよう、アヤ。」

 ユミもまた、いつものクールな表情で私を迎える。しかし、その目には少しだけ赤みが残っていた。昨夜、泣いていたのかもしれない。

 2人はアヤの席の近くに立っている。

アスマ「……なぁ、アヤ。昨日の話だけどさ。」

 アスマは少し照れくさそうに頭を掻く。

アスマ「俺たち、ちゃんとアヤと九条のこと応援するからさ。でも……やっぱ寂しいのは事実だし……これからも幼馴染として、ずっと一緒にいさせてくれよな。」

ユミ「そうね。私たちはアヤの親友よ。それは変わらないわ。」

 ユミは少し微笑む。しかしその笑顔は、どこか寂しげだった。

ユミ「……でも、アヤ。貴方が幸せなら、それでいいの。」

アヤ「二人とも……ありがとう。」

 私はニッコリと微笑む。

「今日のお昼、どうする? ウチ、マコトくんと一緒にお昼食べようかって思ってるんだけど……」

 私はアスマとユミの予定を尋ねる。

アスマ「え、マジで? 九条と一緒に?」

アスマの表情が一瞬曇るが、すぐに笑顔を作る。

アスマ「……いいぜ。俺たちも一緒に食おうよ。ダブルデートの練習ってことでさ。」

ユミ「そうね。私たちも一緒に食べましょう。九条くんのこと、もっと知りたいし。」

 ユミは微笑むが、その目には複雑な感情が浮かんでいる。

ユミ「……それに、アヤが九条くんとどんな風に過ごしているのか、見てみたいわ。」

 そう言いながら、ユミは少し寂しそうに笑った。

アスマ「でもさ、アヤ。俺たちがいたら邪魔じゃね? イチャイチャできなくなるぞ?」

 アスマは冗談めかして言うが、その声には少し棘がある。

ユミ「アスマ、そういうこと言わないの。……でも、本当にいいの? アヤ。私たちがいても。」

 2人はアヤの反応を待っている。

アヤ「大丈夫だよ。マコトくんは優しいから、そんな事気にしないと思うよ。じゃあ、お昼、思索の庭園に来てくれる? そこで一緒にお昼食べようよ。」


 昼。思索の庭園。

 私はマコトくんと一緒に手をつないで思索の庭園に来た。

 アスマとユミはすでに来ていて、思索の庭園の椅子に座っている。

アヤ「2人とも、お待たせ!」

 私はマコトくんと並んで座り、アスマとユミに向かい合う。私は弁当箱を取り出し、マコトくんはコンビニの袋をテーブルに乗せる。袋の中にはおにぎりやパン、プロテイン飲料やペットボトルのお茶が入っている。

4人「それじゃ、いただきます!」

 4人での昼食の時間が始まる。

 アヤとマコトくんが手を繋いでいる姿を、アスマとユミは複雑な表情で見つめていた。

アスマ「いっただっきまーす! ……ってか九条、コンビニ飯かよ。もっとちゃんとしたもん食えよ。」

 アスマは自分の弁当箱を開ける。中には色とりどりのおかずが詰まっている。

アスマ「俺のは母ちゃんが作ってくれたんだ。アヤの母ちゃんも手伝ってくれたらしいぜ。」

ユミ「私のも、母が作ってくれたわ。アヤのお母様からレシピを教わったって言ってたわね。」

 ユミは上品に弁当箱を開ける。その中身もまた、丁寧に作られた料理が並んでいた。

ユミ「……九条くん。コンビニ食ばかりだと栄養が偏るわよ。アヤを支えるなら、貴方自身の健康管理もしっかりしなさい。」

 ユミの言葉には、マコトくんへの牽制のような響きがあった。

アスマ「そうだぞ! アヤを守るんだったら、まず自分が健康じゃねーとな!」

 アスマもまた、マコトくんに対して少し挑発的な態度を取る。

 2人とも、マコトくんを認めると言いながらも、まだどこか警戒しているようだった。

マコト「ご心配ありがとうございます。一応バランスは考えているのですが、どうしても効率を求めるとこうなってしまって……」

 マコトくんは紙パックのプロテイン飲料を飲んでいる。

アヤ「まあまあ。そんなに怒らないでよ。」

 私はアスマとユミを宥める。

マコト「そういえばお二人の名前、まだ聞いてませんでしたね。お伺いしてもいいですか?」

 マコトくんがアスマとユミに尋ねる。

アスマ「ああ、そういや自己紹介してなかったな。俺は佐伯アスマ。アヤとは保育園からの幼馴染だ。」

 アスマはおにぎりを頬張りながら答える。

ユミ「私は早瀬ユミ。私もアヤとは保育園からの幼馴染。3人で、ずっと一緒に育ってきたの。」

 ユミは優雅に箸を動かしながら、マコトを見つめる。

ユミ「九条くん。貴方、効率を求めるって……随分と合理的な考え方をするのね。でも、食事は効率だけじゃないわ。栄養バランスはもちろん、美味しく食べることも大切よ。」

アスマ「そうそう! 飯は楽しく食うもんだろ! プロテインとかコンビニ飯ばっかじゃ味気ねーだろ!」

 アスマは自分の弁当のおかずを一つ取り、マコトくんの前に差し出す。

アスマ「ほら、食ってみろよ。アヤの母ちゃんが作った唐揚げだぜ。めちゃくちゃ美味いから。」

 アスマの態度は少し挑発的だが、どこか友好的でもあった。

マコト「それではお言葉に甘えて……」

 マコトくんはアスマの唐揚げを1個手でつかみ、口に入れる。

マコト「うん、本当においしいですね!」

 マコトくんが頷いている。

マコト「佐伯さん、早瀬さん。アヤちゃんの幼い頃の話をお伺いしてもいいですか?」

 マコトくんが興味深そうにアスマとユミに尋ねる。

アスマ「お、マジで!? 美味いだろ! アヤの母ちゃんの料理は最高なんだよな!」

 アスマは嬉しそうに笑う。マコトくんが唐揚げを褒めてくれたことで、少し警戒心が和らいだようだ。

アスマ「アヤの幼い頃? あー、色々あったなぁ。」

 アスマは思い出すように目を細める。

アスマ「アヤってさ、小さい頃から面倒見良かったんだよ。俺が転んで泣いてた時も、泣きながら保健室まで連れてってくれたんだ。自分も泣いてんのにさ。」

ユミ「ふふ、そうね。アヤは昔から優しかったわ。私が他の子にいじわるされた時も、アヤが庇ってくれたの。」

 ユミは優しく微笑む。

ユミ「でもね、アヤって意外とドジなところもあるのよ。小学生の頃、運動会で転んで膝を擦りむいたのに、『大丈夫!』って笑顔で走り続けてたわ。後で泣いてたけど。」

アスマ「あー! あれな! 俺が保健室連れてったんだよな!」

 アスマは楽しそうに話す。

アスマ「あとさ、アヤって本当に歌うの好きだったよな。カラオケ行くといっつも歌いまくってた。」

ユミ「そうね。音楽の授業でも、いつも楽しそうに歌ってたわ。」

 2人はアヤの思い出話に花を咲かせている。

アヤ「ち、ちょっと! 恥ずかしいよ!」

 私は昔の話をされて慌てて遮る。

マコト「なるほど、そういう話があったんですね……。」

 マコトくんは腕を組み、頷いている。

マコト「そういえば一昨日、アヤちゃんからまずいものを見てしまったって言われたんです。恐らく佐伯さんと早瀬さんの事だと思うのですが……。あのとき、いったい何があったんですか?」

 マコトくんが一昨日、私が見た光景についてアスマとユミに尋ねる。

アスマ「う……それは……」

 アスマの顔が真っ赤になる。

ユミ「ちょ、ちょっと! アヤ、貴方何て言ったのよ!?」

 ユミも顔を赤くして慌てる。

アスマ「あ、あれは……その……俺たちがアヤの取り合いで喧嘩してたとこを見られただけで……!」

ユミ「そ、そうよ! 私たちは昔からアヤを取り合ってきたから……その……つい熱くなってしまって……!」

 2人は顔を真っ赤にして説明する。

アスマ「俺が『アヤはめちゃくちゃ可愛いから俺と付き合うべきだ』って言ったら、ユミが『アヤはカッコイイから私と付き合うべきよ』って言い返してきて……」

ユミ「それで2人とも『ふざけんな、ぶっとばす!』って同時に言ったところを……アヤに見られたのよ……。」

 2人は恥ずかしそうに俯く。

アスマ「……九条、お前アヤから何て聞いたんだよ……?」

 アスマは恐る恐るマコトくんに尋ねる。

マコト「……えーと、その……」

 マコトくんは言葉を探しているようだ。

マコト「……なんか、とても親密そうだった、と聞いています。」

 マコトくんの顔が赤くなっている。私の顔はもっと赤くなっていた。

アスマ「しんみつ……!?」

ユミ「ちょ、ちょっと待って!? 親密って……!」

 2人は同時に立ち上がる。

アスマ「おいおいおい! アヤ! お前何て言い方したんだよ!? 俺たちがまるで……その……」

 アスマは顔を真っ赤にして言葉を濁す。

ユミ「ま、待ちなさいよアヤ! 私たちがそんな……そんな関係だと誤解されたらどうするのよ!?」

 ユミも顔を赤くして慌てている。

アスマ「九条! 違うからな!? 俺たちはただアヤの取り合いで喧嘩してただけで! 親密とかそんなんじゃねーから!」

ユミ「そ、そうよ! 私とアスマはライバルであって……その……そんな関係じゃないわ!」

 2人は必死に弁明する。

アスマ「つーかアヤ! お前マジで何て説明したんだよ!?」

ユミ「そうよ! ちゃんと説明しなさい!」

 2人は私を責めるように見つめる。

アヤ「ご、ごめんなさい……。」

 私の顔がさらに赤くなる。

アヤ「アスマくんとユミちゃん、イチャイチャしてたように見えたから……ついそういう関係というか……男女の仲というか……エッチな関係じゃないか……ってマコトくんに言っちゃったの……。」

 私の顔は完全に真っ赤になっていた。マコトくんは頭を抱えている。

アスマ「え"っ"っ"っ"!?!?」

 アスマの顔が一瞬で真っ赤になり、持っていたおにぎりを落としそうになる。

ユミ「エ、エエエエッチな関係!?!? ふざけないで!!」

 ユミは顔を真っ赤にして立ち上がる。

アスマ「ちょ、待て待て待て! アヤ! お前何言ってんの!? 俺とユミがエッチな関係って!?」

ユミ「あ、ありえないわ! 私がこんなバカと!? 冗談じゃないわよ!!」

アスマ「誰がバカだコラ!! つーかアヤ! お前どんな目で見てたんだよ!?」

 アスマは頭を抱える。

ユミ「そ、そうよ! 私たちはただアヤの取り合いで喧嘩してただけで……その……イチャイチャなんて……!!」

 ユミも顔を真っ赤にして否定する。

アスマ「九条……お前も大変だな……アヤのこういうとこ、ほんと……」

 アスマは同情するようにマコトくんを見る。

ユミ「……アヤ、貴方ね……私たちをどういう目で見てたのよ……」

 ユミは恥ずかしさと怒りが混ざった表情で私を睨む。

アヤ「うう……ごめんなさい。」

 私は身を縮めた。

マコト「はは……」

 マコトくんはただ苦笑していた。

マコト「まあまあ、仲が良いことはいい事だと思いますよ。」

 マコトくんはおにぎりを食べながらアスマとユミを宥めていた。


 放課後。

 私が教材をバッグにしまっていると、アスマとユミの姿が見えた。生徒たちが帰り支度をしている中、アスマとユミが私の机に近づいてくる。

アスマ「よっ、アヤ。今日さ、ちょっと話があるんだけど。」

 アスマはいつもの明るい笑顔だが、どこか真剣な表情も混じっている。

ユミ「アヤ。少し時間をもらえるかしら?」

 ユミもまた、クールな表情の中に真剣さが滲んでいる。

アスマ「昼休みの話なんだけどさ……お前、俺たちのことマジであんな風に見てたの?」

ユミ「そうよ。私たちがイチャイチャしてるように見えたって……本気で言ってたの?」

 2人は私を見つめる。昼休みの誤解について、ちゃんと話をしたいようだ。

アスマ「つーかさ、俺たち幼馴染じゃん? そんな風に見られてたとか、正直ショックなんだけど。」

ユミ「私もよ。アヤには、私たちのこと、ちゃんと理解してほしいの。」

 私は一昨日の光景を思い出す。話の内容はよく聞こえなかった。ただアスマがユミに迫っているように見えていた。アスマが壁ドンしているように見えたのだ。

アヤ「ご、ごめんなさい。あのとき話の内容までは聞いてなくて……。アスマくんがユミちゃんに壁ドンしているように見えて、もしかして……って思っちゃったの。」

 私は必死に頭を下げる。

アスマ「か、壁ドン!?!?」

 アスマの顔が一瞬で真っ赤になる。

ユミ「ちょ、ちょっと待って!? 壁ドンって……!!」

 ユミも顔を赤くして慌てる。

アスマ「お、おい! あれは違うから! 俺はただユミに『アヤは俺のもんだ!』って言ってただけで!」

ユミ「そ、そうよ! 私が『ふざけないで、アヤは私のものよ!』って言い返したから、アスマが壁に手をついて迫ってきただけで……!」

 2人は必死に弁明する。

アスマ「つーか壁ドンって……そんな少女漫画みたいなことするかよ!」

ユミ「そうよ!私とアスマがそんな関係なわけないでしょう!」

 ユミは顔を真っ赤にして否定する。

アスマ「アヤ……お前、俺たちのこと本気でそういう関係だと思ってたのかよ……?」

アスマは複雑な表情で私を見つめる。

ユミ「アヤ……私たちはずっと、貴方のことを取り合ってきたのよ。それなのに……私たちが付き合ってるように見えたなんて……」

 ユミは少し傷ついた表情を浮かべる。

アヤ「本当にごめんね。でも喧嘩するほど仲が良いって言うでしょ? だからもしかしてアスマくんとユミちゃんって本当は仲が良いんじゃないか、って勝手に考えてたんだ。」

 私は頭を何度も下げる。

アスマ「……はぁ。まあ、お前がそう思ったなら仕方ねーか。」

 アスマは頭を掻きながら、少し照れたように笑う。

ユミ「……ふふ、アヤらしいわね。そういう風に考えるなんて。」

 ユミも少し笑みを浮かべる。

アスマ「でもさ、アヤ。俺たちが仲良いって思ってくれたのは……まあ、嬉しいけどさ。」

ユミ「そうね。でも、私たちはあくまでライバルよ。アヤを巡るライバル。」

 ユミはクールな表情に戻る。

アスマ「そうそう。俺たちはアヤのことが好きだから、お互いに譲れねーんだよ。」

 アスマは真剣な表情で私を見つめる。

ユミ「でも……アヤには九条くんがいるから……私たちはもう、諦めなきゃいけないのよね。」

 ユミは少し寂しそうに呟く。

アスマ「……ああ。でも、俺たちはアヤの幸せを願ってるからさ。九条がアヤを幸せにしてくれるなら、それでいいんだ。」

 アスマは優しく微笑む。

ユミ「そうね。でも、もし九条くんがアヤを泣かせたら……私たちは絶対に許さないわ。」

 ユミは真剣な表情で私を見つめる。

アスマ「そうだな。アヤは俺たちの大切な幼馴染だからさ。」

アヤ「二人とも……ありがとう。」

 私はアスマとユミに向かって微笑む。

マコト「アヤちゃん! 一緒に帰ろう!」

 教室の後ろからマコトくんの声が聞こえる。マコトくんは手を振っている。

アヤ「じゃ、ウチ、マコトくんと一緒に帰るから。また明日ね!」

 私はマコトくんのもとに駆け寄り、マコトくんと手をつないで昇降口に向かった。アスマとユミは黙って見送る。

 2人きりになった教室。

アスマ「……行っちまったな。」

 アスマは寂しそうに呟く。

ユミ「……ええ。」

 ユミも同じように寂しげな表情を浮かべる。

 しばらく沈黙が続く。

アスマ「……なあ、ユミ。」

ユミ「……何?」

アスマ「俺たち、本当にアヤのこと諦められるのかな……。」

 アスマは窓の外を見つめながら呟く。

ユミ「……諦めるしかないでしょう。アヤには九条くんがいるんだから。」

 ユミもまた、窓の外を見つめる。

アスマ「……でもさ、俺、まだアヤのこと好きなんだよな……。」

ユミ「……私も、よ。」

 2人は寂しそうに呟き合う。

アスマ「……はぁ。マジで辛ぇわ。」

 アスマは頭を抱える。

ユミ「……そうね。でも、これが現実なのよ。」

 ユミは諦めたように呟く。

 教室には、2人の切ない空気が漂っていた。

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