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決着! そして……

「クッソォ、何にも見えやしねぇ」


 山の中腹を進むパジェロも霧には勝てない。

 だが、スーパーセレクト4WDはその威力を存分に発揮していた。


 しかもデフにもパレッタの魔法陣が仕込まれている。

 空転を抑える。コーナーでの左右の動輪のバランスを取る以外に、魔物の蔦を高回転で引きちぎっているのだ。


「おりゃ、まだまだ登れるぜ。あとは視界だけなんだがな」

「コージロー、それならもう一度ワイパーウォッシャーですにゃ」


 サティがスイッチをポンと押すと、今度は標準通りガラスにウォッシャー液が噴射される。

 ワイパーでそれを一拭きすると。


「おおお、凄え、見えるじゃねーか。どういうことだ?」

「聖水は神の力ですにゃ。魔物が作り出した幻の霧など簡単に晴らしてくれます」



 もはや、敵なしに見えたパジェロ。

 もう頂上は見えている。


 しかし、そこにあるのは今までよりさらに深い沼。

 鎮座するのは沼に八本の足を突き刺す魔物、その上半身は――


「やっぱり生きてやがったのか」

「ううっ、気持ち悪いですにゃ」


 魔族だ。

 ダメージ受けた体を補完するため、この蟻地獄ならぬ沼地獄の体を食ったのだ。


「コロス、コロス、ニンゲンコロス」

「また、それかよ……まあ、こっちも余力はねぇけどな」


 ダッシュボードのボタンを押しまくる。


 火の玉(ファイヤーボール)電撃(ライトニング)、そして聖水ウォッシャー液。

 ありったけの攻撃を繰り出す。


「コージロー、無理だよ」

「いや、倒せなくてもいい。あと少し前に出られれば」


 敵は動じない。

 それでもパジェロは沼の中を1mまた1mと進む。


 このまま勝てるとはとても思えない。

 だが、光治郎の狙いは、この場所に来ることだった。


「見えた! コイツが最後の切り札だ」


 ヒューウウウン


 魔力を帯びたウインチのロープが伸びる。

 その先にあるのは頂上にある霊木。


「巻き付いたぞ。行っけぇぇ!」

「すごいすごい」

「怖いですにゃ」


 ウインチにロープが巻き取られ、沼にハマるパジェロを力強く前に引っ張っていく。



 ガン

 バリバリバリ


 パジェロがキメラに激突。

 そのまま乗り上げ、押し潰していく。


「これでトドメだ」


 電動車高調整に仕込まれた最後のスイッチ。

 こいつは車高を押し上げるだけじゃない。


 タイヤの下に力を加えることができるのだ。

 その能力は車重の約四倍。八トンの超重量が魔物を押し潰す!


 バキバキバキバキバキ

 グォォォォーンンン


 沼が嘘のように蒸発。

 霧が晴れ、魔物は完全に消滅。


「勝った……のか?」

「ええ、勝ちました」

「もう、魔物はどこにもいないですにゃ」


 ガチャ

 ドアを開け、四人は山の頂上に降り立った。


 もう、湿地も沼もない。

 だが、そこにあったのは無惨にウインチのロープに傷つけられた霊木。


「よくやったよな。俺たち」

「ああ、でも」

「そうだな」

「パレッタ様……」


 この大樹がパレッタの半身であるならば、彼女は無事では済まない。

 とても勝利に酔ってなどとてもいられなかった。


「コージロー。パレッタは」

「わからん。無事でいて欲しいよ。ウォッシャー液以外は彼女のおかげだからな……ん?」


 つなぎのポケットにあったのはアンプルだった。


「おおっ、これがあったか。なあ、この霊木ってのも植物には違いないだろ?」

「何だその怪しげな薬は。これはパレッタ様の半身。そんなものが何の役に立つというのだ」


 気色ばむアレク。

 だが、それをサティがポカリ。


「痛っ、何をする。サティ」

「コージローがすることに間違いない。それを使って欲しいですにゃ」

「わかった」


 光治郎はそのアンプルの首をちぎってポタリポタリと霊木の根本に内容液を垂らす。

 するとみるみるうちに。


「うわぁ、治ってく」

「すごいすごい」


 霊木の傷跡は消え、元気のなかった葉も幹も元の輝きを取り戻した。


「まあ、日本の農業力の結晶みたいなものだからな。ここまで効くとは思わなかったが」

「アレク。これなら、葉っぱをとっても大丈夫だよな」

「あ、ああ、まあ、これなら」

「ほら、言ったとおりですにゃ。コージローに任せておくですにゃ」


 終わった。

 採取した葉の状態は良い。これなら薬効の高い魔法薬がたくさん作れるだろう

 光治郎たちは成功したのだ。


 帰り道。

 流石にパジェロにはガタが来ていたが、それでも村に帰るまで無事に走り切った。


「なんとかやり切ったが、車はボロボロだ。整備は手伝ってもらうぞ」

「無論だ」


 光治郎はアレクの笑顔を初めて見た気がした。



 村に帰ると大勢の人が出迎えが来ていた。

 しかも、やたら元気に手を振っている人が――あれはパレッタ!?


「おかえりなさい!」

「ただいま、パレッタ。薬草取れたよ……それにしても元気だね」

「ええっ、コージローたちが出かけてしばらくは物凄く苦しかったんだけど、急に物凄く調子が良くなってしまって……ってなんであなたたちみんな笑ってるの?」

「「「「アハハハハ」」」」


 あとでピートに尋ねられた光治郎は「秘薬だ」と答えたが、その顔には汗が。

 言えるわけがない。あれが、花屋で売ってる150円の植物用栄養アンプルだとは。


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