願い事は登坂能力次第で。
「薬草が必要なのです。それを取る手伝いをお願いできないでしょうか」
「どういうことだ? できることならやってもいいけどよ」
パレッタはいきなりそう切り出した。
どう考えたって面倒ごとだろうが、イヤだとは言いにくいんだよな。
「コージロー、頼む! サティのお母さんにはパレッタの薬が必要なんだ!」
「わかった。いや、話は全然わかんねぇが、とにかく落ち着け」
「「も、申し訳ありません」」
ピートとパレッタはステレオで謝ってきた。
要するに、パレッタは魔法使いで薬も作っていたのだが材料が切れた。
それを取りに行く手伝いをしてくれ、ってことらしい。
「そこまではわかるが、ひとりじゃ取りにいけないところなのか?」
「はい。最近、魔物が棲みついてしまい……」
じょおぉだんじゃねーぞ。
あんなおっかない火の玉の魔法使えるコイツが手に負えない魔物なんて。
ウチの車は戦車でも装甲車でもねぇんだ。
「無理だな。ほかを当たってくれ」
「そんなこと言うなよ、コージロー。村の人は助けてくれたじゃないか」
「……そう言われてもな」
そんな目で見るんじゃねーよ。
っと、後ろにいるのはサティ。わざわざ町からこいつも来やがったのか。
「仕方ねぇ。わかってることは全部教えろ。その上で決める」
「「「ありがとうございます」」」
「いや、まだ受けるとは言ってねぇぞ」
「「「はい」」」
調子狂うぜ。
早速、パレッタからその場所と魔物についての説明を聞いたのだが。
「つまりそいつは山の上に一本生えている霊木の葉っぱだっ、つーわけだ」
「はい。道は広いし人でも膝をつかずに登れる山だから……」
あー、分かってるよ。車で行けってんだろ?
こっちも魔物が出るとこに生身で歩いて行こうなんて思わねぇよ。
結局引き受けちまった。
登坂能力はそれなりに必要。ピートはトラックで行けると思っているが、そいつは甘い。
そして肝心の魔物なのだが……
「湿地を沼に変えて、襲いかかってくるってことは車輪がハマったら終わりじゃねーか」
「そこをなんとか。それと毒の息も吐いて来るから、窓もちゃんと閉めないとダメだと思う」
甘いな。
窓を閉めても完全に毒を防げるわけじゃねぇ。
だいたい、魔物とどう戦うって言うんだ?
「毒は魔力を込めた塗料があれば防げます。魔物とは私が戦えますし。それより、沼から抜け出す方法なんですが」
なんだよ。
こいつついて来る気か。
まあ、道案内は必要だしな。
方策もあるとなると。
断る気満々でいた光治郎だったが、実はこの難題をこなせる一台の車が頭にはある。
「わかった。やるだけやってやる。だが、それは目当ての4WDが届いてからだ」
その夜、光治郎は、いつもの補修部品リストだけでなく、一通の要求書を神棚に ”お供え” することにした。
“村と町の連中が困ってる。三菱パジェロが必要だ。リストに書いたが、パドルタイヤにシュノーケル。電動車高調整もつけてくれ。ウインチも強化するからな”
「お願いします、神様。ちょっときちー頼みだけど」
パンパンと手を合わせると、ひらりと一枚の紙がガレージに舞う。
“なんでパジェロなんじゃ。トヨタのランクルじゃダメなのか。理由がないと車はやれん”
それを見た光治郎は和紙に毛筆で “趣味” と一筆。
神様は、天を仰ごうとしてやめた。
無意味である。そこは天界なのだから。
その後、状態のいい三菱4WDを探せという謎の囁きを日本中の中古車販売の店員が聞いたという。




