代車でGO !
「うーん、エンジンはZetec-Eの2リッター、シルバートップでいいだろう。コイルオーバーは必須として、ラジエーターにディスクブレーキ……」
「何言ってるかわかりませんよ」
村長のミニの改造パーツが大変なことになりそうだ。
アレクが隣で右往左往しているが、今、わかるように説明してる暇はないんだ。
「ああ、すまんな。部品のリストが多すぎて他に手が回らん」
「それはいいんですが、二人を帰さないと」
いかん! そうだった。
ピートがいないと村の野菜が腐っちまうし、エミリアがいないと消防車が動かせん。
だが、そうなると別の問題が。
「それなんだよなぁ。おっつけ王宮からも休憩所の件で依頼がくるからさぁ」
「ああなるほど、ボルボに変わる足が必要なんですね」
「そう言うこと」
やることがありすぎだ。
今だって大改造のパーツ考える間だけで手一杯だってーのに……。
だが、必要なものは手に入れるしかない。
要は時間を食われなきゃいいのだ。
「仕方ない。神様に代車がわりの車でも注文するか」
早速さらさらと要望を書き、神棚に ”お供え” する。
“ミニのパーツは大変なので、少し時間かかっても構いません。それより、とりあえずの車が二台必要です。適当なハッチバックと小型車をお願いします。レストアの手がかからないもので”
いつものようにパンパンと柏手を打つ。
「終わったんですか」
「ああ、明日から忙しくなるぞ」
「忙しくないこと、ありましたっけ」
「…………… 」
結局、夜遅くになってしまったが、二人は町に帰るという。
「ピート、エミリア。世話になったな」
「いいえ、いつでも声をかけて下さい」
ボルボが走り出した。
待ってる人がいる以上、急ぐのは仕方ない。
せめて土産くらい――
あいつら、買う暇、あったのかな?
翌日、ガレージのリフトの上には2台の車が乗っていた。
左のリフトにはフォード モンデオワゴンLX。
右にはフィアット パンダ45である。
「うん。こんなもんだろう」
「そうなんですか。なんか普通の車ですね」
確かにな。
あの村長がパンダで納得するとは思えん。
いやいやいや、そんなこと気にしてる場合じゃねーし。
「いいんだよ、こいつは繋ぎなんだから。さっさと整備終わらせるぞ」
整備を始めてみると、そんなに悪い車には思えない。
錆はなし、塗装もまあまあ。
全体をチェックして、普通にオイルとフィルターの交換。
あとは一つ二つ、ゴムブッシュを確認したら、洗車してバフがけ。
こいつなら、そう悪くはないんじゃないか……などと考えていると。
ガラガラガラ
作業を続けているとガレージに村長が入ってきた。
「なんじゃこれは」
「ミニの改造には時間がかかりそうなんで、代車を用意したんです」
「あまりパッとしない車じゃの」
「まあ代車ですから」
やっぱりか。
どいつもこいつも贅沢なこと言いやがる。
一時凌ぎに文句を言われる筋合いはない。
とにかくとっととやっつけないと。
昼はパレッタが王都でサンドイッチを買ってきてくれた。
「すまねぇな」
「いえ、これだけ買いに行ったわけじゃないですから」
「なかなか、美味いもんじゃな」
爺さん。
車がなくて暇だからって、レストアずっと見てることないんだからな。
夕方になり、流石に村長はどこかに出かけてしまった。
光治郎とアレクは丸一日、ガレージでの作業。
大変は大変だが、大した問題もなく、予定通り工程をこなしたと言えるだろう。
オイル受けを用意するのを忘れてボルトを緩め、床がギタギタになったのには閉口したが。
実際、アレクはよくここまで仕事を覚えたものだと思う。
自動車の修理について右も左もわからない異世界人が始めたのだ。
「遅くまで付き合わせて悪かったな。上がっていいぞ」
「でも……」
「あんなことはよくある、気にすんな。あとは任せとけ」
ぶちまけたオイルの責任を取りたいと言うのだろう。
だが、どうしてもやらせるわけにはいかない修理がある。
それは電装だ。
油圧はわかる。オイルに押されて何かが動く。
空気の流れも。今じゃターボさえ理解している。
だが、どうしても異世界人には電気の力がわからないのである。
「こいつだけは俺がやるしかねーからな」
ケーブルを束ね、はんだごてを持つ光治郎は、これから先、自動車の普及には無視できない
この問題について考え始めていた。
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光治郎の握るレンチにも力が入ります。




