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消防団と大忙し、そして王家の手紙

 10分経ち、20分経ち、まだ放水は終わらない。


「すげえな。消火栓もなしにどうなってんだ」

「魔石ですよ。魔法陣が魔力を吸い上げて水に変換してるんです」

「へぇー、なるほど(全然わかんねーや)」


 500mを超える超距離放水に、山火事は下火に。 


「ここで決めるぞ。放水圧力増加」


 妙に連携の取れた連中である。

 すぐに放水関連の装置をテキパキと操作。

 

 後ろを振り向くと……ゲッ、いつの間に数百人も見にきてやがる。

 その中でみるみる消える中腹に残った最後の炎。


「よし、消しとめたぞ!」

「「「「「「おーーー」」」」」


 火事は消し止められた。

 山は守られたのである。

 

 パレッタやアレク、それにエミリアは周りの人々に囲まれてもみくちゃ。

 うーん、本当ならマギルスの試運転をするだけだったのだが。



 後日、町に行くと妙に馴染みのある赤い服の一団が行進していた。

 いつもの町役場の人に聞いてみる。


「なんだありゃ。あの服はどうした」

「町の消防団員です。服は消防車内のロッカーにあったものを複製しました」


 うわっ、マジか。

 消防服も作りやがった。すげえな異世界。


 もう何でもありである。



「それでですね。一つお願いしたいことが……」

「あの消防車を町に売っていただけないか、と」

「そいつはありがてぇが、少し待ってくれ。レストアは済んだんだが、相場がわかんねぇんだ。あー、そのまま使ってくれてていいからよ」


 急ぎ、村に引き返す。

 ガレージを開け、聞きたいことを書いていつも通り ”お供え”する。


 “どうやら消防車は町で買ってくれるそうですが、いくらで売ったらいいかわかりません。消防団もできたようですが、いろいろ足りないもんがあるような気がします。相場とアドバイスを下さい”


 するとすぐに、パラリと一枚の紙が降ってきた。


「何々? 『金貨180枚(分割払い可)。消防署ができたなら、格納庫に軽油の給油機をつけてやる』、価格は……リッター銅貨一枚? ちゃっかりしてやがんな」


 それから何度か町との交渉を重ね、消防車は月に金貨20枚の六ヶ月ローンと決まった。

 俺は『近隣の町や村にも出動することがあるのだから、負担金をもらえるようにちゃんと言い含めておけよ』とアドバイスしようと思ったんだが……


「ああ、それについては村長がすでに根回しをしてくれてまして。本当に助かってます」


 うわあ、あの村長。オースティン・ミニであちこち出かけてると思ったらそんなことをしてやがったのか。

 まあ、いいけどよ。助かるんだけどよ。


 さらに、この一件でこのガレージについても有名になりつつあった。

 多くの人が車を希望するようになり、それはいいんだが。


 忙しすぎる!!


 アレクなんて何晩徹夜してんだよ。死ぬぞ、実際。

 しかも、勝手に送ってくる神様の旧車のチョイスが客にあいやしない。


 フォルクスワーゲン・ゴルフ、サーブ900、マツダMX-5

 ランドローバー・ディフェンダー、MGB


 いや、いい車だよ。みんな。

 でももっと普通の車送ってこいよ。


 とにかくMGBとMX-5は無理!

 舗装された道ねーんだから。トヨタレビンもガレージに眠ったままなのに……



 そんなこんなでガレージはてんてこ舞い。

 商売的には順調なのだが、それにしたって。


「大変ですにゃ、王宮から手紙が来ましたにゃ」


 あー、こんな時に、サティが駆け込んできた。

 好事魔多し。嫌な予感しかしない。


「王宮がどうしたって? ってゆーか、人の手紙勝手に開けるなよ」

「すいませんですにゃ。気になって気になって」


 すると後からフーフー言いながら町長も掛けてくる。

 もちろん、おっとり刀でこの村の村長も。


 どうやらサティの奴、あちこちに触れ回ったらしい。


「大変なことになりましたな」

「そうなんですか? 今ひとつピンときてないんですが」


 詳細がさっぱりわからない。

 サティから手紙を受け取ると……


 そこには、まずは謝辞。

 “町並みと近隣村落、さらには山野に至るまで、数多の火災を鎮めたことに、王家としての深い謝意を表する"

 こいつはまあ、いいとしよう。


 だが、問題は次だ。

 "しかし、消防の名目とはいえ、多くの町や村との契約を王国の許可なく進めたことは、王国統治の規を乱すものである。これについての釈明を求める。ついては、二ヶ月以内に王宮へ出頭されたし"


「陛下に謁見ですぞ」

「二ヶ月あるなら新しい車をレストアできますなぁ。この機会に是非」


 いや、そんな場合じゃねーって。

 どうする?


 ……周りには村長、町長、あれっパレッタまで来てるじゃねーか。

 ここは一つ、この連中を頼ってみるか。


「皆さんにお話があります。俺と一緒に王都に行ってもらえませんか?」

「「「「はいっっ!」」」」


 ほとんど全員が、迷いなく手を挙げていた。


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