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タバコ休憩は大事


 あの後、床に転がる男達を無視して『薬草採取』の依頼を受けた。


 町を出て薬草の生えている森を目指そうとした時、ハクアが口を開いた。


「クロ。いける?」

「あいよ〜、僕にお任せあれ〜《索敵》」


 クロエが目を瞑り、数秒待つと――


「あっちかな」


 ある方角を指差した。


「主様。行きましょうか」

「あっちに薬草があるのか?」

「ビビッと感じたからね!」

「クロは索敵とか補助系の魔法が得意なんです。先程の大声も、強化魔法で声量を限界以上に引き上げたんですよ」

「へー、ただ単にクロエの声がデカイだけかと思ってたけど、そんなカラクリがあったんだな」


 魔法というのは万能なようだ。

 たしかにこれだけ凄いと、科学より魔法が発展するのも頷ける。


「良かったら主様にも補助魔法教えようか〜?」

「ほんとか?」

「やめておいたほうがいいですよ」


 ハクアがタバコに火をつけながら言った。


「クロは基本的に感覚だけで魔法を使っているので、理路整然(りろせいぜん)とした教え方は期待できません」

「……クロエ、試しに簡単な魔法を教えてくれないか?」

「んー、じゃあ僕か今使った《索敵》の使い方ね。こう頭の中で魔力をググッてやって、パッて広げる感じ」

「ほら」


 生前にもそういう人間はいたな。

 感覚で仕事をこなすせいで人に物事を教えるのには向かないんだよな。


「攻撃魔法でいいなら、今度お教えしますよ」

「俺でも使えるやつで頼む」

「ええもちろん」

「僕も教えるよ〜!」

「わかったわかった。今度頼むな」


 無駄話はここまでにして、俺たちは薬草を探すべくクロエの指し示した方角へ足を向けた。



 ◇


 町を出て三十分くらいで森の入り口に辿り着き、さらにそこから三十分ほど歩いた。


 クロエを先頭に道無き道を突き進むと――


 開けた場所へ出た。


 何やら似た草が群生している。

 これが薬草なのだろうかと考えているとハクアがクロエに確認をとった。


「クロ、ここであってる?」

「うん。ほらこれが薬草だよ。でも一応《鑑定》――うん、やっぱり合ってる」

「おお〜、でかした。クロエはなかなか優秀だな」

「ふふ〜ん。お礼は缶チューハイでいいよ」

「…………ほら」


 俺は《無限嗜好品供給むげんしこうひんきょうきゅう》を発動して缶チューハイを出すとクロエに渡した。

 一応、役に立ってくれたからな。労う上での必要経費だ。


 缶チューハイを受け取ったクロエはすぐに飲まずに、ハクアにお願いをした。


「ハーちゃん。氷でこれ冷やしといて〜」

「飲まないの?」

「汗水垂らした後に飲むのが一番美味しいからね。楽しみはあとにとっておくよ」

「あなたそういう我慢はできるのよね……」


 酒を美味しく飲むための我慢はできるけど、飲まないための我慢はできないのか。


「そんなんでよく今まで問題おこさずにいれたな」

「起こしてますよ」

「え?」

「以前、神様に禁酒を命じられた時に本気で襲いかかってましたから」

「小さい酒樽一個飲み干しただけじゃーん。神様もあの程度で怒りすぎだよね」

「……あれ、神様が楽しみにしていたお酒だったのよ?」

「あ〜どうりで美味しかったわけだ〜」


 やっぱりあの神は、俺に厄介者を押し付けやがったな。

 

 今後の先行きがさらに不安になった。



 ◇


 その後はせっせと薬草を採取した。

 できるだけ多く。

 とにかく多く。

 金のために少しでも多く!


 なんだか若い頃を思い出すな……あの頃は無我夢中で働いてたっけ。

 人を雇う立場になっても、あまり変わらなかったな。

 そのせいでタバコと酒をバカスカ飲んで死んだんだよな。笑えないけど笑える。


「――んん、いてて」


 さすがに二十歳の体でも、ずっと中腰は辛いものがある。

 腰を反らし、左右に回し、筋肉をほぐす。

 そこで目に入る。


「……おい、ハクア」

「なんですか?」

「何サボってるんだ?」

「サボってませんよ。タバコ休憩をとっているだけです。ほら、私はタバコ吸わないと仕事の効率が下がりますから」


 元いた世界の喫煙者みたいなこと言いやがって……

 確かにタバコ休憩はうちの会社でも認めていた。認めてはいたが、その上でちゃんと成果を出してこそだ。

 仕事をせずに喫煙所に入り浸る社員を何度か叱ったことがあったっけ……懐かしい。


 俺はハクアの足元にある、小さい薬草の山を指差した。


「その程度の量で働いたと?」

「ええ、たまたま私の近くには薬草が少なかったみたいです。悔しいですね」

「……お前もしかしてサボり魔か?」

「人聞きの悪い、もとい天使聞きの悪いことを言いますね。私は自分が出来ることをやっているだけです」

「随分と仕事熱心なことで」

「ええよく言われます。しかしそんな私でも、どうにもできない事もあります。悔しいです」

 

 片方は酒が絡めば真面目に働くが、片方はタバコが絡んでもろくに働かない――と。

 新たな人生なのにとんでもない従業員を雇うことになった経営者の気分だ。

 死んでもまた社長業をしなくちゃいけないのか……


「吸い終わったらちゃんと再開しろよ……」

「かしこまりましたー」


 もうハクアは戦力外と思おう。

 

 俺は再び薬草採取へといそしんだ。


 

ハクアとクロエの年齢は数百から数千歳。特に決めてねえっす。

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