VSブルンガルド 終
クロエのせいでブルンガルドと殴り合いをする羽目になった。
八つ当たり気味に殴りつけ、一発当たれば一発返される。
その繰り返し。
体格に差がある分ブルンガルドの方が有利に思えるが、ハクアの魔法で作られたこの鎧は反則級の強さをみせていた。
いくら殴られようと痛みはない。
体も頭で思い描いたようにスムーズに動くことができ、本来の俺では出来ないような動きも問題なくできる。
デメリットをあげるとするなら、痛みはないが衝撃は伝わる。
いい所に当たれば一瞬意識がグラつく。
危ない危ない……今のはヤバかった。
こんなインチキじみた鎧を着ている俺を相手しているブルンガルドの強さもまた異常の一言だ。
互いを殴打し続けること数分。
そろそろ決着をつけるとしよう。
正面に向かってくるブルンガルドの拳を回し受けで防ぐ。
「悪い。技——使わせてもらうわ」
別に明確にそんな約束はしていなかったがなんとなくで空手の技は使わずにいた。
なんとなく——ただ、それだけの理由だ。
なんかその方がカッコイイとか思ったりもしたが、なんとなくだ。
大きく息を吸い込むとそれに比例するようにタバコの火が勢いを増す。
それと同時に全身へと力が漲る。
ブルンガルドの頭へ蹴りを放ち、すぐに前蹴りで距離を開け——ようと思ったが鎖に引っ張られる。
咄嗟のことに足を振り上げ、ブルンガルドの頭目掛けて振り下ろす。
軽く振り下ろしたつもりの踵はブルンガルドの頭を地面へと叩きつけ——大地を割った。
もうヤケクソだ……
そう思いながら顔を上げたブルンガルド目掛けて正拳突きを放つ。
構え、拳を振り抜く瞬間。
肘の辺りから煙が吹き出し、さながらジェットエンジンのように拳を加速させた
本当は顔面で拳を止め、ちょっとカッコイイセリフでも言ってお互い痛み分けにでもしようと思っていた。
だが拳は止まることなくブルンガルドの顔面を力の限り打ち付ける。
繋がれている鎖は、吹き飛ぶ巨体が限界の距離まで進むとそのまま弾け飛んだ。
それによりブルンガルドは一転二転三転と何度も転がりながら地面を進み。
やがて土煙を上げながら静かに倒れ伏した。
◇
「ウ……ココハ」
(う……ココは)
「おっ、目が覚めたか?」
目を覚ましたブルンガルドに声をかける。
あの最後の一撃でブルンガルドは気絶したらしく、とりあえず目が覚めるまで待つことにした。
ブルンガルドは上体を起こし、自身の体に異常はないかと探る仕草をする。
そして空を見上げて一言。
「オレハ……マケタノカ」
(俺は……負けたのか)
よかった、あっさりと負けを認めてくれたようだ。
俺はタバコの鎧の効果がとっくに切れているので、今暴れられたら即座に対処出来なかった。
そばにハクアとクロエがいるので、あまりその心配する必要はないけどな。
ブルンガルドは空を見上げたまま動かない。
……そもそもなんで俺らは戦ったんだっけ?
殴られすぎて記憶が曖昧になっている気がする。
ハクアをチラリと見てから自分のこめかみを指でノックした。
(なんですか主様)
ハクアは俺の意図を瞬時に読み取ってくれた。
なんで俺らは戦ってたんだ?
(たしか……イジークマトという奴の敵討ちかと)
イジークマト……ああ、たしかにそんな内容だったな
(思い出せてよかったですね)
ハクアはタバコに火をつけると吸い込んだ煙をブルンガルドへ吐きかけた。
「……厶。ミョウナニオイノケムリダナ」
(……む。妙な匂いの煙だな)
「貴方の目的である敵討ちは見事果たせなかったのだけど、この後はどうするつもり? 私とクロとも勝負する?」
ブルンガルドは煙を手で払い、ハクアとクロエをじっと見た。
「ヤメテオコウ。キサマラハソコガミエン」
(止めておこう。貴様らは底が見えん)
「お? 僕たちにビビっちゃった? 手加減なしであげるよー」
クロエが口でシュッシュと言いながらシャドーボクシングを始める。
それに合わせるようにハクアがクロエに数発のジャブを放つと全て被弾した。
「——グエッ!」
「貴女は動きが甘いから読みやすいのよ」
「ヤロウぶっ殺ぉーっす!!!!」
「来なさい。主様の戦いを見て疼いてたところよ——!」
飛びかかるクロエをハクアが右ストレートで撃ち抜くと、クロエは遠くへと吹き飛んでいった。
それを追いかけるようにハクアも物凄い速さで駆け抜けていった。
「……ナゼ、アノヨウナモノタチヲシタガエラレテイルノダ?」
(……なぜ、あのような者たちを従えられているのだ?)
「うーん、成り行きで押し付けられた感じかな?」
「ドンナナリユキナノダ……」
(どんな成り行きなのだ……)
「コッチにも色々とあるんだよ。深くは聞かないでくれ」ゴロゴロ
遠くで雷の音が鳴り響き始めた。
空は曇りひとつない快晴なので、ハクアかクロエの魔法だろう。
「ナ……カ、カミナリマホウ……ダト!?」
(な……か、雷魔法……だと!?)
なぜかブルンガルドが驚愕している。
雷魔法なんてあの二人は平気で使っているので俺からしたら珍しいものではない。
……もしかしてこの世界の人間からすると珍しいのか?
「ハクアかクロエのどちらかの魔法だと思うが、珍しいのか?」
「ナニヲイッテ……カミナリマホウトハユウシャニノミアタエラレルゾクセイダ。コノヨデタダヒトリ、カミニエラバレタソンザイ。ソレガユウシャダ」
(何を言って……雷魔法とは勇者にのみ与えられる属性だ。この世にただ一人だけ、神に選ばれた存在。それが勇者だ)
「へー、なるほどね」
つまりあの二人は神に選ばれたと? ないない。
元が神の使いの天使なんだから、勇者とやらが使える魔法は使えて当然だよな。
その後もしばらくの間、少し離れた山の至る所で雷の閃光や火柱、巨大な水の塊等が見えた。
竜巻も数度発生したが、山が完全に無くなるほどの規模の魔法は発生しなかった。
音が止み、黒焦げのクロエを小脇に抱えたハクアが戻ってきた。
「お待たせしました。もう大丈夫です」
ポイッとクロエを放り投げ、そう言ったハクアの顔は晴れやかなものだった。
だが、髪はボサボサで服もかなり際どい形になっており、白い肌には生々しい傷痕から血が滴っていた。
「……大丈夫なのか?」
「ええもちろん。この程度で私たちが死ぬ事はまずあり得ません。クロも放っておけば勝手に治ります」
ハクアはタバコに火をつけると、煙を自分の体に吹きかける。
すると傷と服がみるみるうちに元に戻っていく。
服も元通りか、便利な魔法だ。
ついでのようにクロエにも煙を吹きかけると。
「……クッサ」
「嫌ならさっさと起きなさい」
「ハイハイわかりましたよー」
クロエはピョンっと身軽に飛び跳ね立ち上がると服を叩いて汚れを落とし言った。
「じゃ飲みに行こうか?」
・ハクア特製タバコアーマー
1本につき三十分の時間制限のあるチートアーマー。
ダメージをほぼ全て無効化し、身体能力を十倍まで高めるクッソチート。
あくまでも身体能力のみにしか効果がないので近接戦闘特化仕様。
残り時間を縮めることで出力が上がる。
基本的は残り時間の半分を消費しする。
フルの状態で三十分→十五分で2倍のような感じ。
十五分→七分三十秒で4倍、そんな感じ。
ブルンガルド戦で、ヤシロは詳しい仕様を知らないので、残り1分に賭ける!くらいの気合いで一気に強化したので、正確には百倍くらいまで上がってるんじゃないっすかねぇ?作者の
ノエ丸先生はコタツの上でそんな感じに考えてます。




