27話 迫る驚異
「話が変わりますが、私を勇者様のパーティへ入れていただけませんか?」
ティナの突然の一言に驚く鬼一。
「申し出はありがたいんだけど、俺達は今、帝国の直属から冒険者に変わっているんだ、だからティナが想像しているような感じではないんたけど、大丈夫か?」
「大丈夫です」
「えっ」
驚く鬼一に対し、ティナはすました顔で続ける。
「勇者様に何があったかは知りません。ですが、一番縁があったのはあなた、鬼一さんです」
「縁があったから俺についてくるのか?」
「まぁ、何といいますか。自分でも何とも言えないですが、直感です」
「直感!?」
「私、昔から直感が良いんですよ。説得力がほとんど無いようなものですがね」
「直感かぁ。俺、そういうのは嫌いじゃないぜ」
ティナの言葉を受けて、坂岡が頷く。
「坂岡はそう思うのか」
「鬼一は反対なのか?」
そう坂岡に返されて、鬼一は首を傾け、頭を掻く。
彼は迷っていた。
なにせ、殆ど男のパーティは居心地が悪くはなかった。見知った仲間に自身の他人に見せない部分を見られてもなぁなぁで済む。
だが、明確に異性の存在をパーティでの風紀が乱れないかが少し鬼一は少し気がかりなのだ。
そして、鬼一にとっては女性は少し苦手な存在だった。
その原因は言うまでもなく安藤の所為によるものだ。
彼女との対立で、彼の心には女性に対する不信が芽生えていた。
女性との一定の距離があれば問題は無いのだが、パーティという、鬼一にとって仲間同様に気を許せる空間に女性が入って来ることは、ある種のストレスの存在を許すことになる。
(しかし、俺達のパーティが万全ではないことは確かだ。これまではなんとか俺がパーティの前衛でなんとか壁役をこなせていた、だがそれは運が良かっただけかもしれない、俺一人だけの戦力じゃ味方を守りきれないのも事実だ。俺達は能力こそあれど、人手が足りていない。複数の敵に攻撃を与えられる魔術師の存在は有難い。俺の心情一つでこの機会を逃すのはナシだ)
「了解した。ティナ、俺達のパーティに入ってはくれないだろうか」
「はい、光栄です!」
元気良くティナが応える。
こうして、魔術師のティナが鬼一たちのパーティに加わる事となった。
所変わってアルカのダンジョン近くのギルド。
ここに一行が来たのは他でもない、ティナをパーティメンバーとして登録するためである。
「そう言えば、以前お話した件はどうでしたか?」
鬼一もまたとある別件で受付嬢と話していた。
彼らがかつてこのダンジョンで発見した、以前来た時に話した、裏ダンジョンの存在をギルドに報告したその後の経緯を聞きに来たのである。
受付嬢のリィンが真面目な顔で鬼一と向かい合っている。
「報告のあった裏ダンジョンへの入口は以前の調査で発見されました。アルカのダンジョンの五十階層から裏ダンジョンへの扉は近日に見つけたとの報告があります」
「実際に発見されたんですね」
「アルカのダンジョンは御存知の通り、他のダンジョンとは異なり、ダンジョンの演習の場として機能しています。実際に何人か演習中に消えたまま見つからない冒険者などの報告はありました。そして発見された別の階層への扉は巧妙に魔術で隠蔽されていました。今回の件が無かったら、気づかずに甚大な被害があったでしょう、今後はアルカのダンジョンは裏ダンジョンが制圧されるまで、封鎖されることとなります」
「なるほど。大変ですね」
「以前もお聞きしましたが、裏ダンジョンの存在を何故知っていたのですか?」
「············それは、我々が以前裏ダンジョンを一度、攻略したからです。報告したのはダンジョン運営者がこれを認知していたのか、知っておきたかったからです」
「そうですか、攻略されていたんですね」
「完全制圧までは至らず下層へ向かってダンジョンの出口まで向かうことのみを考えていました」
「なるほど、そうだったのですね。そこで提案なのですが、その力を見込んで裏ダンジョンの再攻略をお願いできませんか。あなた方の現等級は鉄等級ですが、ご協力していただけた報酬には等級の昇格を進呈します」
以前攻略したのダンジョンの、制圧のための攻略。
前回は使える資源や食料にも制限があったが、それらは今回はほぼ支援もある状態なので、鬼一たちにとっては難易度は以前よりも軽くなった。
しかし目下の強敵、マグヌスマルクトを先ずはどうにかせねばならない。
運良く与えられた一週間の猶予が近づいているからだ。
裏ダンジョンの制覇は完全に後手に回るハメになる。
「とても魅力的な提案ですね。ですが我々は今後、とても重要な山場を控えていまして、回答はその後でもよろしいですか」
「そうですか。前向きな回答をお待ちしています」
リィンにそう返して、鬼一は仲間たちに向き直る。
「さて、こっから幹部攻略戦の準備を行うわけだがなにかあるか?」
真剣な面持ちの一行の中でやりとりが行われる。
伊野が固い顔で鬼一に言う。
「戦うにしても、防具について少し考えないとじゃない?」
「幾ら特注の帝国軍の防具とは言えなぁ。俺は不死身だからある程度いいとは言え、二人は防具を変えた方が良いんじゃないか」
「いやぁ、流石にあの攻撃じゃ防具もへったくれもないんじゃないか」
坂岡が言う、あの攻撃とは時間停止による攻撃のことだ。
曰く、時間が停止されている中でのマグヌスマルクトの攻撃は、最初から使ってくる。
時を停められた場合、精神以外の動きを封じられれば、隙だらけと言うことだ。
「確かに、あれを使って来られたら防具もへったくれも無いな。あれ以外の攻撃をほとんどくらっていないから良くわからないのが事実だな」
「前に話してくれた作戦でも、防具についてはできる範囲でやった方が良いだろう。黒斧店のドワーフのオヤジ曰く、特注の帝国の防具だからそれなりに他の防具よりは防御力はあるが」
「話は変わるが、武器に関しても能力だよりだからなぁ、特にいらないか」
「それは迂闊だよ」
伊野に言われる鬼一。
「うぐっ、じゃあ何の武器なら通るってんだよ。ほぼ能力しか俺達には取り柄がないじゃないか。予定していた戦術訓練だって途中で無くなっちまったし···」
「それもそうだね。専用武器は能力の副産物だって話だしまだあまり使いこなせていないのも事実」
「けれど、幹部に立ち向かわなきゃ間違いなく、町の人たちに刃が向く」
八方ふさがりだ、と鬼一が言う。
「だけど、俺達が退く訳にいかんだろう」
その言葉に頷く、二人。
誘いを断ればマグヌスマルクトは、町民を人質に取り、何かやらかすであろう。
一行はあれこれと知恵を出し合いながら、マグヌスマルクトとの戦闘に備えていった。
その様子を影で見ている者がいた。
「ようやく、見つけたぞ。神の右腕の所持者·····」
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