20話 能力の故 後半
マグヌスマルクトが指を弾くと空間が歪みポッカリと暗い穴が空いた。
そこを潜るようにしてマグヌスマルクトは去っていった。
生きた心地もしないまま、三人はそれを見送る事しか出来なかった。
トボトボとギルドから帰る中、
「なぁ、俺たちさ。やっぱ大変な事に巻き込まれてたんじゃねーかな?」
「マグヌスマルクトの話?まぁ事実っぽそうではあるけど」
「伊野、お前は信じてるか?·····俺は不安だ。寿命を削って得た力だぁ?俺たちの命は何でもねぇってのかよ!!」
坂岡の口から出た、その言葉は三人のもしかしたらと言う不安を代弁するかのような物だった。
「やっぱなんも聞かずにすぐにでも返してもらうべきだったんだ!それかすぐにでも魔王をぶっ倒して····」
「····坂岡、俺の見立てが甘かった、すまん」
「今、そんな事を言われてもよぉ·····もう取り返しがつかないんだぜ?なんならいっそ魔王の幹部にでもなった方がいいんじゃねぇか?!」
「·······」
鬼一が言葉を失う。
彼自身もまた力などという安直な物に乗せられたのもまた事実だ。嘘だと虚勢を張って、マグヌスマルクトの良いように抗おうとしたが、嘘を言っているように見えなかった。
「今になってそんな甘い話があると思うかよ!」
「鬼一!お前も天王司と同罪なんじゃねーか!?」
震えた指が鬼一指す。
「お前も·····」
「やめようよッ!今そんな事を言ったって何にもならないでしょ!」
泣きはらした顔の伊野が鬼一を責める坂岡を止める。
「俺はまだ、やりてぇ事が一杯あったんだよ!」
「俺だって同じだ!こんな事知ってりゃ、こんな話飲まなかったさ!」
言い合う二人、なんとか止めようとする伊野。
「もう、やめてよ!二人ともっ!」
今にも殴り合いに発展しそうになっていた所に、再び伊野が仲裁に入る。
「今日はもう、寝ようよ、もう夜だよ」
「·····」
「·····」
伊野の必死の嘆願により、争っていた二人は争いをやめた。
「····眠れないのですか?マスター」
「あぁ、そうだな。眠れんよ、あんな事を聞かされてしまったのだから」
鬼一は月が照る夜に、水を飲んでいた。
あの後、逃げ込むように部屋へ戻ってきた彼らはそのまま寝込んでしまった。
そこから抜け出して、白い尻尾亭の屋上でロニパを連れ来たのだ。
「俺もほぼ不死身とは言え、後四年の命らしい」
「それは、長いようで短いですね」
「俺はこの事実を受け入れたくねぇな」
「それは、人として当然の反応では?」
ロニパがそう返す。
「俺も色々とやりたいことがあったんだよなぁ。うまく言葉にできないけれど」
頭をかきむしりながら、そう話す鬼一。
これは鬼一の悩みに直面した時に現れる悪い癖だ。
「今後はどうなされる気なのですか?」
「そりゃー、魔王をぶっ潰す。のは、勇者としての役割か·····」
「能力を用いて、世界に報復すると言うのはどうですか」
「オイオイオイ、以外に物騒なのねキミ。····まぁ考えたことは無いと言われれば嘘になりますけどね」
能力か、と鬼一が呟く。
「···復讐とか報復とか思わないことはなかったけれど。おいそれと無闇にそれを振るいたくはないんだろうな、俺は」
自分の寿命を縮めて得た力、能力、神の右腕。
神と言う名前が笑わせる、他人すら救えない者の腕の何が神だ、と鬼一は思う。
「お優しいんですね、マスター」
「そんなんじゃねーよ。ただそう思った、だけさ。明日、直接ゴーゴリ司教にでも聞いてみるつもりさ」
「何をですか?」
「俺たちの能力の真実ってやつを再確認しにさ」
「あてはあるのですか?」
「既に俺達の行動はマグヌスマルクトに筒抜けだ、もう隠してもしょうがない。ゴーゴリ司教の居所はまぁあてはあるからな」
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