第三十六話【武闘大会・本戦】
『勝者はひろってぃーパーティーです!!』
実況の大きな声と共に、観客の声援が‥‥‥まあ、ある程度は聞こえて来る。
俺はとりあえずあめを地面に降ろすと、準備室へと繋がっている通路に向かう。
通路にはもうすでにセクシーなNPCが待っていて、先導してくれた。
てか、意外と行けるもんなんだな。
案外余裕だったぜ?
加速系のスキルとか全然使って無いし。
あめのMPもほとんど減っていなかった。
やがて準備室に到着すると、扉のすぐ近くには相手プレイヤーのパーティー四人と、鉄さんがいた。
どうやら、負けたほとんどのパーティーはもう帰っているらしい。
まあ残る理由も無いしな。
「おい、お前何で負けてんだよ?」
「さっきの絶対勝ててただろー?」
「うるせぇ、無理に決まってんだろ!」
先程戦っていた相手パーティーから、何やら話し声が聞こえて来る。
いやー、温かいお出迎えだな。
という事で、俺とあめも鉄さんの元へと向かって行く。
「よう、鉄さん!」
「あなた達、なんか凄かったわね。‥‥‥でもさ、私って必要だった?」
ちょっと落ち込んでいるっぽいんだが。
「‥‥‥鉄さん、ごめんね?」
「いえ、雪奈さんは悪く無いわよ? だって五月雨くんが私を置いて行ったんだから」
「い、いや‥‥‥違うぞ? 俺は勝ちを優先する為に最善の手を打っただけだ」
「その最善の手が仲間を捨てるって事は、私はいらないって事よね?」
「えーっと、でもそれは仕方無くないか? 俺達のパーティーに協調性が無いのは今更だし」
「それはそうだけどさ、‥‥‥とにかく! 次からはちゃんと一緒に戦わせてよね?」
「お、おう。約束する!」
一応次からは勝ち残ったパーティー同士の戦いだから、相手はそれなりに強く、チームワークも抜群だろう。
だから、壁役がいて損はないはずだ。
まあ、最悪個人で戦って貰うが‥‥‥。
俺達三人は会話をしながらも勝ち残りのパーティー達が集まっている辺りへと向かった。
勝ち残りのみんなが厳しい目でこちらを見て来ているけど、何か用かね?
俺達の戦い方が狡猾だとでも言うのかね?
『はい、それでは予選最後の戦いを始めます! 残りの参加者は全員試合場へと向かってください』
セクシーなNPCがマイクを持ってそう言うと、残っているみんなはそれぞれ会話をしながら通路を進んで行く。
一応参考までにじっくりと見ておこう。
俺は大きなスクリーンに目をやると、開始を待つ。
やがて実況の大きな声と共に試合が始まると、とあるパーティーに目を引かれた。
思わずあめと鉄さんの方を向いて話しける。
「なあ二人共。あの端っこにいる二人組を見てみろよ」
「‥‥‥ん? あそこの男女二人?」
一部の壁際には髪の長い男性と、金髪の小さい女の子がいる。
男性の方は剣を持っていて、金髪女の子は‥‥‥杖か?
意外とバランスがよさそうだな。
「確かにいるけど、あの人達がどうしたの?」
鉄さんが首を傾げて聞いて来た。
「いや、あの男性めちゃくちゃ強くない? ステータスとかじゃなくて体の使い方が並外れているって言うか」
「‥‥‥あ、ホントだ。‥‥‥あの女の子がほとんど何もしていない」
今あめが言った通り、金髪の女の子はたまに飛んでくる魔法をすました顔で避けているだけだ。
「悔しいけど、私よりも戦うのが上手ね」
まあ鉄さんは力任せに剣を振っているだけだしな。
しばらくして‥‥‥。
試合場に残っている人数は五人ほどになった。
見た感じ三人と二人に分かれているので、それぞれパーティー同士の対決っぽい。
その内、二人の方は言わずもがな長髪の男性と金髪の女の子だ。
パッと見、三人パーティーの方が有利そうに見えるが、俺の予想だと二人が勝つ。
まず最初に今まで壁際から動かなかった男性が、女の子を残して一人で三人の方向に走り出した。
俺には劣るが、普通に速いスピードだ。
三人パーティはそんな男性を迎撃する為にそれぞれ動き始めた。
一人は魔法詠唱。
一人は壁役。
一人は剣で攻撃。
長髪の男性はスピードを落とす事無く壁役の足を剣で薙ぎ払い、その後ろにいた攻撃役の小手を斬り付け、一番奥の魔法使いっぽい女性を連続攻撃により戦闘不能にさせた。
女性は悔しそうな顔をして青い光と共に消えていく。
さらに男性は止まることなく、唖然としている攻撃役の顔や腕を斬り付けて戦闘不能にする。
うん、あっという間に残り一人。
と、そこで残った壁役のプレイヤーは長髪の男性に恐怖したらしく、盾を持ったまま金髪の女の子へと走り出した。
状況を見る限り金髪の女の子を倒したとしても全く意味無いと思うが、一人くらいは倒したいのだろう。
あの壁役さんが金髪の女の子と戦うって事は、今まで一切何もしていなかった金髪の子の情報を見る事が出来るかもな。
本戦へと進んだら当たる可能性があるし、じっくりと見ておこう。
と思ったのだが、長髪の男性が後ろから壁役の背中に斬りかかり戦闘不能にしてしまった。
俺ほどでは無いが速くないか?
てか、結局あの女の子については何も分からなかったわ。
‥‥‥俺達ってあんな化け物に勝てるのか?
少しして、先程の勝者である男女の二人組が戻って来ると、セクシーな女性NPCがステージに上がり話し始めた。
『はい、今現在ここに残っているのは予選を突破した強者ばかりだと思います。そのパーティー同士がぶつかり合うのですから、それはもう白熱の予感がしますね。先程の予選ではほとんど実況をしていなかった私ですが、次からの本戦は詳しく実況させて頂く予定ですのでご了承ください。
簡単にルールを説明致しますと、今残っている20組で一対一のパーティーずつ戦って貰います。
使用禁止のスキルは無し。引き続きレベルは20固定。
また、試合場へと続いている通路を通るとHPやMPが全回復される仕様の為ご安心ください。
それでは第一試合を開始します。最初は──』
セクシーなNPCは二つのパーティー名を読み上げると、そのまま通路を通って試合場へと向かって歩いて行く。
さてと、本戦も始まった事だし‥‥‥もう一度ステータスを確認しておくか。
そう考え俺は大きなスクリーンを眺めながらも、青色のステータス画面を開いた。
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Name ひろってぃー 男
Lv 20
称号 そよ風
H P 10/10
M P 10/10
攻 撃 10
防 御 10
魔 攻 10
魔 防 10
敏 捷 37140
スキル 【敏捷適性(小)】【敏捷適正(中)】【加速】【敏捷適正(大)】【緊急回避】【索敵(大)】【敏捷適正(超)】【超加速】【空中移動(Ⅲ)】【敏捷適正(極)】
残りステータスポイント 0
────────────────────────────────────
ふっ、いつ見てもほれぼれするくらいバランスがええのぉ。
まあレベルが下がった事によってなくなったスキルは、【極加速】と【回避(小)】くらいか?
でも、これだけあれば色んな戦い方が出来るぜ。
予選では空中移動を一回使ってしまったけど、多分それだけで俺のステータスはバレていないだろう。
俺達三人は周りに聞こえないくらい小さい声で戦法を考えながらも、スクリーン越しにプレイヤーを観察して行った。
因みに二回目の戦闘で、例の長髪男性と金髪の女の子が出場していたのだが、まあ結果は予想通りで、相手は四人なのにも関わらず金髪の女の子は魔法を数回撃っただけだった。
マジであの男性が強すぎる。
その後も本戦は進んで行く。
『お待たせしました。続いての戦いは、ミズハパーティーとひろってぃーパーティーによって行います。試合場へと移動ください』
約半分くらい進んだところで俺達の名前が呼ばれた。
俺は一度相手のメンバーを見てみる。
‥‥‥えーっと、予選の時にスクリーン越しに見た様な気がする。
多分予選の一番最初の勝者だな。
パーティー構成は四人で、それぞれ剣、弓、杖、盾を持っていて物凄くバランスが良さそうに見える。
果たして俺達で勝てるのだろうか。
予選は、プレイヤーがたくさんいる状態でずっと逃げていたから勝てた様なもんなんだけどさ、今回はそうはいかないよな?
だって俺達三人と相手の四人。合わせて七人しかいないんだから。
そんな事を考えながら、通路を通って試合場へと向かう。
「なあ鉄さん?」
「ん? どうしたの?」
「結局よさそうな戦い方が見つからなかったし、やっぱり一人で戦って貰ってもいい?」
「うん、それはもう仕方無いと思うわ。だって五月雨くんがいるんだもん」
なんか勝手に納得してやがる。俺がいるからって‥‥‥どういう意味だよ!?
「いやー、にしても緊張するな」
「‥‥‥ん。この通路を歩くだけでやばい」
やがて全員が試合場へ入ると、セクシーなNPCは真っ先に実況室の中へ入りマイクを口に近づけた。
『さあ、続いての戦いはこの二パーティーです。どちらも厳しい予選を潜り抜けた強者で、見ごたえのある勝負が見られるでしょう。それではどちらのパーティーも、端っこへと寄ってください。今から三十秒後に開始致します』
俺達と相手プレイヤーは一度目を合わせると、反対側を向きそれぞれ壁際へと歩いて行く。
するとこの試合場の上ら辺に取り付けられている左右二つのスクリーンに、俺とあめと鉄さんの三人が映し出された。
『今画面に映っているのが、ひろってぃーパーティーです。彼らは予選で三人という若干不利なハンデを背負いながらも最後まで二人が残り、本戦へと進みました。今回も面白いものを見せてくれるでしょう』
実況がそう言い終わるのと同時に、向こうチームの姿が映し出される。
『一方こちらミズハチームは、早い段階でリーダー以外の三人が戦闘不能になりましたが、残ったリーダーが驚異の粘りを見せ、見事最後まで勝ち残りました。今回もリーダーの底力を目の当たりに出来そうです』
へぇ、じゃあつまりミズハって言うプレイヤーが一番危ないんだな?
確かあのパーティーで最後まで残っていたのは、あの剣を持った女性だ。
つまりあの人は要注意。
「あの中心の女性は特に気を付けようぜ?」
俺がそう言うと、鉄さんは少し笑って答える。
「あら、五月雨くんがまともな事を言うって珍しいわね」
「おいおい、俺はどういう印象を持たれているんだよ!」
そんなツッコミをかき消す様に、実況の大きな声が響いて来た。
『両者位置に着いた為、今から始めたいと思います!! それでは、始め!!』
それと同時に乾いたピストルの音が試合場全体に響く。
一応始まったが、俺達と相手チームはどちらも動かない。
杖を持っている奴の口が動いている様子も無いので、様子を見ているのだろう。
「あめ、こちらから仕掛けてみようぜ?」
俺はあめをおんぶする為に太ももへ腕を通した。
「‥‥‥あ、うん。じゃあ広範囲の魔法を撃ってみるね?」
あめがそう答えて詠唱を始めた途端、相手四人が散会し、それぞれ別方向へ走り出す。
その為、あめの広範囲火魔法は誰にも当たること無く消えて行った。
「ありゃま!」
「やっぱり簡単じゃ無いわね」
鉄さんは頷きながら呟き、剣と盾を構える。
「‥‥‥どうしよう。‥‥‥みんなが近づいて来てる」
「鉄さん! 俺達は走って逃げるから頼んだぞ?」
相手の魔法使いが何やら詠唱を始めたので、逃げた方がいいだろう。
広範囲魔法を撃たれて、もし当たったりでもしたら俺‥‥‥死ぬかもしれん。
否、確実に死ぬ。
「えぇ!? やっぱり私一人なの?」
「じゃあなー」
俺はそう言い残すと、背中にあめを乗せた状態で壁際を走り出した。
「ちょっと!? ひどすぎない!?」
鉄さんは文句を言いつつも、仕方なさそうな表情で相手一人の方向を向いた。
そしてスキルの【シールド】を使用し、手に持っている盾を大きくすると、魔法と剣の攻撃を防いでいく。
鉄雨花さん‥‥‥ごめんなさい。
あめも罪悪感を感じているらしく、俺が走り出してすぐに魔法の詠唱を始め、次から次へと撃って行く。
相手パーティーの内二人は、鉄さんから標的をこちらに変えると追いかけて来た。
えーっと、俺の方に来ているのは盾を構えた奴と弓の奴だな。
「よし、盾の男は無視して、弓の奴を倒す事に専念してくれ」
「‥‥‥了解」
鉄さんはたった一人で、魔法使いと剣を持ったリーダーを抑えてくれている。
そんなに時間は持たないだろう。
なるべく急いだ方が良さそうだ。
俺は約七割ほどのスピードで盾の奴から逃げると、弓の奴に向かって走り出した。
相手はそんな俺を止めようと矢を放ってくるが、横ステップで躱す。
やがて少し近くまで行くと、こちらに向かって来ている盾約を気にしながらも、飛んでくる矢を躱す事に集中した。
あめは少し範囲が広めな魔法を撃って行き、確実に弓野郎のHPを減らして行く。
「くそ、こんなの当てれる訳無いだろ」
弓矢さんはちょっとイラついて来ているぜ。
ふっ、人間ってのは冷静でいられなくなった時が終わりなんだぜ?
まともな判断が出来なくなるからな。
しばらくして‥‥‥。
『レイン選手の攻撃魔法により、ユミルプレイヤーが戦闘不能! これでどちらも残り三人となりました。勝負の行方が分かりません!』
「‥‥‥やった」
「じゃあ次は鉄さんを助けよっか」
「‥‥‥ん」
そう会話をすると俺は盾役を無視し、未だ二人を相手にしている鉄さんの方を向き走り出した。
近づいていく最中にもあめの魔法が飛んでいく。
流石の命中率で、鉄さんに当たらない様にちゃんと飛んで行っているのが凄い。
相手の魔法使いは、突然飛んできたあめの攻撃魔法に気付かずに直撃する。
「きゃっ!」
「ちょっと、大丈夫?」
相手パーティーのリーダー、ミズハさんが俺達の存在に気付き、一旦体制を立て直す為に後ろへさがりながら魔法使いの方を向いた。
「五月雨くん!? 私もうやられそうなんだけど!?」
そう叫んだ鉄さんの頭上のHPは残り二割ほどだった。
よく今までこの攻撃重視な二人を相手に残っていられたもんだぜ。
マジで凄いと思うわ。
流石防御だけが取り柄の女。
「お待たせー!」
「お待たせー! じゃ無いわよ!? 早く助けてくれるかしら?」
鉄さんは盾を構えた状態で再び【シールド】のスキルを使用している。
「ミズハ、一旦引く?」
「え、ええ。そうしましょ」
相手魔法使いが若干不味そうな顔をしてリーダーの方を向くと、リーダーは小さく頷いて答えた。
とそこでさっきの盾役が到着し、持っていた剣を俺に薙ぎ払ってくる。
俺は後ろにジャンプし普通に躱した。
全く‥‥‥俺にそんな近距離攻撃が当たると思ったら大間違いだぜ。
「カルク! 一旦体制を立て直しましょ」
「ああ。分かった」
自分の剣が当たらず分が悪いと感じたのか、素直に二人の後ろについて行く。
『おっと、ミズハパーティーが一旦引いています。どうやら体制を立て直す様ですね! 因みにひろってぃーパーティーも追いかける様子はありません』
「‥‥‥鉄さん‥‥‥回復しよっか?」
俺が相手を気にしていると、背中からあめの声が聞こえて来た。
「そうしてくれたら嬉しいわ」
「いや、止めといた方がいいと思う」
少なくとも俺はおすすめせんぞ?
「‥‥‥なんで?」
「なんでよ?」
「だって回復魔法はMPを結構消費するだろ? 相手の魔法使いも回復を使えるだろうし、恐らく長期戦になると予想されるからなるべく攻撃魔法に回した方がいい」
向こうはまだ三人残っているし、あめのMPが尽きたらHPを削る方法がほとんどなくなるだろうし、まあ取っておいて損は無い。
「あー、確かにね」
「‥‥‥それはあるかも」
「だろ? という事で、向こうも何かを相談しているみたいだからちょっと何か撃ち込んでみてくれ」
先手必勝だぜ!
俺の言葉にあめはあんまり納得していない様だが、勝つ為には仕方が無いという事で広範囲の魔法を放った。
それと同時に向こうの魔法使いも、広範囲の風魔法を俺の方向に撃って来た。
相手の魔法はあめが放ったムチ型の火魔法の下を通り越して、早いスピードで近づいて来る。
「よいしょっ!」
俺は空中ジャンプを二回使用し、余裕を持って躱した。
鉄さんの方は盾でダメージを抑えていた。どうやら躱すと言う考えは無いらしい。
ふぅ~。‥‥‥にしてもさ、俺にそんな低飛空な魔法が当たると思ったら大間違いだぜ。
まあ、高い位置から来る魔法も、横ステップをすれば余裕だろうが。
‥‥‥って、油断は禁物だな。終わるまで気を引き締めないと。
因みにあめの放った魔法は、相手の壁役が盾を構えて受けていた。
そこまでダメージを稼ぐ事は出来ていないが、当たらないよりはましだろう。
「‥‥‥あ、向こうのリーダーさんが動き出した」
盾役が魔法を受けるのと同じタイミングで、後ろにいた剣を装備しているミズハさんが斜め方向へと走り出した。
恐らく魔法使いの詠唱の時間稼ぎをする為だろう。
「あめ、壁役は無視して、先にあのリーダーを倒そう」
何にせよ、壁役から離れてくれたのは好都合だ。
「‥‥‥分かった。けど、魔法使いさんの不意打ちには気を付けてね?」
「おう」
という事で俺は、全速力でこちらへと向かって来ているミズハさんの方へ走り出す。
足を動かし始めてすぐ魔法使いの方を確認してみると、口が動いている。
あー、早速かよ。
いくら集中すれば躱せると言っても、どの魔法が来るかって判断するのが結構疲れる。
魔法使いに神経の八割を使いつつも、残りの二割でミズハさんに近づいていく。
とそこで、あめの魔法が次々とミズハさんに放たれる。
どうやらかなり詠唱の短い魔法を、何度も繰り返している様だ。
ミズハさんは頑張って躱しているが、いくつかは直撃している。
見た感じ魔法が当たる事を何とも思っていないらしく、そのまま俺の方へ走って来ると、剣を横に薙ぎ払って来た。
俺は後ろにステップをして剣の範囲外まで下がる。
そして横から迫って来ている火魔法を躱す為に上へ飛んだ。
よし、どっちも行けたぜ。
この程度なら加速系のスキルを使わないでも大丈夫そうだな。
その後、俺は相手の攻撃をかわす事のみに神経を集中させた。
しばらくして‥‥‥。
相手のリーダーであるミズハさんは、あめの強力な攻撃魔法を食らって、青い光と共にその場から消えて行った。
はぁ、やっとだぜ。
若干気を緩めてしまいながらも、少し遠くにいる魔法使いの方を向いてみると、頭上のMPバーがほとんど残っていない。
ミズハさんが死にそうなのにも関わらず、回復魔法を使わなかったのは、MPの枯渇が原因らしい。
とは言っても、まだ攻撃魔法数発分は残っているはずだ。
つまり一応油断はしない方がいいだろう。
「おし、、もうひと踏ん張り! あとは壁役と魔法使いだけだ」
「‥‥‥ん。ひろとくんも頑張って!」
まあ最初に魔法使いの方を処理しておくかな。
壁役は、鉄さんが剣と盾を持って戦ってくれているし、もう少しなら持ちそうだ。
結果、俺達は無事に魔法使いを処理する事ができ、そして鉄さんを含めた三人で壁役を倒す事が出来た。
『決まりました! 勝者はひろってぃーパーティーです。元々三人という不利を抱えながらも、なんと全員が残っています』
俺は観客の声を後にし、準備室へと戻った。
読んでくださりありがとうございます。




