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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第一章
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5話 後悔先に立たず


「ヒャッフー!」


 焼け野原となった草原を地面を抉りながら駆け抜ける。

 走って休んでを繰り返してもう2回ほど太陽が昇ったり降りたりしている。この世界もちゃんと太陽らしきものはあるんだ。

 遠くから見たら巨大な土埃が上がっているように見えるだろうか。


 そう、私は今、全速力で走っている。


「凄い! 凄い速いよ! しかも全然疲れないし!」


 時々見かける魔物も速すぎるのか私に襲いかかってくるが、私が速すぎるのか隣を通り過ぎると衝撃波で吹き飛んでいく。


「やばっ! 何これ、めちゃくちゃ楽しいんですけどー!」


 ついつい、はしゃぎすぎてしまう。

 しょうがないよね、転生してきた当時は走るより歩いた方が速いくらいだったもんね。


 そんなふうにヒャッフーしながら走っていたのだが、焼けた大地と普通の草原の境目が見えた辺りで何やら違和感を感じた。


「ん?」


 慣性の法則を無視してピタッと草原側に止まり、振り返る。


「うーん、気の所為かな?」


 特に変わったことは無いので放っておいても大丈夫だろう。

 そんな事より今は街へ行くのが最優先なのだ!


 再び風のように走る。

 しばらくすると、城塞都市のように周囲を10メートルはありそうなくらい巨大な壁が街を囲っているのが見えた。


「うーん、この前の超巨大蜘蛛の方が大きかったけどなー」


 おや、人や馬車がたくさん並んでる所があるな。

あそこが入口かな。


「早速行こう......この服装じゃなんか怪しいもんな〜」


 ノースリーブにミニスカートで超強力な魔物の出る草原を駆け抜けて来たなんて言われても信じないだろうしね。

 こう言う時はローブを纏うのが定番だよね!


「ローブ〜、ローブ〜」


 鼻歌混じりでアイテムボックスを開いてローブを探す。


「これは、ちょっと派手すぎるしなー。これは、ちょっとダサいなぁ。あっ、これいいかも〜!」


 気に入ったローブを早速羽織る。

 今回のローブは無難に黒色のどこにでもいそうなローブ!

 黒のローブに金色の刺繍が入った定番みたいなローブだね。ちゃんと深めのフードも付いてて、顔はしっかり隠せる。

 ローブの効果も結構お気に入りなんだよね。


=====

影のローブ (魔法道具マジックアイテム)


暗殺者や裏の者が着用するローブ。

情報操作や詐称スキルが使えるようになる。


効果:詐称、情報操作、隠蔽

=====


 なんか私が悪いことするみたいになっちゃってるけどなんにもしてないからね!

 このスキルで色々と私のレベルとかも騙せたらいいなー、なんて思ってたり。

 まぁ、私のレベルが平均とかだったら全然隠す必要無くなるんだけどね!



 早速列に並ぶ。


「はぁー、それにしても長い列だなー。何時間待たされるのかな」

「おや、嬢ちゃん1人かい? 珍しいもんだな」


 つい、独りごちていたら後ろの馬車に乗るオジサンから声をかけられた。


「えぇ、田舎から出てきたばっかりで。この街はなんて言うんですか?」


 詐称スキルのお陰かな? 結構上手いこと騙せそうだ。


「このご時世に田舎ねぇ、人族が住めるところなんて限られてるだろうに。出稼ぎかい? 頑張んなよ!」

「あ、はい。ありがとうございます」

「おっと、この街の事が知りたいのかい? 本当は情報量を貰いてぇところだが、嬢ちゃんはべっぴんさんだからな! タダで教えてやるよ!」


 なんか詐称スキルが怖くなってきたぞ......


「ここはな、城塞都市メルガスって言うところでな、当主のメルガス様が収める都市でぇ。そこら辺の街なんかよりずっとでけぇぜ!」


 長くなりそうなので要約すると、ここメルガスはメルガス草原の向こう側、死の草原を見張るために建てられた城壁都市らしい。死の草原と言うのが私が落とされた草原だね。今はもう焼け野原になってるけど。


 メルガスはメルガス様一族が代々受け継いで来た国で、今は8代目のクレイルメイ=メルガスが当主として統治しているらしい。クレイルメイには娘が3人と息子が5人いるそうだ。娘、息子はどれもみんな美男美女で勢揃いしているが、唯一第三王女のリサーナ=メルガスだけが醜女らしく、家族から迫害じみたイジメを受けているそうだ。

 実際に見ないとわからないけどさ。この世界と私とで美的感覚が違うってのもあるだろうし?


 しかしリサーナはほぼ毎日のように城下町に降りてきて貧困で生活の苦しい人達に炊き出し等を行っているらしい。なかなかいい子じゃないか。

 オジサンの話す様子では特に毛嫌いしている様子が無いので街の人達からも嫌われている、なんてことはなさそうだね。


「それで、この列の事なんだがな」


 あれ? 別に普通にいつも通り検問してるのかと思ったんだが。

 今はオジサンの馬車に同乗させて貰っている。そっちの方が話しやすいとオジサンが乗せてくれたのだ。

 優しいオジサン、もうちょい渋かったら酒場のマスターとか似合いそうなんだけどね。


「つい先日な、死の草原の方で黒い炎が吹き上がるのが見えたって見張りのやつらが騒いだんだよ。それで近くに確認しに行ったらまさかの死の草原が焼け野原になっていたんだよ」

「えーっとー、黒い炎って珍しいんですか?」

「ばっ、嬢ちゃん知らねぇのかい!? 黒い炎は魔王が使う魔法なんだぜ!? それを死の草原でそれも死の草原全てを焼き払うくらいの威力ってぇことは魔王が近くにいるかもしれねぇっとことになるんだよ!」


 あ、まじですか、さいですか。


 これはかなりやらかしてしまった気がするんですよね。だってあの後走りながら魔法を適当に撃って見たんだけど火魔法から出る炎が全部真っ黒なんだよね。

 これバレたら私が魔王ってことになったりしないよね?

 たった2、3日でここまで広がっているとはなぁ......


「そ、そうなんですか。無知なもので......それでこの検問ですか」

「そう言う事だな。お、そろそろ入れそうだな。嬢ちゃん降りて先に行きな!」


 話していたらいつの間にか入口が近付いていた。

 ちゃんと先を譲ってくれるオジサン優しいな。


「色々とありがとうございました」

「おう! いいってことよ! 嬢ちゃんはその格好だと冒険者志望かい? その時はアルテナ商会で買い物してくれよ!」


 どうやらオジサンは商売人らしい。

 アルテナ商会か、ちゃんと恩は返す義理なんだよね。今度訪ねてみようかな。


「はい、その時は是非寄らせてもらいますね」


 そう言って入口に向かう。

 これから始まる異世界生活! ここを拠点にして頑張ろうかな! なんて思っちゃったりして......





 早速躓きました。


「入行証も個人証明書も無い!? 帰れ、帰れ! そんな怪しいやつ入れられるわけないだろう!」


 あっれ〜? せっかく待ったのにこれは無いんじゃないですかね〜?

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